子どものやりたいを表現する場をつくる・井辻美緒さん

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公開日 2022.03.04

この記事では、矢掛町で「子どもたちのやりたいを実現する」活動をされている井辻美緒(いつじみお)さんの生き方に触れていきます!

 

井辻さんのお仕事

——まず、井辻さんのお仕事について教えていただけますか?

 

まず、女性の生理用布ナプキン作って販売して,その売り上げの一部で小学校の5、6年生にナプキンを配るっていう活動を10年やってきました。

 

活動していると、正解のようなものがあることに気が付きました。例えば、参加者数や規模が大きい方が正解、みたいな。でも、それよりも自分が楽しいかどうかが大事だということにも気が付いきました。それは、その時に関わっていた子どもたちも同じような感じだったんです。

 

——子どもたちもですか。

 

学校から言われる正解や社会で求められる正解があって、子どもたちがいつもお利口さんな答えを出してくるんですよね。
そこから「もっと自分たちがやりたいと思うことを素直に表現する場を子どもたちにも作ってあげれたらいいよね」という思いにつながっていって、2014年に「やかげ小中高子ども連合」を立ち上げました。
小中高の子どもたちが集まって、彼らが主体になって、自分軸でいろんな活動を地域の中で生み出していくのをサポートしています。
2021年度までは、矢掛高校の「コーディネーター」という立場でお仕事をしたりもしていました。

 

 

井辻さんのこれまで

第1章 しっかり者の小中学生時代

小学校の時から、周りにしっかりしてるっていうイメージを持たれていました。あと、身長が小学校の時点で159cmくらいあったので、周りから岡山弁で「からがおおけぇ」ってよく言われていました。

 

そういうイメージを与えられて、その通りに頑張って生きていた感じで、期待に応えようと思ってました。
中学校に入ってバスケットボールにはまりました。めちゃくちゃ本気でやっていたら、同じチームの仲間と上手くいかなくて。

 

そんなことがあって、より「人の気持ちとかをもっと考えられるようにならないといけないな」と、自分を抑える人生が深まった感じですね。

 

第2章 何のために勉強しているのか分からなくなった高校・大学時代

高校に入ってからは、「何のために勉強してるんだろう」って思うようになりました。当時の担任の先生に「私は何のためにこれを勉強してるんですか」って聞いたんですけど、先生はおそらくいい意味で言ってくれたと思いますが「大学に入るためだから、今は黙ってとにかくこなせ」という返答でした。

 

でも、結局答えがわからないまま全然勉強をしなくなってしまいました。大学入ってからは、今の旦那さんと2年生の時に出会いました。大学の思い出はほぼそれぐらいです。(笑)

 

第3章 就職、そして結婚

就職は、教育に興味がありました。それと「自分を育てたい」と考え、教育系教材の会社の営業をやりました。でも、そこでも一生懸命いい人を演じてましたね。

 

23歳で結婚して井原市に住むことになりました。井原市からでは職場に通えない距離だったので退職して。そこからは、いいお嫁さんとかいいお母さんを目指しました。

 

第4章 自分軸の生き方へ

3人子どもがいるんですけど、1番下の子を出産した時に、ちょっと不思議な体験をしました。産まれたその日に、目が開けられないくらいの光が出てきて「あなたはこれから変わるのです」って言われて(笑)

 

その後色んなことがあって、自分がどう思っているかを大切にする人生に考え方が変わっていって、他人軸から自分軸に180度人間が変わりました。そこから今に至るまで、「地域と教育」の領域で様々なチャレンジをしました。

2020年からは仕事の形態を変えて、一旦、教育関連の仕事をセーブをしています。田んぼや薪作りをしたり、自然と一緒にお仕事をしながら、自分について色んなことを発見している日々です。「私ってこういうことを心地いいって感じる人だったんだな」とか、「本当はすごい気を遣ってたんだな」とか思いますね。

 

 

井辻さんのこれから

自分を大切にするということ

——自分を抑える人生から自分を大切にする人生へ変わられたんですね。

 

人生の前半は、人のことばかり考えて自分を見ることができなかったので。今は真逆なんですけど、そっちの方が実は大変なんだなと。自分を偽っている方が楽に生きられる面もあると思います。

 

——その生き方は、井辻さんの活動にどのような影響を与えていますか?

 

小学生にも「自分が楽しくなくなったらもうやめていいよ」っていうのをよく伝えています。

 

私たちの活動は、「始めたからには最後までやりなさい」ではなくて、とにかく「『楽しい』を大事にしなさいよ」っていうのを軸に置いています。それで、大人は手も足も口も出さずに見守るっていうスタンスで。

 

成果を出す・最後までやりきることが目的なのではなくて、その過程の中で感じることを大切にしてほしいと思っています。「これが楽しくてやってる」「こう表現していきたい」「この人の個性と一緒にやるとこんなのできたね」とか。

 

——その過程の中で感じること、ですか。

 

そのためには、強がってるような自分にも出会うんだけど、できるだけ弱い自分をさらけ出すようにすれば、人の持っている才能に甘えられるようになると思います。

 

「私ダメだから変わらなきゃ」とか、「成長したい」という思いはすごくいいことで、私も自分の人生前半を否定しているつもりは全くなくて、頑張ったなと思います。でもその陰には「怖いからがんばろう」とか、「こんな弱い私を知られたくないから頑張ろう」っていう弱い自分の存在に気づくことが大事だったんだなと、今になって思います。

 

生きることは「自己探究」 

——井辻さんにとって、今の自分を表す言葉を教えてください。

 

自己探究ですかね。自分を隠す人生だったから、今自分を一生懸命探究している。隠すのも、見つけるのも、どっちも自己探究だと思います。

 

——自己探究、その心は?

 

「何で今私そんなことを思ったんだろう」って頭の声と心の声全然違うことに気付いたり、頭も心も無理してると体が動かなくなったりとか。

活動で関わっている子どもたちも、自分がやりたいと思うことをするには、「やりたくないことをやめないといけない」という大きな作業があるんですよね。そして、そっちの方が怖かったりする。

 

「自分らしく生きる」ってよく言いますけど、やりたくないことをやめる勇気を身につけていくことの方が大変です。知れば知るほど自分を認めるのが怖いし、私ってこんなに小さい人間なんだと思ってしまいます。「そんなものなんだな」と思って弱い自分と向き合うことを実践している感覚ですね。

 

——「やりたくないことをやめる」勇気、すごく大切だと思います。

 

勇気と、あと辞めなきゃなって思いながらもう辞めれない弱い自分も大事にしてあげる必要があると最近よく分かってきたかな。

 

「変わらなきゃ」と思っているのに、でも「変われない・変わりたくない」って思う弱い自分こそ本当に認めてあげないといけなくて。その弱さををまず受け入れてあげること。

 

——それは、大変な作業ですね。

 

そこが一番嫌なのも分かるんですけど、受け入れてあげるとすごくほっとするというか、力が抜ける感覚になるんですよね。その上で、もう一回今やっていることを見直してみると、なんか考え方選択がすごく変わってきます。

 

「やっぱりここは私だけでは難しいから、誰かに頼ってみようかな」とか、「弱い自分も出してみようかな」、「やっぱり私これ苦手なんでやめてもいいですか」って相談してみようという一歩につながったりします。

 

(編集:森分志学)

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