美術館のお姉さんとして子どもと関わる・寺元静香さん

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公開日 2022.04.08

この記事では、大原美術館の社会連携課で子どもたちに対してワークショップなどを行っている寺元静香(てらもと しずか)さんの生き方に触れていきます!

寺元さんのお仕事

美術館で子どもたちの学びをつくる

――寺元さんのお仕事について教えてください

 

倉敷市にある大原美術館の社会連携課で働いてまして、子どもたちの体験や学びをつくる企画に携わっています。社会科見学として美術館を訪れる子どもたちと一緒に絵の鑑賞をしたり、大原美術館の歴史や作品に関するレクチャーをしたりしています。

――今の仕事に就こうと思ったきっかけは何ですか?

 

子どもたちとの関わり方を重視したことです。

 

私は、もともと小学校の先生になるために大学に進みました。しかし、小学校の先生になったら先生としてしか子どもたちと関われなくて、それよりも地域の1人の大人として子どもたちと関わりたいと考えました。そんなとき、子どもたちの受け入れを熱心に行っている大原美術館の職員募集があると聞き、就職しました。

 

――子どもたちとの関わり方はイメージ通りでしたか?

 

自分のイメージしていた関わり方ができていると思います。

 

例えば、中学校の職場体験で大原美術館に来てくれた子が、わざわざ高校受験の報告に来てくれたり、職場体験をきっかけに芸術や文化に興味を持つようになって、資格の取得を考えていると言ってくれたりします。

 

学校や家庭、塾の大人とは異なる立場で、地域の大人として子どもたちと関われていることが嬉しいです。

 

 

「当たり前のように美術館がある」をつくる

――印象に残っている企画について教えてください。

 

大原美術館では、子どもたちと一期一会で関わる場合と、継続的に関わる場合の2つのパターンがあります。そのうち、継続的な関わりが印象に残っていますね。

 

例えば、倉敷市内のほとんどの保育園・幼稚園では、5歳児の児童に対して美術館に通う企画があります。その1年間、園児たちは何回も大原美術館に来て、作品の前で絵を描いたり、お話を作ったりします。また、市内の小学校では、美術館の中で学校の先生が授業を行うという企画もあります。

 

こうした企画によって、倉敷の子どもたちは当たり前のように美術館がある人生を歩んでいると感じています。大原美術館と子どもたちが一緒に育っていっている、そんな感覚があります。その子たちがどんな大人になっていくかは、まだまだこれからですが(笑)

 

――仕事の中でのこだわりって何かありますか?

 

子どもたちはもちろん、先生方にももっと美術館を体験してもらいたいと考えています。学校行事等で引率してくださる先生の中には、美術館をよく知らなかったり、行ったことがなかったりする方が多くいらっしゃいます。また、先生方の中に「固まった美術館像」があると感じることもあります。

 

なので、先生ご自身がよりフラットな気持ちで美術館を楽しんでもらえたらいいなと思っています。そのために、どのようなアプローチが私たちにできるかをよく考えています。先生方に向けたワークショップなどができたらいいですね。

 

子どもたちならではの発見がある

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――子どもたちとの関わりの楽しみは何ですか?

 

子どもたちと一緒に発見ができることです。

子どもたちは、常にさまざまなことを経験し、発見し続けています。彼らは今の私が見ることのできない景色を見ていると思います。彼らと一緒にいることで、その景色を見ることができたりするのが楽しいですね。

 

――子どもたちと関わるなかで気をつけていることは何かありますか?

 

子どもたちの発言を否定しないこと、そして、根拠を問うことを大切にしています。

 

大原美術館では、子どもたちと一緒に絵についておしゃべりをするときに絵の説明をしません。

例えば、風景画に何が描いてあるかを聞いたとき「空が描いてある」と言った子がいて、理由を聞くと「雲があるから」と。次に、他の子に聞いたら、同じ部分を指して「岩があるから、海が描いてある」と言ってくれました。じゃあ、「海か空、どっちだろうね」という風に話を進めていきます。

 

子どもたちが絵から受け取ったことはそれぞれ異なるので、それを否定することはしません。しかし、ただ聞くだけでは話が深まらないので、なぜそう思ったか聞くことも大切にしています。

 

まずは美術館に行ってみてほしい

――美術館で体験してほしいことはありますか?

 

実際に美術館に行って、作品に出会うことです。

 

インターネットで絵を見てみても、サイズ感とか質感は分かりません。それに、美術館によって空間の広さや雰囲気も全く異なると思います。なので、ドキドキソワソワしながら、実際に美術館に行ってみる、という体験をしてほしいです。

 

そして、「この絵が好きだな」とか「これはちょっと気持ち悪いな」とか「全然分からなかったけど、シーンとした空気が好きだったな」とか。
美術館に実際に来て、その人たちなりに何か感じて帰ってもらえたらいい、そう思っています。

 

――寺元さんが考える「教育の理想」って何ですか?

 

教育の理想とは異なるかもしれませんが、私たち大人が何かを学んだり、興味を持ったりして生きていくための、余白がある暮らしができたらいいと思います。

 

私は、いい景色に出会うとか、素敵な人に出会うといった体験が自分のものになれば、それを子どもたちにも体験させてあげたくなります。例えば、私には踊りを職業にしている友人がいて、もし自分が中学生の時にそのような人がいると知っていれば、将来の選択が変わったかもしれないと感じています。

 

なので、色んな大人がいること、素敵な暮らしをしている人たちがいることを、子どもたちに伝えたいと思っています。そのために、私たち大人がどんどん体験して、どんどん人に出会っていくための、余裕や余白があったらいいですね。

 

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(編集:森分志学)

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