自分に合った働き方って、どうやって見つけるんだろう。今回は、フリーランスとしてライターなど幅広くお仕事をしている小溝朱里(こみぞあかり)さんをご紹介します。幼い頃から今まで変わらないことや、大切にしていきたいと気づいたことを軸に、キャリアを選択する小溝さん。進路の決め方がわからないと悩んでいる人は、小溝さんの価値観に重ねて、自分の選択基準を振り返ってみると発見があるかもしれません。
目次
小溝さんのお仕事
――初めに、小溝さんのお仕事を教えていただけますか?
――ライターとしては、どんな記事を執筆しているんですか?
2021年5月に鳥取から岡山へ移住したのですが、移住して数か月後にご縁があって大原美術館に関する記事を書かせていただきました。
記事をつくるときは、大原美術館のように現地に出向いてインタビューをすることもあれば、オンラインで取材することもあります。
あとは仕事とは別で、noteで文章を書いています。自分が考えていることをエッセイにしたり、月ごとの活動報告をしたりしながら発信を続けています。
――大原美術館に関するインタビュー記事、拝見しました!岡山に来てそれほど時間が経たないうちに大原美術館の記事を書くことになったときは、どんなお気持ちでしたか?
大原美術館さんが未来に向けて新しいスローガンを掲げるタイミングと、私が岡山に来て数ヶ月経ったタイミングとがたまたま重なったんですよ。「こんな偶然あるんだ」と思うのと同時に、それまで美術館のような文化施設の取材をした経験がなかったので、「私、理事長の大原あかねさんに取材して大丈夫かな?私でできるかな!?」と、内心ドキドキしていました(笑)。
――組織運営ではチーム作りを大切にしているとおっしゃっていましたが、そのチームは何をしているんですか?
なぜ自炊の継続をサポートしているのかというと、こころもからだも健康な状態で生活するということが、夢や目標を叶えるうえで大事だと思っているからです。運営メンバーにも健やかに自分らしく働いてほしいという気持ちがあり、メンバーと「どういうことが好きなのか」「得意なことや苦手なことは何か」「苦手なことは得意な人いたらお願いできたらいいな」みたいなことを言葉にして、みんなでシェアをします。
その人自身やメンバーをより深く知って、みんなが安心して働ける。そんな環境を作っていきたいですね。
――フリーランスとしていろいろな仕事に携わっていらっしゃるんですね。
小溝さんのこれまで
幼い頃から続けた踊りがアートの入り口
――昔からフリーランスとして働こうと思っていたんですか?
いつからアートが好きなのかと振り返ると、バレエを習っていた幼い頃からかな。ジャズダンスやコンテンポラリーダンスも習ったりして、大学生ぐらいまでずっと踊りをやっていたんですよ。
中高生のときは、踊ることが楽しくて楽しくてしょうがなかった。当時の感覚としては、踊りは趣味でしかなかったので、自分の進路を考えるときに芸術の道という選択肢は全く考えていませんでした。
――そうなんですね!
私の出身地である静岡には、芸術分野を学べる大学としては珍しく、公立大学があります。私はその大学に進学したんですが、進路を決めたときは家族からは反対されていたんですよ。卒業しても、芸術分野の仕事に就くのは狭い門だと思っていたし、多くの芸術大学は入学金が高い印象があるので。
でも、それしかやりたいことがないから「進学に比較的お金がかからない、この公立大学に行くしかない。そうでなければ私の道が断たれる」という勢いで、切羽詰まって勉強していました。
大学生時代に出会ったアート分野の大人たち
ボランティアやインターン生として参加して、劇場やイベントに何度も行きました。印象的だったのは、アートの現場で働いていた大人が、大変ななかでもとても楽しそうに働いていたこと。イキイキとしている大人に出会えたことは、今思うととても良かったと思います。
新卒で企業に就職するもモヤモヤ……
――大学卒業後はフリーランスではなく、就職されたんですか?
けれど、だんだんと「異動先の環境が自分の体質に合っていないかもしれない」という気持ちや、いつ転勤するかわからないことへの不安が、少しずつ積み重なっていました。入社2年めくらいで、このまま同じ会社で働き続けるかを考え始めました。
――そうなんですね。
参加したオンラインスクールがフリーランスになる後押しに
気持ち的にも社会情勢的にも立ち止まったタイミングだったので「キャリアを考え直すきっかけなのでは」と思い、スキルを身に付けられるオンラインスクールに入会しました。そこでフリーランスで働いている人の話も聞くこともできたので、「第二新卒くらいの歳でもフリーランスで働くことって、不可能なことではないんだな」と感じたんです。
そこから、「フリーランスで働けるように頑張ってみよう」と思うようになりました。
――そのオンラインスクールでライティングを学んだそうですが、書く仕事に興味があったんでしょうか?
会社員で接客をしていたときもその気持ちは変わっていなくて、伝え方を工夫することにやりがいを感じていたんです。転職前と今では、仕事内容は変わっているけれど、「人の思いや魅力を伝えたい」という私の軸は変わっていないのだと思います。
SHElikesには、ライタ―コース以外に、ブランディングやマーケティングなどのコースもあって、いろいろ受講していました。「伝える」という意味で、必要な知識になりそうと思ったからです。SHElikesでの経験も、人との出会いも、今に活きています。
岡山へ移住しフリーランスのライターになる
――岡山に来たときにはライターとして活動をスタートされていますよね!岡山に来られた理由と来て良かったと思うことがあれば教えてください。
でも、岡山に来る前に住んでいた鳥取は晴れる日が少なくて、気持ちが沈んでしまったり、気持ちを自分でコントロールするのが難しかったりしました。好きな場所ではあるし、いい思い出もたくさんあるのですが、私にとっては住み続けるのは難しく感じていました。
岡山に来てみて、実際に天気がいい日が多いなと感じます。気候が穏やかなこともあるからか、穏やかな人も多いなと感じていて、環境や関わる人が自分に合っているような気がしています。
あと、岡山は文化的な幅が広い場所で、訪れる場所ごとに楽しいなと思えるところがたくさんあることも、来て良かったと思うことの一つです。倉敷のように歴史あるまちがある一方で、瀬戸内海の島には現代アートがある。文化の幅の広さを感じます。
――フリーランスとして働くなかで、良かったことや嬉しかったことはありますか?
会社員だったときに、「会社の仕事しかできない」と思ってしまって、私は少しストレスを感じていました。楽しく仕事はしていたんですけど、他にやりたいことがあったり、休日にどこかへ遊びに行きたいと思ったりしても、仕事で疲れて元気がなかったり、諦めたりしていたんです。フリーランスになって、そういうことは無くなりましたね。
今は、自分で仕事の量や時間を調節して、そのときのやりたいことに照準を合わせることができています。
――反対に、フリーランスの大変さや課題として感じていることはありますか?
ライターとしての課題はいくつかあると思っていて、例えば「書くこと」や「言葉で伝えること」の価値がわかりづらいということです。「書いて伝える」という技術は、デザインと同じようにクリエイティブですごい技術であるはずなんです。でも、誰もが国語で作文を書いたりメールで文章を打ったりして「書く」経験をしているから、誰にでもできるようにみえる。だから価値が伝わりづらい。それに付随してどうしても価格を安く設定しがちなことも、業界全体の課題だと思います。
――なるほど。
その課題に対して、今すぐ私にできることがあるわけではないんですが、「ライターもクリエイティブな仕事なんだぞ」ということを、私の活動を通して伝えられたらいいなと思っています。
お仕事で大切にしていること
自分が心身ともに健康でいること
――小溝さんがお仕事で大切にされていることは何ですか?
「この人と一緒に仕事をしたいな」と思ってもらえる人で、不機嫌な人はいないと思うんです。また、自分から「これやってみたい」って思うことがあっても、自分が元気で働ける状態を常に保っていないと、飛び込めなかったりする。自分のこころとからだの健康は、強く意識しています。
人とのつながりを大事にすること
自分がやっていることや好きなことを発信していくことで、「一緒にやろうよ」と声をかけてもらえることもあるので、発信も続けています。発信するのは勇気がいるんですけど、すぐに何かに繋がらなくても、時間がたってから別の仕事に繋がったり、こういうことを一緒にやろうよって声かけてもらったり、いろいろ幅が広がったことが何度もあったんです。
とはいえ人脈を広げることはあまり得意ではないので、ご縁を一つひとつ大事にしながら、そのご縁が少しでも長く続くように活動していきたいと思っています。
(編集:金城奈々恵)
ライターの仕事以外では、仲間と一緒に会社を立ち上げようとしています。その会社で、どうしたら運営メンバーが心地よく、安心して楽しく働ける環境を作れるかを考えていて、チーム作りをメインに組織運営をしているんです。
あと、2022年に開催されていた瀬戸内国際芸術祭にも関わらせていただいていました。