自動化・省力化の技術で未来を拓く・株式会社江口電機

  • #機械
  • #岡山の企業ってどんなことしてるの?
  • #技術力を磨く

公開日 2025.06.13

工場では、空調機能が稼働して自動で最適な室温を保ち、人間の代わりにロボットアームが規則正しく動いて部品を組み立てているーーそんな光景は、しばしば「近未来的」と表現されます。

 

しかし、機械の頭脳が生産現場を管理する光景は、すでに現実のもの!

 

株式会社江口電機では、空調システムや工業用ロボットなどの自動制御装置の設計・製作を通して、日本のものづくり現場の「頭脳」を担っています。

 

そんな専門性の高い分野を、大学生のみなほさんがじっくりとインタビューしてくれました!

知られざる自動化・省力化のパイオニア

 

★和田 務(わだ つとむ)さん
株式会社江口電機 代表取締役社長。最近一番嬉しかったことは、岡山県のサッカーチーム「ファジアーノ岡山」のJ1昇格と開幕戦からの連続勝利(インタビューは2月末)。2023年からスポンサーとなり、スポンサーチケットは社員に抽選で配布しているのだとか。

 

★髙橋 こゆきさん
エンジニアリング部SEグループ。社歴6年目。岡山大学を卒業後、江口電機の雰囲気の良さに惹かれて就職を決意。マイブームはVTuberグループ『にじさんじ』の推し活。新たなVTuberの登場に胸が熱くなっている。

 

★みなほさん
岡山県倉敷市出身の大学3回生。持ち前の好奇心と探求心で、さまざまな業界・業種に興味津々。「伝えること」や「教えること」に興味があり、テレビ・メディア業界を中心に就活中。

 

 

知るほどに興味深くなる自動制御技術

様々な製品を取り扱う

 

江口電機では、どんな事業をされていますか?

 

主に電気機器の販売や、自動制御装置の設計・製作などを手掛けています。「電気代を下げたい」「作業効率を上げたい」といったものづくりメーカーさんのご要望を実現しています。

 

ホームページには「ニーズに寄り添うFAを提案」と書いてあったのですが、この“FA”とは何のことでしょう?

 

“FA”とは、Factory Automation(ファクトリーオートメーション)のことです。私たちの生活は、多種多様な工業製品で成り立っています。その製品を作るためのエネルギーを省力化したり、作業効率を上げたりする装置の制御盤を弊社がつくっているのです。「製品の生産ラインを自動化するにはどうすればいいのか?」「こんな製品を作るためにはどんな機械がいる?」などのご相談をくださるものづくり企業様を、知恵と経験をもってサポートしています。

 

なるほど。江口電機さんがつくった制御装置は、実際に工場内でどんな働きをしているのでしょうか?

 

たとえば、工場にあるロボットアームを想像してください。そのロボットは、ある部品を右の装置から左の装置へ移動させると仮定します。この時、ロボットアームだけでは「部品が目の前にある」「部品が斜めになっている」などの状態が分からず、部品を上手く掴めないのです。

 

そこで、センサーと画像認識装置を組み合わせると、斜めになっている部品も掴むことができるようになります。

 

弊社の業務では、こういった自動化省力化装置を提案・納入しています。

 

 

ものづくりの現場から、社会課題と環境問題にアプローチ

 

現在、特に力を入れているプロジェクトはありますか?

 

 

事業の軸はFAですが、最近喜ばれているのは空調機器の導入サポートですね。

 

毎年気温が上がる中、工場の労働環境はどんどん過酷になっています。既に空調を工場に導入している会社もありますが、そこまで手が回らない企業がほとんどです。熱中症で人が倒れると、「ここでは働けない」と従業員が辞めてしまい、たちまち製品が作れなくなります。

 

ただ、工場の構造上、空調システムを簡単に導入できない場合もあるのです。制約のある工場でも導入できる特別な空調機器を弊社では取り扱っており、労働環境改善に注力しています。

 

今後の御社の展望は?

 

 

弊社の事業は需要がどんどん拡大しているため、今後も求められたことに対して真摯に応え続けていきたいですね。

 

近年、少子高齢化で労働人口が急激に減少しています。引退する人は多くなる一方で、若者は入ってこないのです。そのため、人が担っていた作業を自動化する需要が生まれています。

 

また、昨今では脱炭素にも注目が集まっていますね。たとえば、電気モーターを1時間回して1個の製品をつくるよりも、30分で1個つくる方が電気を消費しなくて済みます。化石燃料を燃やしてつくった電気を消費するということはCO₂を発生させていることと同義です。つまり、それだけ脱炭素化を進められているということなのです。

 

単純な話ですが、20年前の電気モーターと最新式の省エネ電気モーターでは電気の消費量が全然違いますから、省エネ機器の導入サポートも行っていきます。

 

 

ちょうど注目を集めている分野の業務ばかり!これからもニーズが高まりそうですね。

 

 

最新機器の導入だけでなく、装置の待機時間、未稼働時間などを緻密に分析し、こまめに電気を切ることで電力消費を抑えることができます。

 

小さい工夫の積み重ねで余分な電力消費を数十%削減できた企業様もあります。長年蓄積してきた自動化・省力化の技術を用いて、ものづくり現場にある社会課題や環境問題を解決し続けていきたいですね。これはもう、弊社の使命だと思っていますよ。

 

 

壮大な使命ですね。業務内容のお話も詳しく聞かせていただき、ありがとうございました!

 

じっくりと着実にすすむ、髙橋さんのキャリアステップ

 

初めての設計業務も、持ち前の探究心でしっかりと深掘り

 

次は髙橋さんにお話をお伺いします。現在、どんな仕事をされていますか?

 

 

主に、配電盤や制御盤の設計をしています。簡単に言えば、電気の流れをコントロールする機器や、電子機器そのものをコントロールする頭脳に当たる部分の内部構造を図式化する仕事ですね。

 

 

難しそうなお仕事内容ですが、具体的にどんなことをするのですか?

 

 

設計は、ただ装置の構造を図面に描くだけではなく、さまざまな工夫がいる仕事です。たとえば、機器によって作動中に高熱を発生させるものがあるため、熱を逃がすための隙間を想定しながら設計します。

 

また、配電盤は内部に使用される電線の材質によって曲がりにくい場合があるので、電線の通り道を広めにつくってあげています。不備があると後から製品そのものが作り直しになってしまうので、どこにどんな部品を配置するかきちんと考えながら設計しないといけません。

 

 

そもそも、なぜ高橋さんは江口電機に就職しようと思ったのですか?

 

 

合同説明会で偶然声をかけてもらい、本社説明会にも参加したことが大きなきっかけでした。そこで「あ、先輩が優しい」と直感的に思ったんです。

 

私は経済学部で学んでいたため、日経新聞の記事をまとめたり、経済動向を調査したりと、江口電機の事業とはずいぶんかけ離れた勉強をしていました。いわゆる“文系”の私が、“理系”の企業に入ってもいいのか不安でした。そのため、採用担当の方に「電機のことは分からないですが、それでもいいですか…?」と尋ねたのですが、「全く問題なし、大丈夫!」と即答してもらえたんです。そのおかげで、「とにかく挑戦してみよう!」という気持ちで入社を決めました。

 

就職活動では、自分の強みをどのようにアピールしましたか?

 

 

どんなに小さなことでもいいので、自分の能力を熱心に伝えることを意識しました。

 

私は子どもの頃からイラストを描くことが好きで、それに伴い図形を見たり描いたりするのも好きでした。就活の時に得意分野をしっかりとアピールしたので、現在の設計業務につけたのだと思います。企業側にとっても、適性を見極める指標になると思いますので、好きなことや得意なことは積極的に発信していくことは大切です。

 

 

それで好きなこと、得意なことと業務内容がつながったんですね。

 

 

そうですね。あと、私は幼い頃から興味のある対象をとことん調べ尽くすのが大好きでした。今でも、機器のマニュアルをじっくり読んだり、疑問があったら納得できるまで先輩に質問したり。自分の根っこの部分は変わってませんし、それが設計の業務に活かされているのかなと思っています。

 

 

とは言え、専門外の分野で苦労したこともあったのでは?

 

お客様が使っているソフトの機能を拡張する業務が難しかったことが記憶に残っています。社内でもそのソフトを操作した経験者が少なく、まずは情報収集が必要だったからです。その上、お客様が製品をつくる際に用いる大切なソフトなので、もとの機能を崩さないように配慮しつつ、さらに新しい機能を増設する必要がありました。

 

先輩にサポートしてもらいながら、自身で応募した社外研修にも足を運び、社内外から情報を集めながら業務にあたりました。その時は学ぶことが多く大変でしたが、今となっては取り組んで良かったと思っています。

 

毎日が発見の連続だからこそやりがいを感じる

高橋さんの仕事のモチベーションは何でしょう?

 

 

日々新しい発見の連続で、いつも新しい何かができるようになる。それがモチベーションになっています。

 

正直、入社当初は図面をみても、それが何を表しているのか全く分かりませんでした。それが、部品の設計図をコピーしたり基本的な構造の小さな制御盤を設計したりと、段階を踏んで教えてもらえたおかげで、今では図面を見ただけで製品になった姿が分かるようになったのです。

現在、注力しているプロジェクトについても教えてください。

 

 

今は、ECAD(イーキャド)を使い、かなりボリュームの大きな図面を書いています。立ち入り制限エリアを監視する機器の制御盤の図面なのですが、広いエリアを監視する機器のためセンサー数が多いのです。平均の図面は約50ページほどですが、現在取り組んでいる図面は約300ページあります。

 

ページ数をお聞きしただけでも途方もない感じがします。

 

 

でも、ちょっとした工夫で効率よく図面を書けるようになりました。今までは基礎的な図面をひとりで描けるようになる段階でしたが、最近は効率の良い図面の書き方を極めているところです。先輩に教えていただき、内容が類似している図面をまとめて編集できる機能や、複数のページをまとめて確認できる機能を、少しずつ使いこなせるようになりました。

 

また、チームで設計に取り組んでいるため、日々協力し合うことのやりがいも感じています。

 

 

広い視野で、自分を活かせる場所を探して

さいごに学生へメッセージをお願いします。

 

 

私の就職の軸は「自分ができる”何か”を見つけること」でした。専門外の業界を見ると、どうしても「自分じゃ無理だろう」と思ってしまうけど、自分でもできる業務を発見できると、意外にも新しい世界が広がります。業界・業種を広く見て、ちょっとでも興味持ったところに進むのが良いのではないかと私は考えていますので、専門外の分野にも是非ともチャレンジしてみてください。

 

また、合同説明会の時だけで自分に合う企業を見つけようと思いがちですが、会場は広いので時間も体力も消耗します。さまざまな企業に興味を持って、少しずつでもいいので日常的に仕事の内容などを調べてみてください。

 

お話をお聞きして、就職活動に対する新しい価値観を得ることができました!ありがとうございました!

 

 

(編集:森分 志学/執筆:杉原 未来)

TOP