もしもの時を、いつでも学べる。3DCG・VR映像のプロフェッショナル・株式会社白獅子

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公開日 2025.02.07

百聞は一見にしかず。聞いただけではよく分からなかったけど、実際に目で見たらよく分かったという経験は誰しもあると思います。

 

昨今では、身近ながら専門性の高い防災や医療などの分野を、最新の映像ツールで理解しやすくする取り組みが全国で広がっています。そうした事例の最前線に立つプロ集団が岡山にいるって、ご存知でしたか?それが、3DCG・VR映像技術を用いて人の行動変容をアシストするプロ集団・株式会社白獅子(以下、白獅子)です。

 

今回は、「もしもの時」を映像化して誰もが有事を「疑似体験」できる世界を作っている株式会社白獅子さんに、大学生が突撃してきました。先進的な映像技術で人々を行動変容に導く事業に、ぜひご注目ください!

3DCG・VR映像を通して、意識と行動を変える

★春名 義之(はるな よしゆき)さん

代表取締役であり、3DCGデザイナー。そして、創業者兼社長秘書(社長は猫の白くんであるため)。国内外のクライアントとの劇場用映画やゲーム関連のCG制作を経て、現在の事業に至る。

 

★朝日 らな(あさひ らな)さん

自社商品への愛情が大きい、敏腕営業マン。「猫の白くんが社長」という面白いコンセプトと、白獅子の自由な社風に惹かれて入社を決める。本人曰く、熱中すると突っ走ってしまう性格とのこと。

 

★三嵜(みさき)さん

旅行とドライブが好きな大学2回生。最近はアルバイトを通じて、働く上で大切なのは「誰とどんな環境で働くかだ」と感じて、企業の雇用環境への意識を強くしている。

 

専門分野は視覚化して伝える時代に

早速ですが、事業内容を教えて下さい。

 

 

弊社では、3DCGを使ったアニメーションを作っています。専門性が高く説明が難しい事柄をCGアニメーションによって視覚化することが、事業の軸です。また、約6年前からVR事業もスタートし、災害、医療、その組み合わせである「災害時の医療」を想定したアニメーション制作も行っています

 

VR事業が加わったことで何が変わったのでしょうか?

 

 

今までCGアニメーションで視覚伝達していた情報にVR技術を加えることで、情報を「体験」できるようになったんです。バーチャルリアリティの世界に入り込むと、アニメーションを見る視点が「一人称の視点」に変わるため、ユーザーは単に眺めるのとは異なる擬似的な体験が得られます。その体験が、人の意識や考え方を変え、行動をも変えるのです。

 

VR化で苦労するのはどんなときですか?

 

 

特に難しいのは、正確に表現したい部分に機密事項がある場合です。そのままの情報を伝えることはできないため、VR化する際に表現を工夫する必要があります。また、映像を見る人の気持ちに配慮するあまり、本来伝えるべきことが伝わらない映像ができあがってしまう場合もあります。

 

機密事項の保護、個人の気持ちへの配慮、映像の正確性、これらを同時に反映するのが難しいです。

 

そもそも、現実世界の状況をどうやってこのように映像化しているのでしょう?

 

※リンク先では火災や津波の3DCG映像が流れます。ご注意ください。

 

全て3DCGを用いています。例えば、街並みをつくりたい場合は建物が並んでいる様子から再現します。多くの建造物は点と点の支点を四つ繋いだ面の集合体ですから、点を結び、面を作り、建物にする作業を繰り返して街並みを作っていくんです。

火災VRの映像

津波や土砂が迫ってくる映像は「パーティクル」という点の集合体を用いて表現します。土砂の場合はパーティクルを1兆個使い、動きをシミュレートさせたうえに、専門家の方の確認も入ります。加えて、コンピュータで演算を繰り返し、より正確な土砂の流れを作るんです。そこから、背景として作ったCGの街並みと流入する土砂を合成する。これが映像化における一連の流れになります。

 

顧客はどのような方々なのですか?

 

 

行政であれば危機管理課や防災課の方、あとは消防関係の方ですね。特に、災害時にどういったオペレーションが必要か常に考えている方に映像を貸し出しています。仮に防災に関する知識量を100点満点で点数化したとしたら、80点以上の方々が主に弊社の映像を活用しているイメージです。

 

また、災害時の知識があまりない方にもVRを通して災害の疑似体験をしてもらうことで、知識の底上げになります。

 

 

身近なことなのに、伝わりにくい「災害」「医療」への心構え

私たちの身近なところだと、どんな場面に御社製品が関わってくるのでしょう?

 

 

一番身近なのは防災教育です。実際の災害時にパニックにならないよう、日頃から災害を疑似体験していただき、訓練をしてもらいます。災害の専門家や教育者が災害の説明をする際に、導入部分で使う場合もありますね。 災害体験VRを見ていただいた後で話をすると、子どもたちも真剣に話を聞いてくれるんです。

 

そのため、NPO法人や中学・高校・大学、自治体など多くの団体の方々に利用していただいています。

 

そもそも、防災や医療に特化するきっかけはあったのですか?

 

 

災害のVRを初めて作ったのは6年前のこと。乃村工藝社という東京の企業のご依頼で、東京都品川区役所にある防災館の展示用防災VRを作らせていただきました。その際に、「災害に対する備えってすごく大事なことだ」と改めて感じ、それ以降は防災や医療というテーマに対して積極的に取り組んでいます。

 

 

他にどのようなものを開発しているのですか?

 

 

労働災害や医療系のアプリケーションを開発中で、岡山大学病院・岡山大学医学部とは「食道がんの術後ケアをVR空間上で行うアプリ」を共同開発しています。

 

これは、術後の患者さん達や医療従事者の方々が交流会を行うためのVR空間を提供するものです。特定の場所や日時を指定しても人は集まりにくいですし、そもそも手術した直後の方は移動が困難ですよね。VR空間の中で身体への負担も軽減でき、患者さん同士で意見交換を行うことで早期回復に繋がると思います

食道がんの術後ケアをVR空間上で行うアプリのイメージ

特化している分野や技術など、他社との差別化をどのように行ってますか?

 

 

災害と医療とは全くの別分野に思えるのですが、やはり災害時に医療は必要不可欠になりますので、将来的には「災害医療」の分野で特化していきたいですね。

 

最近では「VRで避難所体験ができないか」とお声がけいただくことが増えています。避難所では、段ボールベッドや床で寝るのが当たり前で、照明は暗く、衛生環境も十分ではありません。

 

直近で発生した能登地震では簡易ベッドが不足し、多くの方は体育館の床に布団を敷いての雑魚寝でした。こういった「避難所のリアル」を体験できるVRを作りたいと思ってます。この映像によって、被災者さんたちの抱える課題が見えるので、防災教育をされている方、ボランティアをされる方、医療従事される方が、リアルに現場を理解することができます。

 

今後、特に注力したい取り組みを教えてください。

 

 

災害に対する意識を、日頃から向上させる仕組みづくりに注力したいですね。

 

頭から被る形のヘッドマウントディスプレイVRゴーグルは非常に没入感を生み出せるデバイスとして、活用を続けたいと思っています。一方、弊社としては特別なデバイス無しで、日常に馴染むようなツールを使い、行動変容に繋げていきたいと考えています。

例えば、スマートフォンを通した防災教育ゲームの開発です。災害から生き延びることがテーマのゲームと、データをみんなでシェアできる仕組みをセットでつくりたいと考えています。ゲーム内では単純に避難するだけでなく、人を助けることもでき、人を助けると自分の動きも遅くなるなどのリアルな条件を設けていきたいと考えています。

 

 

防災教育は「学校や自治体が行うもの」、いわゆる「公助」のイメージが強いと思います。しかし、当ツールを使い、行政サービスとしての「公助」を「自助」「共助」という自発的な動きに変えていきたいのです。

 

もしもの時に対する意識を一方的に与えるのではなく、自分たちからおのずと興味を持って学べるようなツールの制作が理想ですね。中学生や高校生の若い方がゲームをプレイすれば、ご家族やクラスメイトと話し、そこで災害時の情報を共有することができます。まずはシステム開発と話題作りの段階で貢献できたらと考えています。

 

朝日さんのもつ商品への自信と信頼が、営業活動の成功を生む

営業のモチベーションは「商品の良さに気づいてもらえること」

ここからは営業担当の朝日さんのお話をお聞きしたいと思います。まず、お仕事の内容を教えてください。

 

 

私は主に広報と営業を担当しています。SNSや社内のブログの更新が広報としての仕事ですね。 営業の仕事は、取材対応、外部の会議への参加、自治体の方へVRの紹介などを行っております。

 

弊社では業務の分担を厳密には決めておらず、皆で臨機応変に協力し合っています。総務担当者が機材管理や営業補佐も担っているなど、部署間の連携もかなり柔軟ですね。事務所にいるメンバーがお互いをサポートしながら仕事をしているという感覚です。

 

どのようなことが仕事に対するモチベーションや原動力となっていますか?

 

 

自分に嘘をつかずに働ける職場環境がモチベーションに繋がっています。

 

例えば、弊社には髪色自由という環境があります。これにより「髪色の自由が許されてるんだから、これくらいのことはがんばって乗り越えよう!」と思えるわけです。

 

加えて、相手が弊社の商品を気に入ってくださることが、モチベーションに繋がっていますね。私自身、自社商品に自信をもっているので、胸を張って商品紹介できています。私は映像制作ができないので、作り手の方々を尊敬していますし、弊社の災害VRは本当に素晴らしい技術です。映像の鮮明さや、VR酔いしにくいところも自慢のポイントです。自社商品のクオリティの高さに気づいていただけることが何よりも嬉しいですね。

 

白獅子の商品でここだけは他社に負けないぞという点を教えて下さい。

 

 

やはり映像のリアルさと、VR酔いしにくい部分ですね。 私も実はVR酔いするタイプで、今までVRを避けてきていたんですけど、自社商品では酔ったことがありません。本当に技術力が高いんだと身をもって実感しています。

 

朝日さんは大学時代、どんな勉強をされていたのでしょう?

 

 

私は教育学部出身で、教員を目指していました。しかし、家庭教師のバイトを経験する中で「自分は教室で40人の生徒にまんべんなく接するよりも、一対一で相手と向き合う方が向いているかもしれない」と感じました。目の前にいる相手にフォーカスした解説の仕方をする方が私には向いていたので、一対一でお話ができる営業職を目指して弊社に入社したんです。

 

営業の現場では、「押す」と「引く」のタイミングを意識する

 

営業では飛び込み営業をする場面もあるとお聞きしましたが、営業のコツや気を付けている点があれば教えて下さい。

 

 

まずは商品を見ていただき、私が何をおすすめしたいのかを端的にお伝えしています。不要だとお返事いただければ、長居はしません。押すところは押して、引くところは引くという感覚です。

 

「映像が手元にあるので、5分だけ見てみませんか?」とお伝えすると、「5分だけなら」って言ってくださって、そこから15分以上お話が盛り上がることもあります。見ていただけると、クオリティが伝わるからです。VRが苦手な方でも自社商品は酔うことがないため、「すごいから見てみなよ!」と周囲の方々に勧めてくださることもありました。営業中には、まず見てもらうためのお声がけを大事にしてます

都市部での津波でのVR。でも酔いにくい

成功事例の一つとして高知県日高村という小さい自治体があります。朝日くんが飛び込んでくれた際に、危機管理室の室長さんが自社商品を気に入ってくださり、地域のイベントで使っていただくことが決まりました。それが高知県庁の土木防災課の方に伝わり、「高知県の地形に合わせたVR映像を作ってほしい」というご依頼に発展しました。自社商品を見てくれた方が弊社のファンになり、周囲に推してくださっていたということがありがたいですね。

 

飛び込みはメンタルのタフさが必要だと思うのですが、ご自身でもタフな方だと思われますか?

 

 

メンタルはすごく弱い方だと思っています(笑)

 

でも、知らない人と話すのは好きなんですよ。営業中に誰も相手にしてくれない時はへこみますが、1〜2組は話を聞いてもらえます。相手をしてくださる方のおかげで何とかメンタルが保たれていると感じますね。

 

朝日の場合は、コンテンツへの愛情とチームへの信頼を原動力に、一歩踏み出してくれています。営業スタイルも溌溂(はつらつ)としていて熱意が伝わりますし、非常に感謝してます。

 

映像を見ていただいた後の営業話法も知りたいです。

 

 

相手によってアプローチを変えており、定型文はありません。真面目な方には、自社の真面目な商品設計や取り組みにフォーカスしてお伝えしますし、VRや映像技術が身近に無いご年配の方には資料や写真を見せて丁寧に解説します。

 

あとは、その場の雰囲気を見てムードメーカー的な方とか、反応がよさそうな方を狙って、まず映像を見てもらうことが営業のコツですね。その方が気に入ってくれると、周囲に話を広げてもらえる確立が高いので、アプローチする相手も戦略的に選ぶよう意識しています。

猫のしろ社長の存在も営業活動を後押ししている

学生時代、大切にすべきことのアドバイス

学生のうちにやっておいた方がいいことを教えてください。

 

 

ありきたりですけど、勉強ですね。仕事でお金をもらうようになると1日の大半が仕事ばかりになっちゃいます。「勉強が仕事だ」と言われるのは大学生のうちだけですから、当たり前のことなんですが、しっかり勉強して卒業してください。経験と知識は誰にも奪われないものですよ。

 

勉強も遊びも、たくさん経験することが大切ですね。どんな経験もいつか絶対に役立ちます。大学生のうちは何でも経験して、将来何かしらの糧にするぞと構えているのが良いと思います。

 

 

では、最後に高校生、大学生へメッセージをお願いいたします。

 

 

受験勉強を面白がって取り組んでほしいと思います。受験勉強は、創造性より再現性が求められる分野です。この再現能力が確立されれば、自分だけの表現の幅も広がるし可能性が広がると思います。

 

もちろん受験や大学での研究だけが全てではありません。でも、しっかり勉強することに損は絶対にないでしょう。もちろんスポーツに打ち込むのも全然ありだと思いますし、これだと思った活動に打ち込んでほしいですね。 何かに一生懸命打ち込んだ経験があると、大人になってからも人生の選択肢は広がります。ぜひ、「学び」を楽しんでください。

 

本当に代表が言ってくださった通りです。例えば、学校で受ける試験は思考力の訓練になっています。仕事や日々のコミュニケーションの中でも、理想のゴールにどうやって到達すればいいのか考える場面が度々訪れます。その方法を考える過程は、練習してないとなかなか身につかないことです。

 

全く興味がない範囲の勉強や試験も、考える訓練だと思って積極的に取り組んでみてください。将来自分のやりたいことや好きなことに向き合う時に、学生時代に培ってきた思考力が活きてくるはずです。

 

なるほど・・・、勉強に対して、より真剣に向き合ってみようと思います!本日はお忙しいなか本当にありがとうございました。

(編集:森分 志学/執筆:杉原 未来)

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