かつて学校の先生を目指していた市役所職員・直原真弓さん

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  • #夢とは別の仕事に就いたらどうなる?
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公開日 2022.10.18

市民の生活を支える市役所職員。とても身近で、安定したイメージのある人気の職業です。今回は市役所職員を目指す専門学校生の坂本さんが、赤磐市のまちづくりに取り組む政策推進課の直原さんにインタビュー。

 

「学校の先生になりたい」という夢があったという直原真弓(じきはらまゆみ)さんが、どう市役所でキャリアを積んでいったのか。夢とは別の仕事に就くことも考えて悩んでいる人にも、ぜひ読んでほしい内容です。

 

直原さんのお仕事

★直原真弓さん

今回のゲスト。教員になる夢を持って立命館大学産業社会学部を卒業するも、現在は市役所職員としてバリバリ働いている。好きなことは散歩、ボーッとすること。

 

「いいまちだな」と思えるまちに

ーー直原さんは赤磐市役所で現在どんな仕事をしていますか?

 

私は赤磐市役所の政策推進課という部署にいます。私たちの部署は地域を元気にして、住んでいる人たちが「いいまちだな」と思えるまちになるような取り組みをしています。赤磐市に移住してくる人が増えていくためにまちのことをPRする活動もしています。

 

例えば、生徒たちが地域をフィールドとして活動をしたいと言った時に学校・行政・地域をつなぐ役をすることもあります。また、地域の人たちが新しい働き方をするサポートをする講座も運営しました。

 

自分達が前に出ていろんなことをするというよりも、市役所がいろんな事業に動いていくために、それぞれの担当部署同士の間を調整するような役割ですね。

 

ーー他の部署や地域の人達を「下から支える」ようなイメージですか?

 

役所の仕事は部署間連携が苦手な「縦割り行政」なんて言われることもありますよね。けれど、課と課が一緒に取り組まないと解決できないまちの課題が今どんどん増えてきているんです。だから、部署同士をつないで「一緒に集まってこうやろうよ!」というつなぎ目になろうと動いています。

 

下から支えるような動きもあれば、自分が前にでて対応することももちろんあります。みんなが動かないときには「〇日までにこれをやりましょう!」と事業を前に進めるはたらきかけをしていくこともあります。やり方はいろいろですね。

 

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一緒にやってよかったと喜んでもらえるように

ーー仕事をする上で大切にしていることはなんですか?

 

実は、私は学校の先生になりたかったので、私自身の抱く将来の夢に向かって働いてきたわけではありません。そんな私がいつも大切にしてきたことは、市民の方々が幸せを感じて「このまちに住んでよかった」と思ってもらえるように仕事をするということです。

 

ーー仕事の喜びはどんなときに感じられますか?

 

やっぱり「一緒に事業をして良かった」と喜んでもらえたときですね。実際、行政の仕事は喜びの声を受けるよりも、苦情を受けたりお叱りを受けることが多いんですよ。

 

でも、だからこそ「良かった」と言われると励みにもなります。部署同士がつながって双方にとって良い効果があったり、職員にも「やって良かった」と思ってもらったりすると、なおさらうれしいです。

 

ーー仕事の中で特に難しいなと思うことはありますか?

 

たくさんありますが、みんなをその気にさせることですかね。大きな成功事例と比べて「なんでうちではできないんだろう」と思ってしまいがちですが、「一緒にやって良かったね、できたよね!」と小さな成功体験を認め合う経験を、みんなの中にだんだん積み重ね、未来につなげていくことが大切です。

 

私たちの仕事は人にやってもらうことがことが多いだけに、スモールステップで地道にその積み重ねをつくっていくことが特に大事で、難しい部分でもあります。

 

地元のイベントに顔を出す

ーー休みの日はどんな風に過ごしていますか?

 

他の地域でやっているイベントを見に行ったり、地元のイベントに顔を出しに行ったりしてしまいますね。やっぱり地域のことを知らないと、何かしようと思っても机上の空論になってしまう気がして。

 

地域活性化とよく言いますが、一人ひとりが思い描く地域活性化はそれぞれ違っているんです。だから具体的に何をどうすることが活性化だと捉えているのかを知ることが大事で。それに知らない顔の人間がいきなり「こうしましょう」と言っても信頼感や納得感は得られないんですよね。

 

だから地域の行事がある時には、なるべく行きます。とにかく顔を出して、ちょっとでも地域の様子を知って、話をします。だから買わなくてもいいたこ焼きを5つや6つ買うこともあって、食べきれない分は人にあげたり、差し入れにしたりしてます(笑)。

 

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直原さんのこれまで

第1章 社会の先生を目指してぶつかった壁

ーー直原さんはもともと赤磐市のご出身なんですか。

 

そうです、高校までは赤磐市に住んでいました。でも、学校の先生になるのが夢だったので「赤磐市で働きたい」とまったく思っていませんでした。

 

ーー先生を目指そうと思ったきっかけは何だったんですか?

 

中学のころ軟式テニス部に入っていたんですが、そのときの顧問の先生の影響です。部活動ではめちゃくちゃ厳しくて、社会の教え方は抜群に面白い。好きなテニスを続けながら人に関わり、人が変わっていく場面に立ち合える先生っていいなと思いました。

 

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ーー何の先生を目指したんですか?

 

市外に出て、中学校の社会、高校の地歴公民の先生を目指しました。でも、免許をとったものの「社会」は色んな学部・学科で免許が取れるから採用試験の受験者数が多くて。しかも採用枠も少なく、倍率がめちゃくちゃ高かったんです。

 

私はいわゆる就職氷河期世代で、民間企業の採用も厳しくて。採用試験にはことごとく落ちまくりました。

 

もともと自分に才能やできることは多くないと思っていましたが、自分自身で動いて人とのつながりをつくっていくことでカバーしていかないといけないなと、このときから強く思うようになりました。

 

第2章 教育委員会の仕事へのめぐりあわせ

いろんな採用試験に落ちてしまって「どうしよう・・・」と思っているときに「地元に帰って来て働かないか」と声がかかりました。そこではじめることになったのが吉井町(合併前)の中学校の心の教室相談員と教育委員会臨時職員です。

 

ーー心の教室相談員はどんな仕事だったんですか?

 

いじめや不登校が多くなった時期で、生徒達に学校の先生でも保護者でもない中間のような立場で関わる仕事でした。週何回か学校に行きづらい生徒達が来て一緒に過ごす居場所で、私は若いので「地域のお姉さん」として関わっていました。例えば「今日なんしよん?」「どしたん?」と声をかけて話したり、一緒に折り紙を折って過ごしたり。貴重な経験でした。

 

ーー相談員や教育委員会の臨時職員は希望して配属になったのですか?

 

いえ、まったく。その後の教員採用試験もことごとく落ちつづけて。そんな時に吉井町役場の採用試験があり「受けてみるか」という少し後ろむきな気持ちで受験しましたが、合格し、今に至ります。

 

吉井町役場入庁2年で市町村合併後の赤磐市役所の職員になりました。合併後も教育委員会の配属になって、約10年間同じ部署で働くことになりました。

 

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ーー赤磐市の教育委員会での仕事はどうでしたか?

 

合併直後だったこともあり「これから新しい町の教育委員会や教育行政がはじまるんだ、ここをしっかり頑張らないと!」という思いが自分の中に強くあって、非常に良い経験になりました。

 

4町が集まってできた市だから、合併協議会で2年前から話を詰めてきたといっても実際行政を動かしていくと「ええ!?」って噛み合わない部分や調整できてない部分が都度出て来て。私は事務方でしたが、一つずつ改善を重ねていく経験ができて本当に自分にとっても大きかったです。

 

第3章 先生よりも市役所職員を選ぶようになるまで

ーー現在の部署に至るまではどんな経緯がありましたか?

 

10年間の赤磐市教育委員会での仕事の後、一転して岡山県大阪事務所に2年間出向になり、研修生として観光振興・企業誘致業務を学ぶために企業や旅行会社をたくさん訪問しました。赤磐市役所に戻った1年目は商工観光課、2年目にはまち・ひと・しごと創生課と政策推進課に配属になり、現在のような仕事にたどり着きました。

 

ーー学校の先生になりたいという気持ちとはいつ折り合いをつけたのですか?

 

正直なところ、学校の先生になりたいという気持ちはずっとありました。それで何回も教員採用試験を受けていたんです。

 

ーーどうして先生にならなかったんですか?

 

やっぱり今はこの仕事をやれるだけやっていきたいなって思ったんです。それで気持ちの整理がつきました。

 

ただ、憧れはずっとあるので、もしも今の仕事を辞めることがあれば、学校や子どもたちに関わる仕事をしたいと思っています。

 

市役所を目指す若者へのメッセージ

ーー私は市役所職員を目指しています。最後に何かアドバイスやメッセージをいただけますか。

 

学生時代、若い時にいろんな経験をして、そしてぜひ赤磐市役所を受験してください(笑)。

 

ただ、市役所職員を目指す人の中には「地域のために仕事がしたい、地域の人と仕事をしたい」という熱い想いをもって選んでくれる人もたくさんいますが、そういう人が実際に市役所に入ってみると理想と現実のギャップに突き当たって辞めてしまうこともあって。それは私たち上の世代の責任でもあるので、私たちも皆さんに選ばれるような職種、職場にできるように頑張っていこうと思っています。

 

それにこれからはAIでできることはAIがするような社会になると、公務員の数も半分でよいような調査結果もでています。安定した職場でなくなってくるかもしれません。

 

市役所の職員を目指してくれているのであれば、ぜひいろんな町のいろんな話を聞いてみてください。職員に会って話を聞く機会を持つと、特に良いと思います。その上で自治体や職種・職業を選んでいってくださいね。赤磐市役所でお会いできるのを楽しみにしています!

 

(編集:北原泰幸)

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