日本の電力インフラを支え 当たり前の暮らしを守る・松芝エンジニアリング株式会社

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公開日 2025.09.11

スイッチ一つでつく灯り、エアコン、テレビ、道路や鉄道、パソコンにインターネット…電気が通じてこそ、淀みなく営まれる現代社会。電気は私たちの日常生活や社会の機能を支える重要なインフラストラクチャー(基盤設備)です。

 

松芝エンジニアリング株式会社では、国内の電力の安定供給を支えるための監視・制御システムを開発する60数名の社員が「当たり前の暮らし」を支える誇りを胸に、新たなソフト開発に取り組んでいます。 

 

今回は就職活動の進め方について考えている大学生の井野川さんが、会社のこと、就活のことを現役システムエンジニアのお二人に伺ってきました。

松芝エンジニアリングってどんな会社?

 

★二枝敏雅(にえだ としまさ)さん
システム部課長。電気を供給する「自動給電システム開発チーム」と、電力インフラ以外の一般産業向けの「ソフトウエア開発チーム」をマネジメントする。

 

★栢村拓弥(かやむら たくみ)さん
システム部所属。電圧や電流、電力量などの状況を見える化し、画面に表示するソフトウエアを開発。現在は中部電力の電力系統の監視制御システムの開発に取り組む。

 

★井野川さん
岡山県内の大学に在学中の大学生。NPO法人だっぴのインターン生として企業取材に挑戦中。

 

日本の電力インフラを支える安定企業

松芝エンジニアリングはどんなことをする企業ですか?

 

弊社は創業当時から株式会社東芝とともに、大手電力会社の国内送配電システムの開発を行ってきた会社です。

 

ソフトウェアの開発から品質保証、発電所や変電所のシステムのテストや運用、保守などに携わっています。

 

具体的にはどのような仕事になるのでしょうか?

 

東日本大震災が起きたときのことを例に挙げましょう。当時、福島県の原子力発電所が全て止まったことで、東京電力管内の電力が足りなくなってしまいました。大きい電気は、使う電力量と発電量を同じにしなければ大停電につながってしまうのです。

 

そこで電力の需要と供給のバランスをとるために、「何時何分から何時何分まではAエリアを停電」「次の時間になったらAエリアを復旧させてBエリアを停電」というスケジュールを立て、私たちが開発したシステムを使った計画停電を実施しました。

 

当時の計画停電に、松芝さんのシステムが使われていたとは知りませんでした……!

 

そうですよね。弊社は開発したシステムを電力会社に納めることが仕事ですので、一般の方の目に触れることはあまりありませんから。
私達が直接目にすることはないけれど、私達の生活に密接に関わっているお仕事なんですね。ちなみに、「大手電力会社」とおっしゃっていましたが、東京電力以外にはどのような電力会社さんとお仕事をされているのでしょうか?

 

国内には北は北海道から南は九州・沖縄まで10社の大手電力会社があります。この10社と電源開発株式会社(J-POWER)の合わせて11社のシステム開発をしています。

 

すごい規模のお仕事ですね。

 

電力インフラは市民生活に対してだけではなく全産業にとっても大事なインフラですが、弊社のようにITでインフラを支えている企業は、実は少ないのです。1987年の創業当時からものすごくニッチなところを攻めてきたこともあり、この領域で独占的に事業が展開できていることが大きな強みです。

 

お話を伺っていると、お聞きしていると先行き安泰のように思えるのですが、将来の見通しはいかがですか?

 

日本は小さい国なので、電力インフラのシステムは、ほぼ成熟しています。しかし、年々ハードウェアは賢くなり、それに対応する形でシステムの改造が行われています。また、日本の電力需給率は12%であり、9割のエネルギーを諸外国に依存しています。そのため、経済産業省の資源エネルギー庁が主導し、電力需給率の向上や電力融通の増強を目的として、2022年から10年間にわたり、ハードウェアおよび制度変更に伴うソフトウェアに対して数兆円規模の投資を行います。この対応は近年の電力インフラ事業の柱となり、安定した業務量があります。

 

また、一般産業の分野で最先端のIT技術を磨くことで新たな軸を作り、両軸で成長を目指していけないなと思っています。

 

新たな取り組みはされているのですか?

 

2018年ぐらいからソフトウェア開発の幅を広げていこうということで、一般産業向けのソフトウェア開発を新規事業として始めました。

 

今は他社と共同開発に取り組んでいる段階でこれというものはまだまだですが、主力の電気インフラ事業を深掘りして他社との差別化を図りながら、ゆくゆくはオリジナルの製品として、一般産業分野の事業も同レベルまで引き上げ「両利きの経営」を目指していきたいと思っています。

 

コミュニケーションが大事!全社員と役員の直接対話で要望を実務に反映

ところで、ソフトウェアの開発以外に力を入れている取り組みはありますか?

 

毎月1回、人間学についての月刊誌「致知」の記事に対する感想文を書いて、3~4人で美点凝視の視点でグループディスカッションを行っています。

優れたソフトウェア開発においての情報共有、プログラミングのレビュー(修正点を伝えあう)時の円滑な意思疎通のためには、コミュニケーション能力の養成が必要であるためです。

 

実際には、どのような効果が出ているのでしょうか?

 

コミュニケーション技術の向上はもちろん、メンバーの人となりを理解できてそれぞれの意見にも共感する体験を積むことで社内の風通しも良くなっています。仕事のしやすさにもつながっていると思いますよ。

 

ちなみに、社内では「課長!」など役職で呼ぶことはなく、互いに名前で呼び合っています。その理由は、当社では肩書で仕事を行うのではなく、役割で仕事を行うと言う考えに基づいているためです。

 

フラットで話しかけやすそうですね。

 

それから「労使対話会」という会を年1回行っています。これは、全社員と経営層が対面で意見や要望を交換するもので、ここで提案されたことは可能なものから実行していくようにしています。

 

労使対話会から社内改革につながったことはありますか?

 

勤怠管理の方法や、消化できずに残ってしまう有給休暇を換算して図書カードを支給するなどがこの対話会から実現しました。少しずつですが働きやすい環境づくりにつながっていると思います。

 

社員が60数名の会社ですので社員の思いがトップまで伝わりやすく、仕事の上でも自分の意思が反映されやすい会社だと思います。これも我が社の強みの一つだと思っています。

 

皆さんのモチベーションにもつながりますね。

 

栢村さんにとって松芝エンジニアリングってどんな会社?

0.01%の誤差が命取り!高い精度が求められる一面も

松芝エンジニアリングに入社しようと思ったきっかけは何だったのですか?

 

もともと大学では情報工学を学んでいて、就活を始めた頃は「学んだことが生かせればいいかな」という程度で、業界をやや広めに就職先を検討していました。そのため、当初はインフラにそこまで興味があったわけではなかったのですが、「電力インフラを主軸にしている」という松芝の他社との違いに徐々に惹かれ、入社を決めました。

 

就活するうちに、会社毎の違いが分かってきて興味が出てくるということですね……!

 

もう一つ、私にとって決め手になったのは「居住地」です。システムエンジニアの仕事は「技術派遣」として別の会社に派遣されて働く場合もあります。そのような働き方の場合、派遣される会社が変わるごとに居住地を変える必要が出てくる可能性があります。

 

しかし、松芝エンジニアリングは勤務地が東京か岡山のどちらかの二択なので、「居住地を一つに定めて勤務し続けたい」と考える私にとっては、その点が大きな魅力でした。

 

なるほど。大学では情報工学を学んでいたとのことでしたが、入社後に学生時代の学びは役立ちましたか?

 

そうですね。プログラミングの経験があるので仕事に入っていきやすかったのですが、大学と現場では求められるものが違い、慣れるまで苦労も多々ありました。

 

どのような違いがあったのでしょうか。

 

大学生の頃は、どんな書き方でも最終的にその答えがまとまればいいという意識でプログラミングを行っていました。でも、業務はチームでの作業で、他の人が見ても分かりやすいコードに整え、クオリティも求められるのでそうはいきません。先輩からのレビューの度に修正箇所が多数発生するので、それまで慣れていたコードの書き方を変えるのには、少し苦労しました。
どんなところにやりがいを感じていますか?

 

私は「画面開発」を担当しているのですが、自分が何をどのように改善したのか、それがシステムの中でうまく制御できているのか、画面上で確認できることが嬉しいですね。自分でシステム設計した内容で実際に開発を行い、システム設計通りに動作するところを目で見て確認できたときにやりがいを感じます。

 

目に見える形で仕事の成功が確認できるというわけですね。仕事の難しさ、大変さを感じるのはどんなところですか?

 

一番大変だなと思ったのはデータがわずか0.01の誤差であっても、システムの命取りになることです。そのため、新しくデータを追加した場合のデータ確認の試験はどうしても厳しくなります。

 

苦労はしますが試験での成功は大きなやりがいになりますし、会社に貢献できているという実感にもつながります。

 

 

若手社員でも「尋ねやすく言いやすい」

入社して2年ということですが、松芝エンジニアリングに入って良かったと思うのはどんなことですか?

 

私はわからないことは自分で考えて調べてみて、段階ごとにある程度区切りをつけて先輩や上司に聞くようにしています。わからないことは聞けばすぐに回答してもらえる点はとてもありがたいと思っています。

 

気軽に聞ける環境が整っているのですね。

 

先輩方には何でも尋ねやすいですし、「自分はこう思います」とはっきり言える環境でもあるので、それもありがたいなと感じています。

 

 

栢村さんは結構意見を言うタイプなのですか?

 

自分が開発を担当した場合、どのような意図で開発を行ったかを一番理解しているのは自分自身です。だからレビューしていただく場合には、相手がどなたであっても作った意図を自分の言葉で伝えるべきだと考えています。責任感というか、一歩踏み込んで「言うべきことは言う」という意識が自分の中にはありますね。

 

なるほど!仕事の中で磨かれた専門性はありますか?

 

大学時代にもC言語とPythonというプログラミング言語には触れていましたが、入社後は研修でC言語をさらに深掘りして学び、仕事を通じてJavaというプログラミング言語を習得しました。プログラミング言語を磨くということは大事だと感じています。

 

今後どんな仕事をやっていきたいと思っていますか?

 

今は中部電力さんの仕事をメインに担当しているのですが、それ以外の電力会社さんの仕事にも携わってみたいです。

 

「これだけは譲れない」ぶれない軸を大切に

これから就活に取り組む学生にアドバイスをいただけますか?

 

自分も高校や大学の時には「将来自分は何をやっているのかな」「自分はちゃんと社会人としてやっていけるのかな」と不安もあったんですけど、今は結構苦もなくやらせてもらえています。あまり不安になる必要はなかったのかもしれません。

 

私の場合は「SE」という職種と居住地を軸に就活をしましたが、自分の中で「これだけは譲れない」ことをある程度決めて就活に臨まれるといいかと思います。

 

私たちエンジニアの仕事は「なぜ」を3回繰返し、自問自答し、より深く考え、世の中の人々、動植物、全ての事に対して”良い事”は何だろうと考える仕事です。

 

これから就職を考える皆さんには、自分のなりたい将来像をイメージして、就活の軸を持ち、そして何でもいいので熱中できることを継続して取り組んでもらいたいと思います。

 

お二人とも、お忙しいところ本当にありがとうございました。

 

(編集:森分 志学/執筆:井ノ上 美恵子)

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