「この道を進んでいこう」と決めたのに、だんだん違和感を感じて苦しくなってきてしまっている。なのに「一度決めたことを変えるなんてダメだ」と、別の道を探せないでいる。そんな苦しい状況が、時に人生には起こり得ます。
今回はそんなピンチに効く人生のヒントを、図書館司書・龍門あゆ美(りゅうもんあゆみ)が、本好きの大学生・礒野(いその)くんに教えてくれました!
普段表からは見えない司書のお仕事についても、後半たっぷり語ってもらっています。司書が気になっている人も必見です♪
目次
【龍門さんの生き方に学ぶ”別の道”】
子どもの頃から音楽に夢中だった
ーー龍門さんはもともと図書館司書になろうと思っていたんですか?
ーーそうだったんですか!
ライブハウスでは大人の方々とやり取りをしますし、レコーディングではダメ出しもされて「音楽活動って楽しいだけじゃないな」と感じてはいました。でも、ライブのお客さんに「良かったよ」って言ってもらえるとすごく嬉しくて。 音楽をやっていなかったら出会えなかった人たちと出会って、いろんな話ができて。そうしてだんだん「自分は将来、音楽の道に進もう」と漠然とですが考えるようになっていきました。
音楽で食べていく以外の選択肢もある
ーー小さい頃からずっと音楽一本だったんですね。
ーーなぜ図書室だったんですか?
授業に出ていないとき、自分でも「行かなくちゃいけない」ということは分かってはいたんです。それだけに、誰かに話しかけられることはしんどくて。そんなときふらっと立ち寄って本を読んでいられる図書室は、私にとって心の居場所で、「本当に安心して一人になれる場所」になっていました。 そんな居場所があったおかげで、なんとかギリギリ単位もとれて卒業ができました。
ーー卒業後の進路はどうされたんですか?
でも、そうやって音楽だけやっていると「音楽をしなければならない」という気持ちが膨らんでいって、音楽をすることがどんどんしんどくなってきてしまったんです。 「このまま続けていたら音楽を嫌いになる」と、19歳の時には感じるようになっていました。
ーーどうやってその状態を乗り越えたんですか?
確かに音楽を続ける手段として、別の仕事や自分の収入源を持っている人はプロでも結構多いんです。建築家をやってるけど、音楽もプロとして活動している人もいて。 だから、好きな音楽を嫌いにならずに、長く続けていくためにはどうするのか。すごく考えた結果、音楽を続けながら別の道に行こうと決断しました。
別の道を選んだからこそ見えてきたもの
ーー図書館司書を目指すことになったのは、やはり高校時代の経験からなんですか?
ーー資格を取った後、市営の図書館ではなくカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)に入社したのはなぜですか?
それで調べたら、CCCは「図書館という居場所をみんなに広げたい」と掲げていたんです。私は自分の居場所だった図書室をみんなに広めたいと考えていたので、すごく共感してすぐに応募しました。それで、今に至ります。
ーー運命的な出会い!そんなことが起こるんですね・・・。
自分で決めたことを覆してもいい
ーーでも、自分で決めたことを変えることって、すごく抵抗がありますよね。
「決めたことだから変えちゃダメだ」って思うより、「決めたことでも覆していい」「決めた後どう生活するかが大事だ」と思えた方が、日々決断することをあまり怖いことだと思わないようになって、もっと生きやすくなるんじゃないかなって思います。
ーーなるほど・・・。
自分自身が「あの決断は正しかったな」ってふり返ることができるように、これからも決めた後、どう生活するかを大事にしていければいいなと思っていますよ。
ーー決めたことよりも、その後どう生活するかが大事。決めたことを覆してもいい・・・。ありがとうございます、すごく勉強になりました!
【龍門さんの図書館司書の仕事】
Q1.図書館司書って実際どんな仕事をしてるの?
ーー現在龍門さんがしている司書のお仕事について教えてもらえますか?
でも、実際には司書にはそれぞれ担当業務があって、利用者の方から見えていないところでたくさん作業をしているんですよ。たとえば私には児童書(子ども向けの本)とレファレンスサービスの担当としての業務があります。
ーー担当があるんですか!児童書の担当とは具体的にどんな業務をするんですか?
ーーいろんな業務がありますね・・・!
「司書の仕事ってカウンターに座ってするものって思ってたのに、なんでこんな重たいものを持たないといけないの・・・」って、想像していたものとの違いにびっくりしました。
ーーもう一つの担当の「レファレンスサービス」は、どんな業務なんですか?
もともとそのテーマに詳しい方が依頼に来られることが多いので、こちらも本当に分からないことが多々あります。だから、「どういった分野のものなんですか?」というレベルでお聞きするところからはじめて、なんとかその方が求めている資料や文献を探し出して、「この文献にこういうことが載っていましたよ」ということをお伝えします。
ーーさきほど12万冊っておっしゃっていましたよね、図書館にある資料って膨大じゃないですか?
だから、自分の興味のあるもの以外の本を読んでいる時間が圧倒的に長くて。よく友達に「図書館司書って勤務中に本読めるんじゃない?」って言われますが・・・確かに本を読んでいるといえば読んでいるんですけど、ちょっと違いますよね(笑)。
ーー僕はレファレンスサービスを使ったことがないんですが、どんな使い方ができるんですか?
答えそのものをお伝えすることはできませんが、図書館司書はどうやったら一番早くその知識にたどりつけるかという「調べ方、手順、方法を知っている人」なので、すばやく解決にたどりつくまでの道しるべとなることができます。 よくみなさん「作業してもらって申し訳ない」っておっしゃるんですけど、レファレンス業務は図書館司書の業務の1つで、相談してくださるのは私たちとしては嬉しいんです。だから、ぜひ気軽に声をかけて欲しいなって思っています。
ーーそうなんですね・・・!ぜひ利用させてもらおうと思います!
Q2.図書館司書として働くのは難しい?やりがいは?
ーー図書館司書になるのって、大変なんですか?
ーーやっぱり狭き門なんですね・・・。
それに最近は市が直営している図書館だけじゃなく、民営の図書館や個人の方が運営している私設図書館など、図書館自体のバリエーションも豊かになってきています。 図書館のあり方もどんどん変わってきていて「電子書籍をどう扱うか」「イベントをどう行うか」「市民活動を応援するにはどうしたらいいか」と考えることもたくさんあります。だから「図書館司書の役割」も多彩になっていっているので、今後はいろんな「図書館司書」の形が増え、活躍の場が広がっていったらいいなと思っています。
ーー図書館司書として働いていて感じるやりがいには、どんなものがありますか?
「図書館があったから〇〇を始めたよ」「相談してみたら××ができました!」「夏休みにこの1冊を読んだよ」、そういう言葉をいただいた瞬間はなによりうれしいです。
ーー図書館司書、やっぱり素敵な仕事ですね。今日は本当にありがとうございました!
今回のゲスト。岡山県高梁市にある高梁市立図書館に勤める図書館司書さん。高梁市立図書館を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブに21歳で入社。司書歴は現在6年目!