「ああ〜、時間が足りない!だいたい強みって何書けばいいんだよこんちくしょう!」
これが就活を控えた大半の学生の心の叫びじゃないでしょうか。
やっていることはいろいろあるから絞りきれないし、そんな自分には他の人と似たり寄ったりの中途半端な強みしかない気がしてくる。好奇心旺盛?行動力がある?なんて書いたらいい?誰に相談したらいい?
今回のとことんトークは、そんな就活生の悩みの渦中にある大学生・いぶきさんと地元岡山で新事業を展開して注目を浴びる経営者・植田さんの対談録です。百戦錬磨の経営者のすごいアドバイス、みなさんも受けとめてください!
目次
登場人物紹介
株式会社植田板金店の二代目社長。岡山イノベーションコンテスト2017大賞の「小屋やさん」、展示場とコワーキング&イベントスペースを一体化した「ひとやね」など、新事業にも果敢に取り組む。
悩み①やりたいことの同時並行がうまくできません!
だから、もし何かやりたいことがあるなら仲間をつくることをオススメします。
ただ、いぶきさんは「次々成功させている」と言ってくれたけど、実際のところうまく行っているものを目立たせているから全部うまく行っているように見えるだけで、立ち上げたけどうまく立ちゆかずに止めたことだっていくらでもあります(笑)。
今、職人のなり手が減っているって知ってますか?
しかも、今や労働時間の規制や新築着工棟数の減少で稼ぎも以前より少なくなってきているから、なおさら若い人がやりたがらない仕事になってしまっているんです。まして、屋根や外装を手がける「建築板金業」なんて、一般の人には存在自体知られていない。
でも、リフォーム需要は高まっているし、AIや機械では代替できないから、板金も職人も今後も絶対必要な仕事なんです。この問題に真っ向から取り組んでいきたいと思っているから、「屋根の職人ってカッコイイよね」「植田板金店なら職人してもいいな」と思ってもらうことにつながるように、考え抜いて選んでいます。
昔は腕利きの職人さんの中に月150万ぐらい稼ぐ人もいたもんだから、「技術を身につければ職人ってこんなに稼げるんだ!」って思ってね。
▼植田さんの歩んだ道が気になる人はこちらの記事をどうぞ▼
悩み②うまくチームを引っ張れません!
「結果だしてりゃ文句ないだろ。オレの言うこと聞けよ」って態度して「あれ、人がついてこねぇ。誰もこっち見てねぇ。」って失敗したりね。
「ああ、一人でやってちゃダメなのか」って実体験で失敗を重ねて、徐々に徐々に学んできているような感じだから、長くかかった(笑)。
でも、それはベテランが悪いっていうわけではないよ。だって、例えば「展示場兼コワーキングスペースをしようと思うんだけど」って言われても、普段企業相手に屋根や外壁の施工を責任持って担当しているスタッフの立場からすれば「いやぁ、それはちょっと……。」って反応になるのは当然だから。
僕がやろうという新事業には、彼らが担う本業へのつながりが必ずあるんだけど、それは深く深く考えた上でようやくつながるような話だから、パッと聞かされる側にはなかなか伝わらないんです。当たり前だよね、そのことを考えている時間が違うから。立場の違いも当然あるし。
だから「どう思う?」と中途半端に相談したりはしません。
色々考えていることがあっても、情報収集段階なら当然発表はしません。「本当に植田板金店に合うのか」「将来的にうまく行くのか」「具体的に進められる社内体制なのか」「発表のタイミングはいつがベストなのか」、そういうことを絶えず考えているから。急に言い出したように周りからは見えても、実際に急に思いついたわけではなくて、準備してるからね。
これは学生さんでも同じだと思うけど、相談するのは一緒に活動するメンバーじゃなくてもいいよね。相談できる外部の「仲間」も大事な存在じゃないかな。
他社が頑張って追いつけるぐらいの強みなんて、正直大した強みじゃない。深い所に入って「これについては誰にも負けんよ」っていう分野に事業を展開していくものだからね。
悩み③自分だけの強みが見つかりません!!
「自己PRが大事!強みが大事!」ってよく言いますよね。自分でも書いてみているんですけど、「この強みってそこまで珍しくないな」と感じてしまうんです。「たしかあの人もこういうこと書いてたな」と思い当たったりもして。
さっき植田さんが話していたような「絶対誰にも負けない強み」を見つけるにはどうしたらいいんでしょうか?
でも、本当は負けるかもしれないけど「ここでは私、負けないです!」って自信を持って言い切れるものが欲しいよね。自分がそれだけ自信を持って言えるなら、多分それなりに強いから。それがどんどん時間が経つと研ぎ澄まされて、人に負けないものに育っていくと思う。
僕の場合は、結構マニアックでニッチなところに絞りこんでいったかな。
でも、僕は当初から「板金屋」というワードが非常に重要だと思って、変えない方がいいと思った。だから、「日本一の板金屋さんを作る」って社長になった当初から「板金屋」であることにこだわり続けてきたんです。 だって、「建設業」という大きなカテゴリーで戦ったら何百億、何千億、何兆という売上の企業があるわけだよね。日本一なんて口が裂けても言えない。でも、「板金屋」なら50億から60億ぐらいでも日本一になれる。僕たちは売上高15.5億ほどで、すでに中国地方でトップの「板金屋」です。だけど「建設業」の中に入ったら、岡山の中で20番目ぐらいになっちゃう。 「岡山の建設業で20番目です」と「中国地方で1番です」、どちらがインパクトがある?
さらにその『小屋やさん』の下に『ひとやね』という「日本一の小屋の展示事業を持ったイベント・コワーキングスペース」を作ってアピールしている。正直なところ、今の知名度自体は『植田板金店』より『小屋やさん』の方が3倍も4倍もある。でも、こうした『小屋やさん』や『ひとやね』のニッチで尖ったところへの興味から、そこにくっついた『植田板金店』の存在を知ってくれるんだ。 だから、就活生の強みもめっちゃニッチなところに絞りこんでいったらいいんじゃないかな?
「え、いぶきさんの得意なところってそこ〜〜〜!?」ってなったら、採用側としては「めっちゃ面白いじゃん!」ってなる気がするな。
「どうやったら自分の強み、どこにも負けないものを組み立てられるかな」ってずっと考えてるから。
うちも業界相手のBtoBなら「板金屋」が強いけど、「板金屋」だけでは一般の人には絶対に届かない。でも、「小屋やさん」や「ひとやね」なら一般消費者に響く。
一般消費者に興味を持ってもらえるならメディアだって興味を持って取り上げてくれるし、BtoCの売上にも雇用にもつながる。そうすれば若い職人を育てられるし、職人の稼ぎも上げられる。営業カラーを出さなくても植田板金店のことを知ってもらえて、「カッコよくて稼げる職人さん」の世界観を作っていくことができるんです。
これが最終的な理想形かどうかはわからないけど、そういう形を僕は模索しています。
若者へのメッセージ「”学生の強み”で飛び込んで」
「私主催でマルシェをしました!100人来ました!それだけの行動力があります!」って言えたら強いよね。人を上手に巻き込みながら。失敗しても費用的に大きなマイナスがでないように組み立てさえできればいいと思うから。 そんなんじゃなくても、講演会や交流会なんかもやっているから、気軽な気持ちで参加して大人に相談してみるとか、ぜひうちもうまく使ってみてください。
正直、学生が「社会勉強でいろんな経営者の方にお話を聞かせてもらっているんですけど、お時間あったらちょっとだけでもお話聞いてくれませんか?」って訪ねてきたら、それがアポなしでもどうにか都合つけようとするんじゃないかな。全然見返りなんてないんだけどね(笑)。 それぐらい「学生」というブランドはものすごく強い。だからその特権をどんどん使って大人にグイグイ行くってすごく大事だと思うよ。
付き合いやすいコミュニティの中に収まらず「ちょっと居心地が悪いかも?」って感じるところに積極的に行くようにすると、後々めちゃくちゃ生きてくると思うから、動けるだけ動いてみてください。ぜひまたうちにも遊びに来てね。
(編集:北原泰幸)
岡山県内の大学に通う3回生で、就活ではマスコミ業界を志望中。やりたいことが多く、同時並行や自分の強みに悩むこともしばしば。