自分で決めた道を変えていい?龍門さんが語る図書館司書の仕事と”別の道”

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  • #夢って変えてもいいのかな?

「この道を進んでいこう」と決めたのに、だんだん違和感を感じて苦しくなってきてしまっている。なのに「一度決めたことを変えるなんてダメだ」と、別の道を探せないでいる。そんな苦しい状況が、時に人生には起こり得ます。

 

今回はそんなピンチに効く人生のヒントを、図書館司書・龍門あゆ美(りゅうもんあゆみ)が、本好きの大学生・礒野(いその)くんに教えてくれました!

 

普段表からは見えない司書のお仕事についても、後半たっぷり語ってもらっています。司書が気になっている人も必見です♪

 

 

【龍門さんの生き方に学ぶ”別の道”】

★龍門あゆ美さん

今回のゲスト。岡山県高梁市にある高梁市立図書館に勤める図書館司書さん。高梁市立図書館を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブに21歳で入社。司書歴は現在6年目!

子どもの頃から音楽に夢中だった

 

ーー龍門さんはもともと図書館司書になろうと思っていたんですか?

 

いえ、実は高校を卒業したら音楽の道に進もうと思っていたんです。小さいころから音楽に関わっていて、ピアノは3歳ぐらいから、小学2年生から中学生にかけては合唱団に入っていました。

 

ーーそうだったんですか!

 

合唱を通していろんな人と関わり世界が広がって、人前で歌ったりステージに立ったり、そんな経験からバンド活動も始めるようになりました。自分たちでオリジナル曲を作って、CDを制作して。地元だけじゃなく岡山市内や県外のいろんなライブハウスを回っていました。

 

ライブハウスでは大人の方々とやり取りをしますし、レコーディングではダメ出しもされて「音楽活動って楽しいだけじゃないな」と感じてはいました。でも、ライブのお客さんに「良かったよ」って言ってもらえるとすごく嬉しくて。

 

音楽をやっていなかったら出会えなかった人たちと出会って、いろんな話ができて。そうしてだんだん「自分は将来、音楽の道に進もう」と漠然とですが考えるようになっていきました。

 

音楽で食べていく以外の選択肢もある

 

ーー小さい頃からずっと音楽一本だったんですね。

 

でも、バンド活動に夢中になりすぎて、高校の途中から学校を休みがちになっていってしまいました。それでだんだん教室に居場所がなくなって、学校には行くけど授業は出ずに図書室に通うという生活を送るようになったんです。

 

ーーなぜ図書室だったんですか?

 

図書室以外の場所にいると先生に「授業どうしたん?」とか「なんで来ないの?」って聞かれるんです。けど、図書室では本を読んでさえいれば、特に何も聞かれませんでした。

 

授業に出ていないとき、自分でも「行かなくちゃいけない」ということは分かってはいたんです。それだけに、誰かに話しかけられることはしんどくて。そんなときふらっと立ち寄って本を読んでいられる図書室は、私にとって心の居場所で、「本当に安心して一人になれる場所」になっていました。

 

そんな居場所があったおかげで、なんとかギリギリ単位もとれて卒業ができました。

 

ーー卒業後の進路はどうされたんですか?

 

音楽を仕事にしたかったので、1年ぐらいはずっと音楽活動とアルバイトに明け暮れてがんばることを選びました。

 

でも、そうやって音楽だけやっていると「音楽をしなければならない」という気持ちが膨らんでいって、音楽をすることがどんどんしんどくなってきてしまったんです。

 

「このまま続けていたら音楽を嫌いになる」と、19歳の時には感じるようになっていました。

演奏中の龍門さん

インストバンド・thinkaboutではKeyboard & Glockenspealを担当。

ーーどうやってその状態を乗り越えたんですか?

 

「アルバイトではなくて、別の仕事に就いて音楽活動をしている人もたくさんいるよ。定時で帰って、音楽の時間をしっかりとって。そういうやり方も選択肢の一つとしてあるんじゃないかな」と、バイト先の先輩から教えてもらったんです。

 

確かに音楽を続ける手段として、別の仕事や自分の収入源を持っている人はプロでも結構多いんです。建築家をやってるけど、音楽もプロとして活動している人もいて。

 

だから、好きな音楽を嫌いにならずに、長く続けていくためにはどうするのか。すごく考えた結果、音楽を続けながら別の道に行こうと決断しました。

 

別の道を選んだからこそ見えてきたもの

 

ーー図書館司書を目指すことになったのは、やはり高校時代の経験からなんですか?

 

そうです。別の道を行こうと決めたとき、自分が高校生のとき図書室が居場所になってくれたことを思い出して、「図書館という居場所を作りたい」という気持ちを持つようになりました。そして、「図書館はまったく本に興味が無くても来てもいい場所なんだよ」って伝えられるようになりたくて、司書資格をとったんです。

 

ーー資格を取った後、市営の図書館ではなくカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)に入社したのはなぜですか?

 

私も司書になると言ったら市営の図書館に勤める方法しか考えていませんでした。でも、司書として働きはじめたいと思っていたタイミングでちょうどCCCが運営する高梁市立図書館のオープニングスタッフの募集が出ていて。

 

それで調べたら、CCCは「図書館という居場所をみんなに広げたい」と掲げていたんです。私は自分の居場所だった図書室をみんなに広めたいと考えていたので、すごく共感してすぐに応募しました。それで、今に至ります。

 

ーー運命的な出会い!そんなことが起こるんですね・・・。

 

自分で決めたことを覆してもいい

 

私は「やらなきゃいけない」と自分で決めたことを、いろんなタイミングで「覆していい」と思っています。高校を卒業したころは「音楽で食べていくんだ」って思っていたけれど、いろんな人の意見を聞いて「図書館司書」という違う道に舵をきった。それは、私の中ですごく大きな出来事だったからこそ、そう思うんです。

 

ーーでも、自分で決めたことを変えることって、すごく抵抗がありますよね。

 

もちろん将来を見据えて真剣に決めたことは大事だとは思います。でも「自分で決めたから」と、音楽一本で行く道に固執していたら、今の私はなかったなと思っていて。

 

「決めたことだから変えちゃダメだ」って思うより、「決めたことでも覆していい」「決めた後どう生活するかが大事だ」と思えた方が、日々決断することをあまり怖いことだと思わないようになって、もっと生きやすくなるんじゃないかなって思います。

 

ーーなるほど・・・。

 

私は音楽の道を「諦めた」と思っているわけじゃないんです。今現在バンドに所属してはいませんが、自分で作った曲をネットにアップしたりしていて「良い距離感で」音楽を長く続けていきたいなと思っています。

 

自分自身が「あの決断は正しかったな」ってふり返ることができるように、これからも決めた後、どう生活するかを大事にしていければいいなと思っていますよ。

 

ーー決めたことよりも、その後どう生活するかが大事。決めたことを覆してもいい・・・。ありがとうございます、すごく勉強になりました!

 

龍門さんの演奏写真

好きなものとの向き合い方は、一様じゃない。

 

【龍門さんの図書館司書の仕事】

Q1.図書館司書って実際どんな仕事をしてるの?

 

ーー現在龍門さんがしている司書のお仕事について教えてもらえますか?

 

図書館司書の仕事って見えづらいですよね。きっとみなさん「カウンターに座って『ピッ』とする人」というイメージなんじゃないですか?私もそうでした(笑)。

 

でも、実際には司書にはそれぞれ担当業務があって、利用者の方から見えていないところでたくさん作業をしているんですよ。たとえば私には児童書(子ども向けの本)とレファレンスサービスの担当としての業務があります。

 

ーー担当があるんですか!児童書の担当とは具体的にどんな業務をするんですか?

 

たとえば「選書」、新しく図書館で購入する児童書選びをします。それから購入後は、実際に届いた本を受けいれて、棚にだせる状態にする作業をします。そして、新しい本を棚に入れると本棚に入りきらない古い本がでてきますよね。その中で役目を終えたものを選んで「除籍」します。もちろん、オススメする児童書の「展示」もしますよ。

 

ーーいろんな業務がありますね・・・!

 

そうなんです。ちなみに私が高梁市立図書館に入ったのは移転オープンの時だったので、すごい力仕事だったんですよ。12万冊以上の本を全部箱に詰めて、分類のシールを貼って、首にタオルを巻いて本を積み下ろして、新しい書架に詰め直して・・・。

 

「司書の仕事ってカウンターに座ってするものって思ってたのに、なんでこんな重たいものを持たないといけないの・・・」って、想像していたものとの違いにびっくりしました。

 

ーーもう一つの担当の「レファレンスサービス」は、どんな業務なんですか?

 

レファレンスサービスというのは図書館の利用者さんが調べ物をするときに、司書がお手伝いをするという仕事です。すごく難しいですが、やりがいのある楽しい業務です。

 

もともとそのテーマに詳しい方が依頼に来られることが多いので、こちらも本当に分からないことが多々あります。だから、「どういった分野のものなんですか?」というレベルでお聞きするところからはじめて、なんとかその方が求めている資料や文献を探し出して、「この文献にこういうことが載っていましたよ」ということをお伝えします。

 

ーーさきほど12万冊っておっしゃっていましたよね、図書館にある資料って膨大じゃないですか?

 

そうですね。現在はさらに増えて14万冊にのぼりますから、ものすごく時間がかかります。郷土のこと、建築のこと、本当にさまざまな分野について文献を探して読む必要があるんです。

 

だから、自分の興味のあるもの以外の本を読んでいる時間が圧倒的に長くて。よく友達に「図書館司書って勤務中に本読めるんじゃない?」って言われますが・・・確かに本を読んでいるといえば読んでいるんですけど、ちょっと違いますよね(笑)。

 

ーー僕はレファレンスサービスを使ったことがないんですが、どんな使い方ができるんですか?

 

大学生の方からは「今研究していることをレポートにまとめたいんだけど、ここでつまづいている」とか「この統計が知りたい」という相談をお受けしますよ。調べ物をしていると「一人で一つずつ調べていったら時間が足りない・・・!」と感じることがよくあると思うんです。そんなときは遠慮なく声をかけてください。

 

答えそのものをお伝えすることはできませんが、図書館司書はどうやったら一番早くその知識にたどりつけるかという「調べ方、手順、方法を知っている人」なので、すばやく解決にたどりつくまでの道しるべとなることができます。

 

よくみなさん「作業してもらって申し訳ない」っておっしゃるんですけど、レファレンス業務は図書館司書の業務の1つで、相談してくださるのは私たちとしては嬉しいんです。だから、ぜひ気軽に声をかけて欲しいなって思っています。

 

ーーそうなんですね・・・!ぜひ利用させてもらおうと思います!

 

Q2.図書館司書として働くのは難しい?やりがいは?

 

ーー図書館司書になるのって、大変なんですか?

 

資格を取ればなることはできるんですけど、正直なところ働き口はすごく少ないです。図書館で意識して見てみるとお気づきになると思うんですけど、職員がかなり少ないんです。

 

ーーやっぱり狭き門なんですね・・・。

 

とはいえ、職員の得意分野がそれぞれあるので一口に「司書」といっても、幅は本当に広いですよ。高梁市立図書館でも「イベント運営の上手な司書」「資料に特化した司書」などみんな違っていて、図書館司書のそれぞれの得意分野を持ち寄って一つの図書館ができているんです。

 

それに最近は市が直営している図書館だけじゃなく、民営の図書館や個人の方が運営している私設図書館など、図書館自体のバリエーションも豊かになってきています。

 

図書館のあり方もどんどん変わってきていて「電子書籍をどう扱うか」「イベントをどう行うか」「市民活動を応援するにはどうしたらいいか」と考えることもたくさんあります。だから「図書館司書の役割」も多彩になっていっているので、今後はいろんな「図書館司書」の形が増え、活躍の場が広がっていったらいいなと思っています。

移動図書館と龍門さん

市内を巡回する移動図書館も役割の一つ。

 

ーー図書館司書として働いていて感じるやりがいには、どんなものがありますか?

 

そうですね・・・。図書館は公共施設として開かれていて、いろんな課題を解決できる場所だなって思うんです。子どもたちの居場所になれたり、大人が趣味をはじめるきっかけになれたり、生涯学習として少しずつでも学び続けられる場所になれたり、イベントに参加してみんなで集える場所になれたり。市民の方々の何かの出発点になれる、そんな居場所としての図書館を守っていけることがやりがいだなって思っています。

 

「図書館があったから〇〇を始めたよ」「相談してみたら××ができました!」「夏休みにこの1冊を読んだよ」、そういう言葉をいただいた瞬間はなによりうれしいです。

 

ーー図書館司書、やっぱり素敵な仕事ですね。今日は本当にありがとうございました!

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