AIを岡山で開発することで地方創生も考えていた!

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公開日 2026.07.31

簡単な依頼文を打ち込むだけで、文章や画像、旅行のプランまで出力してくれるAIは、今や私たちの生活になくてはならない存在です。

 

その一方で「AIに仕事を奪われるのでは?」「AIの言うことって全部正しいの?」という疑問や不安を感じている方もいるかもしれません。

 

今回は、岡山を拠点に最先端のAI開発を行う株式会社アイティーシーの東村さんに、AI開発の仕事や適切にAIを活用するコツを伺いました。

 

★東村佳穂さん
入社4年目、ソリューション事業部所属。現在は画像解析を専門にしている。

 

★守屋さん
岡山県立大学人間情報工学科4年生。IT系企業に就職予定。

 

AI開発ってどんなことをしているの?

ソリューション事業部でAIの開発を行う

まずはアイティーシーさんについて教えていただけますか?

 

アイティーシーには「ソリューション事業部」と「Data Analytics事業部」という2つの事業部があります。ソリューション事業部は、お客様の業務を支えるシステム開発や運用を担当します。

 

Data Analytics事業部ではAIアルゴリズムの開発とデータ分析を行っています。特に、自然言語処理と数値分析モデルの構築に強みがあり、chatGPTを利用したソリューションの提供や利活用のための調査・研究検証も実施しています。

 

Data Analytics事業部での研究開発がソリューション事業部にも活かされていて、システム開発の現場力とAI・データ活用の先進技術を組み合わせ、人とAIが共生する社会の実現を目指しています。

 

実は、私はまだ大学でAIについて詳しく学んでいなくて……。ChatGPTやGeminiなどの身近なツールとしてのAIしか知らないので、「AIを作る開発」がうまくイメージできないでいます。

 

当社は、個別の企業様の目的に合わせたオーダーメイドなモデルの開発に注力しています。開発過程でChatGPTをはじめとした生成AIを補助的に活用することもあります。

 

企業からは、どのような流れで依頼が来るのですか?

 

大まかには、まずお客様から「こういう分析をしたい」という目的と、そのために使う大量のデータについてご相談をいただきます。そこからデータを受け取り、分析しやすい形に整える「前処理」を行います。そのうえで、どのような機械学習モデルを使うのがよいかを検討し、実際にシステムとして実装します。さらに、モデルにデータを学習させたあと、結果を見ながら精度を高めていく、という流れです。

 

機械学習モデルの実装時に使用するプログラミング言語は、Python*が多いです。こうした目的に対する機械学習モデルの実装こそ、当社の強みだと考えています。

 

*Python・・・Web開発や機械学習モデルなどで使われるプログラミング言語のひとつ。

 

アイティーシーさん作成資料より

AIの機械学習モデルの具体例

機械学習モデルって何でしょうか?具体例を教えてください。

 

私が以前携わったプロジェクトで、「船の汚れを検知する」画像分析の機械学習モデルを構築するものがありました。船体の写真を読み込むと、「船のこの部分に汚れがついている」とAIが検知します。

 

機械学習モデルの優秀さは、モデルを作る人間の腕前に左右される部分もあるのでしょうか?

 

おっしゃる通りです。例えば画像分析ひとつとっても膨大な種類があり、どのデータをどう学習させるかによって結果が大きく変わります。そのため、精度の高いモデルを構築できるかどうかはエンジニアの技量によるところも大きいと思います。

 

人間の技量も大切なのですね!アイティーシーさんでは、質の高いモデルをつくるためにどのような取り組みをされていますか?

 

当社には非常に経験豊富なベテランの社員がいて、その方のキャッチアップ能力がとにかく高いです。私もベテランの方にサポートしてもらいながら、国内外の論文やプレスリリースなどをチェックして、会社全体で「新しい技術の情報共有」に取り組んでいます。

岡山を拠点にしたニアショア開発と若手育成が強み

ニアショア開発で岡山から高品質なAIモデルの提供を実現

AI開発と聞くと、東京や大阪などの都市部に本社がある企業が多い印象です。アイティーシーさんが岡山に本社を置くメリットは何ですか?

 

岡山の現状として、東京に比べると開発コストが下がる傾向にあります。それを逆手に取り、いわゆる「ニアショア開発*」として、東京のお客様には比較的安価に発注いただける点がメリットです。

 

*ニアショア開発とは・・・都市部の企業が地方の企業にシステム開発を委託すること。

 

近年、システムの開発を海外の企業に委託する「オフショア開発」も盛んだと聞きます。オフショア開発と比較した時の、ニアショア開発の魅力は何だと思いますか?

 

海外の企業の方がコストは安くなる場合が多いのですが、言語やコミュニケーションの壁で苦労されるケースが少なくありません。一方で、国内でも都市部の企業に発注すると、コストが高くなります。

 

ニアショア開発では、コストを抑えつつ日本語あるいは英語で意思疎通ができる私たちのような国内企業が対応するので、結果として契約を継続していただきやすいと考えています。

 

コストやコミュニケーション面だけでなく、技術的な面においても他社との違いや強みがあると思いますか?

 

弊社のベテラン社員は、人工知能学会の会員にもなっており、意欲的に最新情報をキャッチアップしています。技術面で他社に見劣りすることはないと自負しています。

 

岡山と東京の仕事を受けながら人材を育成し「地方創生」をはかる

岡山に拠点を置くメリットは、ほかにもありますか?

 

データ分析に関連する話ですが、岡山には林業や金融業など、私の知っている範囲だけでも多様な業界があり、それぞれが非常に盛んな点です。幅広い業界に対して、AI開発や分析のノウハウを提供できるのは大きな強みになっていると思います。

 

岡山と東京、両方の仕事を受けていくことが、アイティーシーさんのミッションのひとつ「地方創生」につながっているのでしょうか?

 

おっしゃる通りです。やはり首都である東京には多くの仕事が集まるため、ニアショア開発を通じて岡山のITエンジニア育成につなげたい思いがあります。東京のみで完結する仕事は、地方では受けづらいという側面はありますが、当社は東京にも営業所を置いて弱みをカバーしています。

 

地元の大学生とチームを組んでお仕事をする「OI-Start」

岡山大学で行われたTEDxイベント

AI開発を担う企業が増えている中で、岡山のITエンジニア育成はたしかに重要ですね。例えばどんなことをされているのでしょう?

 

当社ならではの特徴として、「OI-Start*」の取り組みのひとつである「産学共創促進チャレンジ事業」に参画している点が挙げられます。

 

岡山県在住の学生さん・企業の若手社員・ベテラン社員がチームを組み、他の企業から案件をいただいて実務にあたります。若手の育成や学生の経験の場になっていますね。

 

*OI-Start・・・「おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム」の略称。県内の企業の魅力や生産性の向上、若者の育成および県内定着などを目的として、産学官連携によるデジタル技術を活用したイノベーションを創出する。

 

面白い取り組みですね!産学共創促進チャレンジ事業に参加できるのは、アイティーシーさんへの入社を志望している学生ですか?

 

入社志望に関わらず、企画に挑戦したい学生が参加可能です。これまで岡山県立大学や岡山大学の方々と仕事をした実績があります。

 

私の大学の方とも仕事をした実績があるとは、驚きです!アイティーシーさんは、OIスタートでどのような価値を提供しているのでしょうか?

 

チャレンジ事業は研究目的としての側面も強いため、最新技術の導入にこだわっている点です。「この会社のこの技術こそが強みである」というエッセンスをしっかりと盛り込み、技術的な発信をしていくことも重要視しています。

 

最近はあらゆる分野で「AIを開発・活用していこう」という機運が高まっていますよね。この取り組みも、「自分たちの分野にあるこの課題を解決するために、どんなAI技術が使えるだろうか」という、現場の具体的な問題意識が発端になっていると考えています。 

AIと共に働くということ

AIは人間の仕事を奪うのか?

岡山県立大学での講義

今、高校生や大学生の間で「AIに職を奪われるのではないか?」という不安が会話にのぼることもあります。仕事でAIを扱っている東村さんは、どのように考えていますか?

 

AIが出した内容が正解かどうかを見極め、最終的な答えに責任を持てるのは人間だけだと思っています。 お客様とのコミュニケーションも、人間にしかできない役割です。AIは書かれた言葉をそのまま受け取りますが、「言葉の意図」を読み取ることはまだ難しいと感じています。

 

確かに文面だけだと、人同士でも意図が伝わりにくいと感じることがありますよね。人間とAIで、うまく業務を分散させていければよいのでしょうか?

 

「新しいものを生み出す」のは現在のAIにはできないので人間が担当し、AIは補助ツールとして使用するのがよいと思います。一方で従来型のものに関しては、自動化できるものは自動化し、人間は最終的なチェックを行う。そうした役割分担が、今のところ最も効率的だと考えています。

 

最近ではホームページを作るための「ソースコード生成」もAIでできるようになって、人間の役割がどんどん減っていくのではないかと思っていました。

 

確かに、ソースコードには一定の規則性があるため、AIの得意分野です。ただ、私が扱っている小規模な改修作業では、AIへの指示文(プロンプト)を考えるよりも、自分でコードを書いた方が手っ取り早い場合があります。

 

あえてAIに頼らないほうがいい時もあるのですね!それはなぜですか?

 

AIに「こういうルールで書いて」と指示すればある程度は守ってくれます。しかし、生成されたコードのどこに関数があり、どこが本体なのかを自分で理解できていないと結局は使いこなせないからです。

 

現状では、生成されたコードがどこまで正しいかも含めて、人間が判断する必要があるのですね。

 

おっしゃる通りです。AIに生成してもらうのと自力で作成するのでは、どちらがより効率がよいかをその都度検討しながら業務にあたっています。

人間が責任を持ってAIをチェックしながら使う姿勢が不可欠

これからAIを使いながらエンジニアを目指す若い世代に向けて、伝えたいことはありますか?

 

AIが生成した内容には、「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」が含まれることがあります。そのため、内容の妥当性をしっかり見極めながら活用していく姿勢が重要です。「AIを使って、出てきた結果をそのまま横流しするようなことはしないでほしい」というのが個人的な願いです。

 

大学の先生からも「完全にAIを写すのではなく、自分で考えなさい」とよく言われます。AIの便利さを知ってしまうと、どうしても楽をしたくて、課題をそのままAIに丸投げして提出してしまう学生もいると聞きますね。

 

AI活用にあたっては、専門分野の知識やAIの特性を把握し続ける必要があるので、学びを止めないことも大切です。私自身も勉強中の身ですが、AIに丸投げせず、自分で責任を持って活用できるエンジニアになってほしいですね。

 

東村さん、本日はありがとうございました!

作者:平松依里子

(編集:森分志学/執筆:小原宏美)

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