香りとアートで自分を大切にすることを伝える・大谷見矢子さん

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公開日 2022.04.03

香りを嗅ぐと、ふと記憶が思い起こされるなんてことはないですか?香りの力を上手に使えるようになりたいとアロマに興味を持っている方も多いですよね。この記事では、香りで自分を大切にする方法を教える”ツグミちゃん”こと大谷見矢子さんの生き方に触れていきます。

大谷さんの活動

アロマテラピー教室とお絵かきサークル

ーー大谷さんはどんな活動をしていますか?

アロマテラピー教室の講師と、お絵かきサークルの主宰をしています。ツグミちゃんと呼んでください。

 

ーーツグミちゃん、名前の由来は何ですか?

 

それまで「みやこさん」とか「みーこさん」と呼ばれていたんですが、もう少し呼んでもらいやすい名前を考えたくて。それで、スズメよりちょっと大きくてかわいい鳥にいい名前の鳥がいないかなと探していたら、「ツグミ」という鳥を見つけたんです。

 

胸を張って大らかに飛び、いろんなところを渡り歩く鳥なんだそうで。自分に合ってるかもと思い、それ以来ニックネームにしています。

 

ーーアロマ教室ではどんなことをしていますか?

 

赤磐市にある熊山英国庭園を拠点に、週末のアロマワークショップや子ども向けの自然の体験とクラフトを組み合わせて「考える力」を養うワークショップを行っています。また、自宅もお店のような外観・内装ではないんですが、サロンとして開放してワークショップを開催することもあります。

 

アロマワークショップで主に行うのは調香体験。調香ってご存じですか?アロマの香りをブレンドして、自分の好きな香りを作る作業を言います。他にもアロマトリートメントオイルを作ったり、マスコットを作って香り付けをしたりもしますよ。

 

「病院のカウンセリングを受けるまでではないんだけど、ちょっと話がしたい」という方がリラックスして話せる居場所をつくりたくてはじめました

 

ソファー, 家具, リラックス, リビングルーム, 枕, 内装

 

自分だけの感動を感じてもらう

ーーアロマのワークショップで大切にされていることはありますか?

 

ワークショップを通じて、見本とは違う「自分だけのオリジナルを作れた」という感動を感じてもらうことを大切にしています。

 

出来上がったアロマを参加者同士で互いに見せ合うと、同じ材料を使ったはずなのに違ったものが出来ていることに気づきます。たった3種類の香りのブレンドでも「私のとあなたのは全然違うね…!」と皆さん驚かれます。

 

そうやって「人と違う」ということをポジティブに受けとめる感覚を得てもらえたらと思っています。

 

もう1つ、「アロマは買う物だけではなくて、生活のなかにある物でも得られるものだ」と伝えるこも大事にしています。

 

ーー小さなボトルを買って香りを楽しむのがアロマじゃないんですか??

 

調理中、鍋から湯気が吹き出すときに感じる野菜の香りだってアロマなんですよ。「アロマテラピーをするなら精油を買わないといけない」という固定観念を外れることで、他にも何かにつけていた自身の思い込みに気づくきっかけになったらいいなと思っています。

 

ーーなるほど!

 

子どもたちが自分を表現するお絵かき

ーーお絵かきサークルではどんなことを大切にしていますか?

 

子どもが心からの自分の言葉で話せる空間をつくることです。でも「他の子の絵を見て良いところを伝えよう」と言うと「無理にでも褒めないといけない」と思って、自分の心にフタをしてしまう子どもは多いんです。

 

そこで、私たちのサークルでは2つのルールを定めました。

 

1つ目は「ルールは子ども達が決めること」です。決めたルールの枠の中では自由にしても良いけれど、皆が不快になることはだめ。違和感があったらその場の活動を止めてでも話し合いをしようと決めています。

 

2つ目は「多数決にしないこと」です。その代わりに「どうしたら数の少ない反対意見も取り入れた1つの結論に持っていけるかを考えてください」と伝えています。絵を描いていようが何をしていようが中断して話し合います。

 

ーー話し合いを最優先にしているんですね。

 

でも、そんな時に「僕は絵が描きたいんだ!」と言える子どもが出たらいいなって思います。「こんな話をしたくないんだ僕は」って(笑)

 

ーーその子は自分の心にフタをしてないですね!(笑)

 

 

大谷さんの脳内

脳内グラフとは、大谷さんの頭の中を垣間見て、その割合を数値化したもの。どんなことを日々考えているのか聞いてみたいと思います。

楽しいことを考える 60%

「何をしたら楽しいだろう」ということをいつも考えています。私は自分に自信が持てなかったので、自己肯定感をアップさせるにはどうしたらいいかずっと考えてきました。

 

楽しいことをしている時が一番良い顔をできるし、どれだけ寝るのが遅くなっても、楽しいことをしていれば次の日に活力も湧いてくるからです。

 

子どもたちとのワークショップでも、私が想像している以上にどれくらいの楽しさを見出してくれるかなあとワクワクしています。

 

他にも食べることも好きなので何を食べようか、どこに行こうかということもよく考えています。

 

色々まじめに考える 40%

人権や環境や社会の問題になるようなことを「自分自身の力では何ができるかな」と考えています。結構まじめでしょ?(笑)

 

例えば、「環境問題を地域の力でなんとかできないかな」とか。赤磐市って自然がいっぱいの田舎なので「地域とタイアップして何かできることがあるんじゃないかな」と考えています。オーガニックなアロマは自然環境が壊れたら取れなくなってしまうんですよ。環境問題って大きく言うけど、身近な足下から考えて「だったら自分はどう発信していこう」って考えていますね。考えてばかりで全然答えがでないですが。

 

他にも、当たり前を疑って思い込みを取り払うには、色んな自分の気がついたことをみんなに伝えるには、子どもや大人が本心で語れる居場所をつくるには、誰も取り残さないようにするには・・・みんな「自分はどうしたらいいだろう」と考え続けています

 

大谷さんのこれまで

第1章 深くは考えなかった進路選択

私が中学生の頃、学区内にはあまり高校がなく、女子生徒の多くが家政科か商業科を選択するような流れがありました。「商業高校に進んだら将来自分のお店が開けるかな」という思いもあったので、あまり深くは考えずに進学先を決めました。

 

高校で進路を決めるころになると、良い企業からの求人に出会いました。「大学に行くより今就職した方がいいよ」という学校からの言葉で就職を決めて、大阪の企業でコンピュータープログラマーとして働くことになりました。

 

第2章 デザイナーさんの家に転がり込む

その企業で勤めていたころはまだフリーマーケットが一般的になる前、ちょうど「フリーマーケットの会」が立ち上がったばかりでした。その会の活動の手伝いをたまたますることになったんですが、そこにはデザイナーや染織家など凄い方々がたくさんいて。

 

「私もこんなことしてみたい!けど、今からデザインの学校にも行けないしどうしようかな・・・」と思っていると、女性デザイナーの方から「仕事を手伝ってくれたら色々教えるけど、来る?」と声をかけてもらえたんです。

 

それで早速そのデザイナーさんの家に転がり込んで、居候させてもらいました。

 

当時はまだ一般的にはパソコンでの作業でデザインをする時代ではなかったので、ポスターなどの手描き作業をお手伝いしました。

 

図面, 鉛筆, スケッチ, 削り器, ゴム, 鉛筆紙, 鉛筆画, デザイナー

 

第3章 アロマとの出会い

先輩の家でデザインを学び終えて自宅に帰った頃、阪神大震災が起きました。この時、私はアロマと出会います。被災地では避難所の環境が整っておらず、多くの人が避難生活にストレスを感じていました。

 

この時、アロマを学んだ方々がボランティアでラベンダーの束を壁に付けたり、アロマディフューザーを持参したりして、環境改善に尽力していました。

 

「アロマテラピーでこんな活動もできるんだ」と知った私は、これを機にアロマの勉強を始めます。子育ての傍ら本を読み、商品の見本市に行き、講習会にも参加しました。

 

当時、尊敬するイギリスのアロマ講師の講習会に参加したかったんですが、「アロマのプロ資格を取った人にしか受講資格はありません」と言われ、急いでアロマのプロ資格を取得しました。

 

第4章 居場所づくりとしてのアロマ・クラフト教室

こうした学びがきっかけになり、自分でアロマ教室を開きはじめました。目的は、家庭で子どもや高齢の方のお世話をしている人のストレスケアのためです。

 

育児や介護のような誰かのお世話をしている人がストレスをためてしまうと、 どうしてもケアワークに良くない影響がでてしまいます。それは、私自身が子育てをしていた頃にストレスから幼児に対して理不尽な怒り方をして、自己嫌悪に陥る経験があったからでした。

 

「もしあの時話を聞いてくれる人がいたら。夜にアロマの香りでリラックスする方法を知っていたら。ひょっとしたらもっと楽だったんじゃないか」そう思うことがいっぱいありました。

 

アロマ教室が、そういう人達にとっての居場所になれば」そう思ってのスタートでした。

 

第5章 ひょんなことから始まったお絵かきサークル

34歳の時にボランティアでお絵かきサークルを始めました。これは今もずっと続けています。かれこれ20年くらいかな。

 

息子の友達がわが家で「絵を描きたい」と言い出したのがきっかけです。だんだん「絵具で描きたい」など本格的になり、クチコミで知らない子まで集まりだして(笑)

 

上手くなるのが目的じゃないよ。絵を楽しむことが大事だよ」と言っています。私にとっても子どもの自由な絵から学びをもらう、楽しい時間です。

 

第6章 48歳で学びなおすために通信制大学へ

学びなおしにずっと興味があり、アロマの関係で大学薬学部の講演をよく聴講しに行っていました。だけど、大学進学にはお金がかかります。主婦で稼ぎも少なく、悩んだ末に入学を決めたのが通信制大学でした。

 

入学すると先輩から「入学は簡単だけどレポートの数と毎回の試験、参考文献の読み込みと卒業までは大変だからね」と言われて、実際すごく大変な学生生活で。「大学生はすごいな」と思いましたね(笑)

 

ただ、通信だったので学費が安く済んだことも家庭への負担が少なかったので最後まで続けることができました。家で夜な夜な勉強して試験を受けるという生活を続け、5年目でなんとか卒業しました。

 

第7章 自分と友好的になる

自分にOKをだしましょう」と私はいつも伝えています。周りのことを大切にしながらも、自分自身を大切にして、自分自身を認めて、自分と友好的になる。そうするからこそ、嫌なことがあっても元気でいられると思うんです。

 

それをみんなに伝えていくために、私はアロマやアートを取り入れています。リラックスした感覚を得た時に香りがあると、辛い時に同じ香りを嗅いだら、リラックスしていた記憶が蘇ってきて落ち込みすぎないんですよ。辛くなったらまた香りを嗅げば、その時の成功体験、自分自身を認められた時を思い出せると思うんです。

 

派手じゃなくてもいいので「いつも自分はハッピーだ」と言える生活ができるように、私自身も自分と友好的な関係を築くことを目標にして生きていきたいです。

 

(編集:北原泰幸)

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