今回のゲスト・高坂 総一郎(こうさか そういちろう)さんは、小学生の頃にお母さんから手作りの味噌汁を褒められて料理人の道へ。中学卒業後に岡山県内のホテルと東京のレストランで約20年の修行を経て、2010年に岡山市でクロワサンスを開業しました。現在も一貫して大好きな料理の道を極めつつ、まだ誰もやったことのない料理に挑戦し続けています。
「料理が好き!」「好きを仕事にしたい!」人必見、プロの道で努力を重ねる高坂さんの生き方を紹介します。


岡山県内の専門学校生。家族や友人に料理を振る舞うのが好きな小山さん。料理を生業とし、さらに高みを目指すプロの料理人である高坂さんの思考や人生を深掘りする。
目次
フレンチシェフ高坂さんのお仕事
メニューは日替わり!オープンキッチンのフレンチレストラン




従業員がたくさんいるお店ではなかなかできないことかもしれませんが、私の店は一人で切り盛りしているので、日替わりのコースメニューを提供することが可能になっているんですよ。


また、毎日メニューが変わることで数量しか手に入らない珍しい食材もお客様に提供できるのも、クロワサンスだからこそできることだと思っています。


料理も接客も”妥協しない”高坂さんのお仕事


一つ目は、妥協しないことです。どの料理も、お客様からお金をいただいて提供するものなので、家庭では食べられないお店だからこそ得られる食体験を提供するように努めています。
また、食材を作ってくれる生産者さんへ対する気持ちも妥協していません。ただ、料理は何よりも食材ありきですが、状態が悪いものが届くこともあります。生で提供できないのであれば調理や加工するなど、工夫を重ねます。
二つ目は、自分の中でスケジュールを組むことです。一人でお店を経営していると、時間がいくらあっても足りません。効率よく作業を進める必要があります。


三つ目は、厨房とフロアで思考を切り替えることです。効率よく作業することは大切ですが、お客様がお食事するフロアでは、サービス人としてお客様と接する必要があります。お客様のドリンクが少なくなっていたら次のドリンクをお伺いしたり、メニューに興味を示されたお客様には丁寧に説明する。すると自然に、所作や歩く速度もお客様の前だと緩やかになりますね。
私の店はオープンキッチンスタイルなので、盛り付けをしながらお客様とコミュニケーションをとることもあります。料理を通して人とコミュニケーションすることが好きなので、お客様が料理に興味をもって話しかけてくださる瞬間にやりがいを感じます。
四つめは、体調管理を徹底することです。予約制の店なので、私が体調を崩してキャンセルをお願いすることはできません。


お寿司屋さんや和食のお店に行くと、お客様が「大将も一杯いかがですか?」などのやり取りがありますよね。でも、フレンチで「シェフ!一杯どうですか?」なんてやり取りはほとんどありません。でも私は、そんなやり取りをお客様としたいなと思っているんです。


普段は黙々と料理をするタイプですが、お客様が料理に興味を持ってくださったら、聞かれていないことまで話してしまうんです。そして、その時間が、何よりも楽しいなと思っています。
試作なし!脳内調理ができるワケ


ただ、私は試作をしません。頭の中で調理する「脳内調理」をしているからです。
これは、私の長年の経験と料理に関する知識があるからできる方法かもしれません。例えば、いちごとパプリカとトマトのように同系色の食べ物って相性が良いんですよね。そのような知識をもとに、脳内で材料を組み合わせていきます。そうして脳内調理で出来上がったものは、8割くらいはイメージ通りの味になります。


試作してしまうのは、自分の中での種明かしのようであまり好きではないのです。もちろん提供する前には味見をして微調整してからお客様にお出ししていますが、お客様にお出しするもの以外で試作はしていません。


それらを脳内調理した時と実際に作ったものがほぼイメージどおりの味になった時の喜びに、やみつきになってしまったのかもしれません。この喜びと、その料理をお客様が食べて喜んでくれた時の嬉しさは、何物にも代えられませんよ。
アップデートしながら高みを目指す高坂さんのこれまで
中学を卒業してすぐに、修行の日々へ




そんなとき、中学2年生の後半ぐらいに家族会議をしたんです。料理が好きな私に対して母から「料理人になる気はないの?」と言われて、中学卒業後すぐに調理師の専門学校を目指すことにしました。学校の先生からは「高校は卒業した方が良いのではないか」と言われましたが、同じ3年間を過ごすのであれば調理師の専門学校で勉強したいと思ったので、料理の勉強を独学で続けました。


最初はただ「料理をしたい」という気持ちで料理人を目指しました。でも、独学を続けていくうちに、国際的なサミットや晩餐会で出てくるのはフランス料理が多いと気づいたんです。どうせやるなら世界最高峰の料理をしたいと思ってフレンチ料理を選びました。


年上の同期には調理師専門学校を卒業した人もいる中、私は「サニーレタス」のような食材の名前も分からなかったんです。修行をするのに食材の名前が分からないと仕事にならないので、スーパーに行って必死に食材の名前を覚えました。
本を読んで専門用語などを学んだり、様々なセクション(調理や作業の担当場所)に顔を出して先輩の仕事を見せていただいたりもしました。


5年目くらいに東京での修行を考えはじめて、7年目で退職して上京しました。



最初に修行した店では、前菜を担当したのですが店で交わされるフレンチ用語についていけなくて、勉強不足を思い知らされました。 また労働環境も過酷で、朝は始発で帰りは終電で帰る日々。トイレや賄いを食べる時間もなくて、体を壊して退職しました。 2件目は小さなお店でしたが、ホテル以外で初めてポジションを任されました。言われたことをこなすのではなく自分で考えてお店が望む働きをせねばならないプレッシャーを知りました。シェフは情熱的であり、仕事を理論的に教えてくれたので、料理への向き合い方などは大きな学びでしたね。


そして、15歳の頃に立てた「20年後に自分のお店をオープンする」目標の時期を迎え、クロワサンス開業へと至りました。
人よりも上にいくには、誰よりも努力が必要


ロゴも、クロワサンスの「C」と「S」をモチーフに、自然や植物を基調としたものにしています。

実は以前、高坂さんが月に一度提供されているスパイスカレーの日にお店にきたことがあるんです。ほかにもおせちやラーメンなど、フレンチ以外の挑戦もされていますよね。そのような取り組みに至った背景を教えてください。

自分一人でお店を経営していると、私を叱ってくれる人はいません。だからこそ、有名シェフとのコラボレーションを企画して自分の仕事が正しいのかの確信を得る場として活用したり、もっとできるだろうと自分に課題を与えたりするようにしています。
また、遊び心を持って料理したい気持ちもあります。本業と別なジャンルを考えた時に、スパイスに面白みを感じました。




また、やったことに対して売り上げや認知度で結果が出ていると実感できているのも、続けられる理由の一つです。
誰もやったことのないことに挑戦し続けたい


お店としては、コース料理の洋食屋さんに挑戦したいです。普通の洋食屋さんは、主な客層をサラリーマンとした1,000円前後でハンバーグやオムライスを提供するお店ですよね。そうではなく、こだわりのハンバーグやオムライスをメインにしたコースが成り立つようなお店をイメージしています。


だから、フレンチよりも少しカジュアルな、小洒落た洋食屋さんも良いなと思っています。


若者へ「好きな道を行くと決めたなら貫き通す!」





(編集:松田 七奈/執筆:高石 真梨子)

フレンチレストラン『Croissance』オーナーシェフ。岡山県岡山市出身で、中学卒業と同時に岡山のホテルに就職し、料理の基礎を学ぶ。東京の有名フランス料理店や全日空ホテルのレストランシェフを経て、2010年にCroissanceをオープン。日替わりメニューの料理を提供しつつ、ラーメンやカレーなどにも挑戦し続ける。