教育界には、教育のノーベル賞とも呼ばれる『グローバルティーチャー賞』があるとご存じですか?実はこの権威ある賞のトップ50に、私たちの身近にいる大人が選ばれていたんです。それが今回のゲスト、澤 茉莉(さわ まり)さんです!
「中2から小学校の先生を目指していた」という澤さん。いったいどのような生き方をされてきたのでしょうか。同じく小学校教員を目指すしおさんが直撃してきました!
目次
澤さんのお仕事
★澤 茉莉(さわ まり)さん
外国人スタッフと保護者をつなぐ
私は英語統括責任者として、英語チームの外国人スタッフと保護者の方をうまくつなげるパイプ役をしています。
スタッフの皆さんは素晴らしい才能と経験を持っていて、子ども達のために10年後20年後のグローバルな世界を見通した教育をしてくれています。しかし、保護者の方の多くは日本人の方ですし、幼児の今に日々向き合っている方々です。スタッフとの間には自然と価値観の違いが生じてきます。
そうした両者の間に入り面談で通訳を行うなどしてスタッフの持っている才能や経験、考えを引き出して、うまく家庭に伝わっていくようにするのが私の仕事です。
初めての経験となるご家族にとって、子育ては不安やわからないことだらけです。その中で「こんな子育てをしたい」というご家族の思いを話していただきながら、「こんな価値観があるんだよ」というスタッフの広い視野からの話もお伝えしていく。共に学んでいく関係を作っていくための橋渡しは大切な役割なんです。
もちろん園児の英語教育にも直接携わりますし、スタッフの採用に関わる仕事もしていますよ。
その上で、見ているのが教育への強い情熱を持っているかどうかです。パッションの有無は、レッスンを通じてすぐ子ども達に伝わります。子ども達を愛し、未来を作る子ども達への教育とその将来を信じている人であること。それをとても大事に考えています。
これは、ハーバード大学の教育大学院で学長が語ってくれた言葉です。教育や保育は華やかには見えない職業かもしれないけど、とても大きな役割を果たしています。しおさんもぜひそこに誇りを持ってくださいね。
最先端を学び続けて実践する
また、私の場合は社会人になってからも大学院に通っていました。コロナ禍で、日本にいながらにしてハーバード大学の教育大学院のオンライン授業を受ける環境が整っていたんです。
日本では大学院は大学卒業後に行く場所というイメージがありますが、海外ではそうではありません。30代、40代、50代になっても自分をブラッシュアップしに行ける場所として認知されていて、仕事をしながら通えるコースもいっぱいあるんですよ。
学び続ける澤さんのこれまで
中2から小学校の先生を目指す
洋服では補えない容姿の違いがあるのが嫌で、親が日本人なのも嫌で、家で和食が出るのも嫌で。お弁当なんて絶対学校に持っていきたくなかったです(笑)。
学びたいことと学校名の間で揺れる
高校時代は香港に引っ越してインターナショナルスクールに通うことになったのですが、それがものすごくレベルの高い学校で。周囲の友達はハーバード大、プリンストン大、イェール大といった超名門校を目指していて、学校自体もそういう名門校への進学を推していました。
でも、学びたかった分野の教育を専門的に、高レベルで学べる大学を目指そうと考えたときに第一候補に挙がってきたのは、知名度が高いとはいえないアメリカの田舎の大学でした。
大学のネームバリューか、本当に学びたいことが学べる場所か。悩んだ末に行き着いたのは「名門校であれば良いというわけじゃない。何を学べるかは大学で変わるんだから、今の私の学びたいことに合った大学を選ぼう」という結論でした。
アメリカの大学は全員が寮生活をするので、ルームメイトとの間で価値観や生活習慣の違いに苛立つことも多く、「私ってすごく惨めで嫌なやつだな」って悩むこともありましたけどね(笑)。
これだけ学んだら何でもできると思ってた
「もっと自分にはポテンシャルがあると思ったのに…」
「なんで大学院まで出て私はトイレトレーニングしてるの…?」
「アースエイトは私がいるべき場所じゃないんじゃない…?」
うまく行かないと人のせいにしたくなって、そんな悩みを抱えながらひたすら仕事に打ち込む時期でした。
現場と大学院で気づいた幼児教育の意義
それで、もう一度大学院に入って幼児教育について勉強をはじめました。そうしたらどの論文を読んでも「幼児教育が人間の根幹を作るもの。幼児教育者よ、立ち上がりなさい!」って書いてあって(笑)。
「ああ、私はそんな大切な仕事をしているんだな」と思えるようになってからは、迷いはなくなりました。
そして、その人間の成長の根幹となる幼児教育がいかに大切か腑に落ちることで、向き合う心構えができた。そういう感じです。
成長し続けたい人へのメッセージ
教育学や心理学を研究しているのは研究室にいる学者さんです。でも、彼らが発表する最先端の研究成果はあまりにも現場に知られていません。教育の研究と現場にある大きな狭間、それが教育界でずっと叫ばれている課題です。この課題を解決するため、両者をつなぐ役割として期待されているのが、現場で実践しながら大学院で学ぶ「Education of Doctor(Ed.D)」です。数年後にはこのEd.D課程を目指したいと考えています。
中学・高校・大学というのはすごく悩む時期だし、「ある進路を選んだら、この仕事に就かないといけないのかな」と視野を一人で狭めてしまいがちな時期でもあると思います。
でも、大丈夫です。
いろんな考え方やいろんな可能性が世界には広がっています。
私たちは大人になってからも成長し続けるものだから、完成形はないんです。いくつになっても安心して自分の可能性を模索し続けていいんですよ。
(編集:北原泰幸)