やりたいことはあるけど、挑戦するのが怖いーー
きっと誰もが、そのように感じたことがあるのではないでしょうか。失敗は怖いし、未来が見えないからこそ不安になりますよね。
今回インタビューしたメイク講師・板野 早百合(いたの さゆり)さんの生き方は、その不安に立ち向かう一つの考え方を教えてくれます。「漠然とした不安で一歩が踏み出せない」と感じている人は必見!メイクや美容の世界についても知りながら、板野さんの言葉に背中を押してもらえるはずです。
目次
板野さんのお仕事
★板野 早百合(いたの さゆり)さん
多岐にわたるメイク講師としての活動
私は今、主にメイク講師として活動しています。 企業主催のセミナーで就活生向けのメイク講座を行ったり、ミセスコンやボディビルコンテストが参加者に提供するビューティーキャンプで、数か月にわたり講座を行ったりしています。 また、個人向けマンツーマンレッスンをすることもありますね。そのほかにも、ウェディング当日の花嫁の方のメイクをしたり、オンラインでメイク座談会を開催したりもしています。
メイクって、本当に大きな力を持っていると私は思うんですよね。メイクをすることで意欲・活力が増すと脳科学でも証明されていますし、実際にメイクレッスンをしていても、みなさんの表情がメイクする前と大きく変わるんです。メイクが「頑張ってみようかな」とやる気を出すきっかけになるんですよ。
今日が人生最後の日だと思って生きる
生きていると悩みは多いですが、もし今日で自分の人生が終わってしまうとしたら、そんな悩みよりも違うことを重要視すると思うんです。 例えば、誰かから心無い言葉を言われたとしても、残り少ない時間を後悔なく過ごすために「クヨクヨ気にしてないで、美味しいものを食べて気持ち良く寝よう!」と切り替えられるというか。自分には時間がないものだと思って生きるって感じですね。
例えば、一日の終わりに「本当はまだやることがあるけど、もう疲れたし寝てしまいたいな」って感じることもあります。それでも「今日が人生最後の日かもしれないから、終わらせておこう」と思うんです。 それはやっぱり、もし明日生きていたとしても「昨日これをしておけばよかったな」と思いたくないからなんですよね。後悔がないように、その瞬間を大事にしながら生きています。 とはいえ休むことももちろん重要ですし、誰しも怠けたくなる気持ちはあります。だから、「100頑張らなくてもいいから、10くらいまでは頑張ってみよう」って思うようにしています。自分のできる範囲で、ちょっとだけでもいいからやるようにしていますね。
でもみんなそれぞれペースは違うし、自分自身が「今日も出来た!」って思えることが大事だと思うので、私はハードルをうんと下げて、誰でも簡単にできそうなことから始めています。「30秒でいいから机に座る」みたいに(笑)。 習慣づくりは投資と同じだと思うんです。ビジネスでも勉強でも運動でも、習慣にできたら本当に強い。だからちょっとずつでも、毎日やるようにしています。
板野さんのこれまで
なかなか活発になれなかった幼少期
当時の私は、そんな自分があまり好きではありませんでした。自分の意見をきちんと言える友達を見ると、「どうしてあの子は素直に発言ができるのに、なんで私は思いを内に秘めてしまうんだろう」と悩んでいましたね。 ただ、遺品整理をしていたときに見つけた母親の化粧品は、ずっと大事に持ち続けていました。寂しくてたまに使ってみたこともあって。今思えば、メイクへの興味はあのころから始まっていたんでしょうね。
人生を後悔しないために、今を大切にしよう
その会社は、新入社員の私たちにいろいろな研修や講義を受けさせてくれました。業務と関係ないことでも、自分が求めればどこまでも学ばせてくれるような環境でしたね。今考えると本当にありがたいことなんですが、何でも「やります!」と取り組んでいるうちに、気がつけばものすごい勉強量になっていました。 高校を卒業して「やっと勉強の期間が終わり、ようやくお金を稼ぐ側になった!」と思ったのに、かえって学生時代よりも勉強することが増えているんです。そこで「人生って、一生学ばないといけないんだな」と気づきましたね。正直、最初はすごく動揺して「この先自分は耐えられるのかな・・・」と不安に思っていました。 でも、目の前の仕事をこなしながら学び続けた経験があったから、やりたいことが出てきたときに「勉強してチャレンジしてみよう」と思えるようになったんだと思います。すごくいいきっかけになりました。
幼少期から命を落とすということが怖くて積極的に行動できなかった私ですが、いろいろな仕事にチャレンジする中で、ふと「それって悩むほどのことじゃないな」と思ったんです。そして「いつ人生が終わるか分からないんだったら、後悔しないよういろいろなことをやっておいた方がいい」という思いが湧いてきました。 そこからは、人間関係にも全く悩まなくなりましたね。それまでは不満や意見を自分の中に抱えることが多かったのですが、「後悔しないように、思ったことは言っておこう」と伝えるようになったからです。また、同じように感謝や謝罪の言葉もきちんと伝えるようになりました。人生を後悔しないよう、毎日を全力で生きるようになっていったんです。
もっと人の役に立ちたくて、医療分野へ
健康食品会社では、予防医学の考え方をベースに、病気になりにくい体を作るための製品を作っていたんです。でも、私の家族が立て続けに病気で入院したことがきっかけで「今病気で困っている人」の役に立ちたいと思い始めました。 医療関係は全くの未経験でしたが、そこから会社に勤めながら勉強を続け、無事試験に合格し、病院の看護助手として勤め始めました。
確かに日本では転職に対する不安が根深いですよね。でもこの頃私はそうは思わなくて、ただのチャレンジとして捉えていました。「もしうまくいかなかったらまた別の場所に移ればいい」と思っていましたね。 やりたいことをやらずに後悔するのが嫌で、あえて根拠のない自信を持って挑戦していました。今でも、チャレンジはすればするほどいいなと思っています。
幼いころの夢を叶えてあげたくて
父の死も相まって、「人間の命はいつ終わるか分からないから、好きなことをしよう」という思いも強まっていました。だから自分の気持ちに正直に、メイクや美容の仕事をしようと決心しました。 そこから、病院に勤めながらメイクの勉強を始めたんです。昔から海外の映画やドラマが好きだったので、ハリウッドセレブたちのメイクアップアーティストの技術を学ぼうと思い、海外に行ったりオンラインで学んだりしましたね。
成功する確信はありませんでしたが、「ダメだったらまた働けばいい、失敗してもいいからやってみよう」という感じでしたね。
今の日本では、日常づかいのしやすい韓国メイクやナチュラルメイクのニーズが大きいですよね。でも私のメイクはハリウッドセレブがする、舞台のようなドラマティックなものなので、どうしても求められるシーンが限られてきます。 もちろん私のメイクも、日常に落とし込めるんです。それをみなさんに知ってもらうためにはどんな伝え方をしたらいいのか、悩みましたね。「日本で活動する以上、日本に合わせて方向性を変えたほうがいいんだろうか」と考えたこともありました。 でもやっぱり、「悔いを残さないように、自分の好きなことをやろう!」と思ったんです。日本で主流のメイクも自分のメイクも否定せず、両方を活かしながらやってみようと思い、方向性が定まりました。
そのため、お客さんがメイクで何を大事にしているかお話をしっかり受けとめ、それからこちらの意見も伝えるということをいつも大切にしています。結果、本当に素晴らしいお客さんに恵まれました。みなさんが口コミで私のことを広めてくださったおかげで依頼も増え、今もお仕事を続けられています。
板野さんのこれからと、若者へのメッセージ
もしかすると5年後はまた全然違うことをやっているかもしれませんが、それもきっと今までのこと全部がつながってくるんだと思います。
もう一つは、物事を失敗か成功かで考えないでほしいということです。「失敗したらどうしよう」と恐れる必要はなく、どんなことでも経験になります。積み重ねた経験の向こうにきっと幸せがありますよ。 何かを「失敗だった」と思わず、やりたいことをどんどんやって、今この瞬間を楽しく生きてくださいね!
(編集:有澤可菜、北原泰幸)