英国文化を伝える地域おこし協力隊員・上村統美さん

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  • #資格を活かした仕事をするべきなのか
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公開日 2022.08.20

進学や就職を考えて資格を取る。きっと多くの人がしていますよね。でも、本当にしたいことと資格が直接結びつかないこともよくあること。今回のインタビュアーの下園さんも、英検2級を持っているだけに悩んでいます。

 

「直接資格を活かせる仕事に就いた方がいいのかな?」

 

その答えのヒントを得るために、英語を活かして仕事をしている上村統美(うえむらもとみ)さんに話を聞きに行きました。

 

上村さんのお仕事

★上村統美さん

今回のゲスト。長年イギリスに住んでいて、現在は赤磐市の熊山英国庭園で活動中。児童英会話講師も務める。趣味は遠出と料理、森林浴。

熊山英国庭園のイベント運営や情報発信

ーー熊山英国庭園ではどんな仕事をしていますか?

 

岡山県赤磐市の地域おこし協力隊として熊山英国庭園で活動しています。熊山英国庭園のことはご存じですか?

 

ーー知ってはいるんですが、行ったことはないんです。

 

そうですよね。下園さんの様な学生の方々は少なく、来園者の年齢は比較的高めです。退職後の楽しみでご自宅のお庭を手入れしている方々が、庭の参考に見にいらっしゃることが多いようです。

 

小学校跡地にポツンとあらわれた英国式のお庭です。「英国庭園」という施設名に負けないイベントや情報発信をしています。約13年間過ごしたイギリスでの経験を活かして多くの年代に来てもらいたいと思っています。

 

ーーどんなことを新しく取り入れたんですか?

 

子ども達や20代〜40代の人達が楽しめるよう、ハロウィンの仮装やイースターといった異文化を楽しめるイベントをはじめました。また、アロマセラピー講師の方々と一緒にアロマワークショップやイベントを開催しています。

ハロウィンイベントで仮装中♪

ーー地域おこし協力隊の仕事で英語は使いますか?

 

熊山英国庭園の直接の業務では英語はまったく使いません。でも、イギリスのものを取り入れる時に英語の記事を読んだり、現地の知り合いから情報を得るために英語で連絡をとったりという場面では使っています。

 

児童英会話の講師も

ーー児童英会話の講師はどんな仕事ですか?

 

私がしているのは英語塾ですから、会話を楽しむことを大事にして英語を教えています。2歳半から高校生までの子ども達がいますが、小さい頃はなんでも吸収したがるので教える方も学ぶ方もすごく楽しいです。

 

一方で、小学5、6年生以降の勉強や英語が嫌いになってしまっている子達の対応は大変でもあります。

子ども達からの手紙は大切にしています。

ーー英語の勉強って大変ですよね。私も長時間机に向かっているのがとても苦手なんです。

 

集中力を上げたいときはオレンジの香りのアロマがオススメですよ。研究で実証もされていて、私も教室の英会話教室の加湿器で芳香浴を楽しんでみました。その日はやっぱりみんな集中していました。ぜひ試してみてください。

 

上村さんのこれまで

第1章 海外に目が向くようになった転機

ーー上村さんはどんなお子さんでしたか?

 

普通の子でした。特に成績優秀とかでもなかったんですけど、積極的ではあったと思います。周りの子達とよく遊んで、やりたいことをして過ごしていた気がします。

 

ーー海外との接点はありましたか?

 

海外のドラマが好きで、アメリカのコメディドラマ『フルハウス』を塾に行く前に観ていました。父が海外出張に行くことがあり、父経由で同僚の娘さんが海外留学をしたという話を聞いたりして「そういう世界もあるんだな」とは思っていました。

 

ーー海外に強く興味を持つようになったきっかけはなんですか?

 

中学2年生のとき、留学経験のある新卒の英語の先生に出会ったことですかね。とても綺麗な先生で、海外生活の話をたくさん聞かせてくれました。例えば「授業中に飲み物を飲んでもよかったんだよ」とか。そんな世界があるのかと考えの幅が広がりました。ここが人生の転機だったのかな。

 

高校生の頃から英会話教室にも通い始めて。学校の授業とはまた違う「ディスカッション」などを通して、違う世界があることを知りました。それで、17歳のときにカナダにホームステイに行くことにします。

 

ーーカナダで印象に残ったことは何ですか?

 

「車が大きい」「道が広い」「食事の量が多い」かな(笑)。すごく日本との差を感じました。

 

このときに印象的だったのは「意外に英語は通じるものなんだな」という実感です。学校の成績も英語だけは良く、自分でも試したいと思っていたので大きな自信になりました。

 

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第2章 12年間の英国暮らしと英国文化

ーー12年間暮らすことになるイギリスとはいつ出会ったんですか?

 

20歳で日本の通関業者に就職するんですが、その直前にイギリスに留学していた友達から「おいでよ」と誘われて遊びにいったのが出会いですね。すごく魅力的で、また「いつか行きたい」と思いました。

 

ただ、そのときはイギリスで暮らしたいとまでは思っていなくて。日本の通関業者での仕事を始めて忙しくなり、イギリスのことは忘れていたんです。でも、数年仕事するうちに何か「窮屈さ」のようなものを感じるようになってきてしまって。そんな頃、たまたまワーキングホリデーという制度があることを耳にしました。

 

留学は勉強をしなければなりませんが、ワーキングホリデーであれば仕事をするのも旅行をするのも自由。もともと海外旅行のためにお金を貯めていたので「このお金で行くだけ行ってみよう」と思い立ちました。

 

ーーワーキングホリデー先にイギリスを選んだのは、やはりお友達のところに行った経験があったからですか?

 

それももちろんありました。それに、当時私は紅茶やアロマテラピーに興味があったことや、英語を学ぶならイギリス英語を学びたいと思ったことも理由です。

 

ーー日本で英語を学ぶのではなく、海外で生活する中で学ぼうと思ったのはなぜですか?

 

日本で生活して学ぶときだけ英語に触れるというのではなく、暮らしの中で言葉が全て英語になるという環境にしたかったんです。ただ、そこに対して特に綿密なねらいや計画があった訳ではありません。

 

きっとみんな若いときには「とりあえず意欲だけ、行き当たりばったりで行動する」という時期があるのではないでしょうか(笑)。

 

ーーカナダと比べてイギリスの良さはどんなところにあると感じましたか?

 

歴史や文化の深さ、イギリス英語独特の言い回しが楽しめるというのが特に惹かれたところですね。1年間ワーキングホリデーに行ったあと、またその1年後に再びイギリスに戻り、12年間過ごしたのもそうした点に興味があったからでした。

 

ーーイギリスの文化で一番惹かれた点はどこにありますか?

 

イギリスは小さい頃からアートにとても身近に触れられるんですよ。それがすごく良い文化だなと思っています。博物館や美術館が無料で気軽に入れるんです。日本だと公開されていない収蔵品があったりもするし、公開時には何時間も並ばないと見られないということもありますが、さすが芸術史に長けているイギリスが誇るミュージアムの数々だと思います。

 

ガーデニングも自分だけが楽しむものではなくて、会話の始まりになるものなんです。

「今日天気いいわね」とか、「こんな花が咲いてるのね」と会話を始めるツールでもあって。そうした余裕が素敵だなと思いました。

 

私が住んでいたイングランドのコッツォルズは、産業革命から離れて美術やアートが発達したところでもあり、心の豊かさがすごく育つような感覚がありました。

 

第3章 英国で得た「何歳だってできる」

ーー帰国後はイギリスでの経験を活かして児童英会話講師とアロマ講師を始めたんですよね。

 

はい、くわえて心理学に興味があったので通信制の放送大学にも入学しました。日本の放送大学は1969年に設立されたイギリスの「オープンユニバーシティ」という通信制の公立大学が元になっているんだそうです。

 

児童英会話には発達心理学がとても役立ちますし、アロマテラピーにも興味があったので。それに60過ぎてからカウンセラーをはじめてみたいなとも思っているので、学びはじめました。

 

ーーそれもやはりイギリスでの生活の影響があるのですか?

 

そうですね。イギリスに行って感じたのが「私はこんな年だから・・・」なんて言って何かに尻込みしている人はそうそういないんですよ。おばあちゃんでも赤い口紅をつけて、赤いコート着ていて。同じようにイギリス人は年齢を理由に学びを止めることはなかったんです。そういう点がすごくいいなと思いました。

 

以来、日本に戻ってからも何を言われようが「何歳だってできる」と行動しています。地域おこし協力隊も20代の人が多いと思うんですけど私は30代後半でした。でも「仕事としてチャンスがあるんだったら応募してみよう」と応募して、今に至っています。

赤磐市で地域おこし協力隊に任命されました。

 

第4章 人生において、点はいつかつながる

ーー私は英語が好きというわけではないんですが、大学受験に役立ったらと英検2級を取りました。それで親は「英語を活かせる仕事をしてみたら?」とアドバイスもしてくれます。でも、私には目指している仕事もあって。上村さんはどう思いますか?

 

「本当は目指している仕事があるけど、英検を持っているからそちらの方を考えるべき」という考え方、私もすごく分かります。

 

でも、せっかくやりたいことがあるなら、そちらを選んでいいんじゃないかなと私は思います。

もしかすると何年後かにその仕事で海外の人と接することがあったり、考えてもないところで役に立つことがあるかもしれません。

 

ーー英語に直接関わる仕事でなくても、英検の資格は無駄にならないでしょうか?

 

数年後くらいに好きなことに繋がってくるとか、そういうことがあるとは思うので決して無駄にはならないと思います。

 

私は英語を中学校のときに学びはじめましたが、まさかこんな仕事をするようになるとは思い描いていませんでした。先ほども言いましたが地域おこし協力隊の業務では直接英語を使いませんが、英語が間接的に役立っています。「Connecting the dots」という言葉があります。人生、いろんなことがつながっていきますから。

 

ーー「Connectiong the dots(つながる点)」ですか。

 

有名なApple社の創業者・スティーブジョブズの言葉です。今目の前にある色んなこと、それが結局未来にはつながっていくんです。私は今そうやって英語やアロマ、熊山英国庭園といろんなものがつながってきて、楽しめていますよ。

 

ーーちなみに、上村さんの人生に何か名前をつけるとしたら何がありますか?

 

なんだろう、「explore(探索)」かな。人生は1回きりしかないので、せっかくだから楽しんで、やりたいことをしていきたいなと思っています。自由には責任も伴うのでそれも取りますが、自分自身が楽しく生きて、周りの人も楽しんで生きてもらえるようなお手伝いをしていきたいですね。

ーーありがとうございます!これから上村さんの生き方のエッセンスを取り入れていこうと思います。

 

(編集:北原泰幸)

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