フリーアナウンサーで、講師で、母で、etc・妹尾恵美さん

  • #好きなことと関わる方法は一つじゃない
  • #放送
  • #夢って変えてもいいのかな?

フリーアナウンサーをはじめ、絵本の読み聞かせや被災地での朗読会など。
この記事では、様々なかたちで誰かの役に立とうと行動する妹尾恵美(せのおえみ)さんの生き方に触れていきます!

【現在の妹尾さん】

Q1.妹尾さんはどんなことをされていますか?

アナウンサーをしている時には自分の声を「レインボーボイス」と呼んでいるので、自分の役割を7つに分けてみました。フリーアナウンサー、アンガーマネジメントの講師、絵本セラピーや読み聞かせの講師、社会貢献活動、災害の被災地での朗読、PTAなどの地域の活動、家庭の中では母親としての役割を持っています。

 

アナウンサーとしては、水曜日と木曜日に、レギュラー枠での放送がありますが、それ以外の日は自由です。(コロナ禍以前は)週末にはイベントの司会をしたり、中学生が職場体験の前にマナー学ぶ出前講座も行ったりもしていました。

 

就労支援施設や障害者施設、介護施設などに行って、絵本の読み聞かせをやっています。これはボランティアなので社会貢献活動ですね。

 

Q2.絵本の読み聞かせを始めようと思ったきっかけは?

私自身、読み聞かせをしてもらった記憶はないんですが、子どもに読み聞かせをしてあげたかったので、絵本を買って読み聞かせをしていました。子どもが保育園児のときに、おもちゃ王国の本の部屋で『おこだでませんように』っていう絵本を読んだ時に、涙が出てきたんです。

そのときに、「大人こそ絵本を読むべきだ!」って思って、自分のための絵本探しが始まりました。

 

——絵本って、大人にも響くものなんですね。

 

親は、子どもに何かメッセージを送りたくて絵本を読み聞かせすることが多いです。「いじめってよくないよ」とか「命って大事だよ」とか、言葉にして言うのはハードルが高いけど、絵本ならストレートに伝えてくれるんですよね。

だから子どもにも色んな絵本を知ってほしいんだけど、大人はまた違った楽しみ方をしています。深読みをしたり、自分の人生に重ねたりすることで、より楽しめるんです。

 

Q3.活動の中でどんなことを大切にしていますか?

フリーアナウンサーは会社員ではないので、受ける仕事も自分で選びます。毎回、「誰かの役に立ちたい」という自分の想いに沿ったものであれば仕事を受けるようにしていますね。

誰かの役に立ちたいということを基準に考えて仕事を選びます。

 

 

【脳内グラフ】

脳内グラフとは、妹尾さんの頭の中を垣間見て、その割合を数値化したもの。どんなことを日々考えているのか聞いてみたいと思います。

献立 25%

家の食事、今日は何をしようかな、っていうのを常に考えています。朝、サラダのお弁当を作るときは「何のサラダにしようかな」って考えていて、お昼になったら「晩ご飯は何にしようかな」って。

 

子ども 25%

2人の子どものことを考えています。特に、中学2年生の子に対しては、「宿題は何ページから何ページまでやるんだよ」という声かけや、時間割を一緒にする、などの呼びかけもしています。

 

遊び 25%

今は、岡山県内のいろんなところに行って、そこで食べたものや見てきた風景をSNSにアップして楽しんでいます。これも私の中の楽しみな時間だから、「次はどこに行こうかな、今週の空いた時間で何か美味しいものを食べようかな」みたいなことを考えていますね。

 

仕事 25%

今度の仕事では何を喋ろうかな、と考えている時間ですね。あとは、先の仕事の準備をしなきゃいけないから資料を作ろう、って考えていたり。

仕事は自分がやりたくてやっているから、家族に対しては「仕事させてもらってありがとう」という感謝の気持ちでいっぱいなので、この時間は自分のための時間です。

 

——仕事は自分のための時間なんですね!

 

はい。私の場合は、人に会って喋ったり、見たものを発信したりという、自分の好きなことが仕事になっているので、半分趣味みたいな感じです(笑)

でも、趣味を仕事にするのが必ずしもいいのではなくて、考え方は人それぞれなんですよね。

 

私、人生や人の生き方は自己表現だと思っていて。

例えば、私だったら喋って人と人の間を繋げています。それ以外にも、自分の中に湧いてきたことを文章にしたり、音楽を好きな人が曲を作ったりするように、自分の得意なことを活かして、表現している。それが人生、人の生き方なんじゃないかなと思っています。だからそれができないと苦しかったりするのかもしれません。

 

【人生の履歴】

第1章 内気な小学生

小学生の頃は内気で、姉の陰に隠れているような子でした。家の中で遊んだり漫画を描くのが好きな引っ込み思案なタイプ。

 

第2章 生き方について考えた手術

13歳のときに病気で手術を受けました。胸がすごく腫れていることに気づいて病院に行くと、「大きな腫瘍ができています」と言われて。検査したら良性ではあったんですけど、手術をすることになりました。

2週間ほど、がんセンターに入院しました。年配の女性もたくさんいる中で、中学生で入院した私は珍しかったようで、とてもかわいがってもらったんです。

 

私は手術をして、腫瘍を取ってしまえばあとは回復して退院できたんですけど、皆さんはそのまま闘病生活を続けるということでした。私は良性でラッキーだったけど、おばちゃんたちががんと闘っていることを知った時に、「生きるってめちゃめちゃ大切なことなんだなあ」って思って。

 

この出来事をきっかけに、「やりたいと思ったら絶対その場でやらんと悔い残るわ!」「人生やりたいことはやろう」という考えに変わりました。

 

第3章 不登校になりかけて…

最初の挫折が高校生の時でした。希望の高校に入学したんですけど、ちょっと学校の雰囲気と合わないなと感じてしまって。3日間くらいなんですけど、学校を無断で休んで…ちょっと不登校という感じになりました。

 

学校楽しくない、行きたくないと思ったんですけど、友達が何度か電話をかけてきてくれて「えみちゃんおらんと楽しくないけん、おいで」みたいな感じで連絡してくれて。もう一回ちょっと頑張って行ってみようかなと思って、学校に行って、部活動を変えてみたり。やりたいことを、青春を謳歌しよう!みたいな感じでやったら、すごく楽しい学校生活を送れました。

 

第4章 学校の先生を諦めて、アナウンサーに。

実は大学受験で失敗しまして…

一浪して受けた国立大学、2回目もやっぱり失敗でした。それまでは学校の先生になりたかったんですけど、学校の先生になれないんだったら何になろうかと考えたら、そこでアナウンサーという選択肢ができました。

 

小さい頃、学校の音読で先生から褒められた経験を思い出して、アナウンサーはいいんじゃないかなと。そこからアナウンサーになるための勉強を始めました。就職活動を経て山陽放送から採用いただけたので、岡山のアナウンサーになるべく、生まれ故郷の福岡を飛び出しました。

 

第5章 14歳の自分からの手紙

アナウンサーになるために岡山に来たけど、もう失敗ばかりで。いつも屋上で「私アナウンサーに向いてないな、もう福岡に帰ろう」って思ってた時に、祖母から電話がかかってきました。

「えみちゃんにね、えみちゃんから手紙が来とうばい」って。「なんで”えみちゃん”から”えみちゃん宛て”に手紙が来ると?」って言うんです。

 

中学2年生のときに福岡であった博覧会で、郵便局がブースを出していたんです。その企画が、「10年後のあなたに手紙を送ります」というものでした。なんか楽しそうだねと言って、友達と一緒に何気なく手紙を書いて出していました。でも、10年も経ったら出したことはすっかり忘れていましたね。

祖母からの電話で、「そういえばそんな手紙を書いたなあ」って思い出したんです。

 

手紙を読んだら、「10年後の私、元気ですか?今私は中学2年生です。好きな教科は国語で、好きなアーティストはレベッカで、好きな男の子は〇〇くんで……」って書いてたんですけど、その中に、「将来は学校の先生になりたいです」って書いてて。で、「私、そうだ、ずっと先生になりたかったけど大学受験で失敗して、方向転換して猛勉強してアナウンサーになったんだ!」って思って。

これだけがんばってるんだから、もう少し頑張ってみよう、って10年前の自分に励まされたような感覚になりました。

 

——手紙が届いたの、すごいタイミングですよね。

 

出前講座ではこの話をネタにしています。学校の先生にはなれなかったけど、みんなの前で先生みたいに話すことはできているから、形は違うけど夢は叶ったと思っていますよ。自分の好きなことと関わる方法は一つじゃないから、好きなモノへの関わり方の選択肢を増やすことも大切だと思いました。

 

第5章 被災地の力になりたい

東日本大震災が発生した後、フリーアナウンサーの人たちで集まって「自分たちにできることは何か」を考えたところ、私たちにできることは、『読んで、伝えること』だとなりました。

そこで、集まった6人のアナウンサーたちで「おはなしのWA」というグループをつくり、ボランティア活動として朗読会を開いて、寄付を被災地に送ることを始めました。

 

第6章 絵本読み聞かせで復興支援を

44歳の時に、平成30年7月豪雨災害が発生しました。私たちの地元で起きたこの災害の復興支援を何かできないかということで、絵本の読み聞かせのボランティアをしたり、グループのリーダーが真備のとある2匹の犬の話を聞いてきたので、その実話をもとに『ブラザーズドッグ』という絵本も作りました。絵本の絵は、真備出身のイラストレーターさんにお願いして、クラウドファンディングで資金を集めて、全国に発売したんです。そして、岡山県内の全ての小学校に寄贈しました。

 

今もそういったボランティア活動だったりをしながら、家事や育児、自分の興味のある色んなことに取り組んで日々楽しく過ごしています。

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