「やりたい仕事がみつからない」、「どんな仕事が自分にあっているかわからない」と悩む高校生や大学生は、少なくないと思います。
そこで、現在は岡山県和気町でクラフトチョコレート店埜藝菓(のぎか)を営み、美容師・フリーター・デザイナー・地域おこし協力隊などさまざま仕事を経験された平井さんに、仕事選びの際どんな悩みや葛藤をもち、どう乗り越えたかについて詳しく伺いました。
目次
平井さんのお仕事
★平井麻早美(ひらいまさみ)さん


カカオ豆から板チョコへ

岡山県和気町でチョコレート店を営んでいます。カカオ豆の焙煎から、チョコレート販売までを1人で担当しています。
マルシェにも出店し、チョコレートを使った焼き菓子やケーキ・ドリンク、夏はアイスクリームも提供しています。

木のぬくもりを感じるお店



漢字の「埜」には「ありのまま・自然」、「藝」には「植物に手を添え、土に植えること」、「菓」には「菓子や果物」という意味があります。 埼玉県から岡山県に移住してきて、自然に栽培された野菜や食材の重要性や美味しさを感じたので、もっと広げていきたいという想いもあります。

看板商品「CHOCOMAINU」(チョコマイヌ)

多彩な商品ラインナップ
豆の焙煎からパッケージ化まで3週間




熟成後、板チョコの形にするときにテンパリングという油脂分の結晶形を変えるための温度調整作業をします。その後、型に流し入れて固める作業に1日かかります。

クラフトチョコレートの製造工程

3週間かけて丁寧につくる板チョコレート
平井さんのこれまで
髪質を理解してくれる美容師さんとの出会い





それで一気に自信をなくしてしまい、社会人としてやっていけないんじゃないかと思ったんです。本気で命がけでできるような職業じゃないと、正社員になることができないのではと悩んでしまって…。


もがき続けたフリーター時代






得意科目「美術」をヒントにデザイナーへ











ほかにも、仲間たちの本気度や世の中への貢献を目の当たりにし、一緒に大きな仕事をすることもでき、尊敬する人にもたくさん出会うことができました。社会人として、ようやく社会のことを勉強することができましたね。

仲間との記念写真。前列の一番右側が平井さん
臨床心理士を目指し、通信制の大学へ

フリーター時代に親との関係もうまくいかず、仕事も決まらなくて、半年ぐらい家に引きこもり、心を病んだ時期がありました。大学と大学院を卒業すると、臨床心理士の試験受験資格を取得することができたので、25歳のときに通信制大学に入学しました。会社員をしながら、大学に通いながら、資格も取得しました。人生で一番大変だった時期です。30歳前後でした。




結婚・震災がきっかけで、岡山県和気町の地域おこし協力隊に


もう一つのきっかけは、2011年の東日本大震災です。暮らし方を変えたいという想いと震災が重なり、移住することにしました。

和気町にはじめて行った日に、夫婦で「ああこの町だね」と直感が一致し、次に訪れたときには家を探していました。 環境の素晴らしさに加え、和気町を案内してくれた方、先輩移住者の方との出会いがあり、「住んだら、楽しそう」と思いました。一生住む覚悟をもっていたというよりも、住んでみて違うなと思ったらほかの場所を探そうという気持ちで決めました。直感で決めて、もう7年も住んでいます。







和気町の魅力を発信!
チョコレート好きが高じてお店をオープン





カカオとオーガニックのお砂糖だけでつくったチョコレートを販売する専門店に、出会いました。とってもとっても美味しくて。 カカオの口どけや甘さに加え、酸味や香ばしさ、その素材が持ってる個性のようなものがすごく感じられて、それでいて食べたときに体にすっと馴染むというか…。これまで私が食べていた砂糖とカカオ豆以外にも香りをつけたり、違う油脂分を添加するチョコレートとは全く違いました。 チョコレートを食べ過ぎると、私の場合は気持ちが悪くなったり、お腹が重くなります。しかしそのチョコレートは、一切そんなことはありませんでした。

チョコレート愛が伝わってきます!その後、どんな展開があったんですか?
移住した先で商売をしたいという想いはあったのですが、何屋さんになるかは決めていませんでした。チョコレートを手づくりするお店は、まだ日本には少ないからやってみようと思いました。

いつチョコレート屋さんをオープンしたのですか?
2020年の1月に、オープンしました。前に申し上げたように、岡山移住後3年間は地域おこし協力隊の活動をしていたのですが、その間も準備を進めていました。

どのようにチョコレートのつくり方を勉強しましたか?
私が感動したチョコレート専門店が、ワークショップを定期的に開催していたので、参加しました。カカオ豆を焼くところから、機械にかけてチョコレートをドロドロにするところまでを、1日かけて教えてくれたんです。 同じ講座を、何回も受講しました。わからないところをメモして、また聞きに行くということを繰り返していました。

情熱を感じます!
ありがとうございます。ほかには、その専門店発行の辞書のような分厚い専門書(豆の産地や栽培方法、発酵について詳細に書いてある)を貸してもらい、他の発行書籍も片っ端から買って読みました。

オンラインで学ぶことはできましたか?
ショコラティエさんがYouTubeでチョコレートのつくり方を公開してくれました。コロナ禍だったこともあり、質問をして回答してもらうコミュニケーションが活発でした。そのおかげもあり私のような素人でも、プロの方にお話を聞くことができました。

ほかにはどんな準備をしましたか?
お店をオープンする2年前に、カカオ豆を譲ってくださる方が主催のカカオ豆を炭火で焙煎し、その場でチョコレートをつくるという和気町で開催されたワークショップに参加しました。
はじめて焙煎機を購入し、自分で豆を焼きはじめたのもこのころです。シンプルな手順で、本格的なチョコレートができることを体感しました。それから少しずつ学びながら、東京出張のときに、チョコレートづくりを学ぶワークショップに参加するなど準備を進めていました。

レンタル店舗 パブリックカウンターへも出店。右側が平井さん
平井さんのこれからと、若者へのメッセージ

平井さんのこれからの目標を教えてください。
家族3人が住みやすい家を建てたいという目標があります。そのためチョコレート屋さんのほかにも新しい仕事をはじめるなど働き方や暮らし方をちょっとずつ変えながら、動こうとしています。 また仕事と子育てのバランスはとても難しいですが、ベストな働き方や暮らし方を仮定しながら、子どもの成長や性格を見ながら、ちょっとずつ軌道修正していきます。

平井さんから若者へメッセージをお願いします。
仕事選びには、人それぞれのやり方があると思います。最初から「この仕事をするんだ」と決めている人や、目標が明確な人もいれば、私のようにさまざまな仕事を経験するなかで、だんだんやりたい仕事がみえてくる人もいます。 そのときそのとき一生懸命考えて、一生懸命決めた仕事だったら、たとえ長く続かなくても、チャレンジできたことにOKを出してあげてほしいですね。 フリーター時代は職を転々としましたが、その後13年間会社勤めをしました。社会人になり、はじめから自分にあう仕事に出会うケースもあれば、そうでないケースもあります。 はじめての仕事が長続きしなくても、一生長続きしないかというとそうとは限らないと思うので、長続きしないから自分は中途半端な人間だと思わないでほしいです。
また、仕事との出会いは巡り合わせだと思っています。
どんな経験も、その先につながるための大事なステップです。さまざまな仕事を経験した先に、ちょっと幸せに生きている大人もいることを知ってもらえたら嬉しいです。

チャレンジしたことにOKをだしてあげてくださいね

「どんな経験も、その先につながるための大事なステップ」勇気が出る言葉です。平井さん、今日はありがとうございました!
(編集:横山麻衣子)

