AIや3D技術を駆使した設計や点検によって、私たちの道路や橋ができていた!

  • #建築・建設
  • #コンサルティング
  • #地元で働きたい
  • #新技術への挑戦

公開日 2026.02.17

近年、目覚ましい発達を見せているAIや3Dなどの最新技術。でも、私たちの生活にどのように活用されているのか、ピンと来ない人も多いのではないでしょうか。

 

総合建設コンサルタント・株式会社ウエスコでは、道路やトンネル、橋の設計や点検に、これらの最新技術を積極的に取り入れています。

 

今回は、同社の社会基盤デザイン事業部の皆さんに、最新技術を取り入れるメリットや導入事例をうかがいました。

−登場人物−

★井落 久貴(いおちひさたか)さん
社会基盤デザイン事業部社会基盤デザイン部構造設計課 課長

 

★藤村 和紀(ふじむらかずき)さん
社会基盤デザイン事業部社会基盤デザイン部設計課

 

★杉井 直人(すぎいなおと)さん
社会基盤デザイン事業部社会基盤デザイン部トンネル設計課

 

★北添 朱莉(きたぞえあかり)さん
社会基盤デザイン事業部社会基盤デザイン部構造設計課

 

★小山さん
専門学校2年生。就職活動に役立つかもと思い、生き方百科プロジェクトに応募した。

 

★松田さん
進路に迷う大学3回生。経営・経済について勉強しているが、本当に興味のある分野なのか分からずにいる。

写真左奥が井落さん。写真右奥から、松田さん、小山さん。

ウエスコの社会基盤デザイン事業部ってどんなところ?

道路・トンネル・橋の「設計」と「点検」が主な仕事

社会基盤デザイン事業部の仕事は、私たちの社会のなかでどのように役に立っているのですか?

 

皆さんが普段使っている道路やトンネル、橋といった「公共物」の設計と、それらの点検を行っています。日々の生活の当たり前を支えるインフラを、安全かつ便利に使える形にするのが私たちの使命です。

 

:「設計」というと、私たちには難しく感じますが……。

 

最初はピンと来ないですよね。かみ砕いて説明すると、設計とは「レゴブロックの説明書を作る」ということです。色々な素材を使って、完成形に至るまでの作り方の手順を書いたものが「設計図」になります。設計図を作るのが私たちの仕事で、その説明書に基づいて実際に組み立てるのが施工業者(工事を行う会社)さんというわけです。

 

すごくわかりやすいです!私たち学生にも理解できそうで、安心しました。

 

私も入社するまでは設計って具体的に何をするものなのか、まったくわかっていませんでした。設計する会社と施工する会社が、別であることすら知らなかったんです。色んな専門部署があって、多くのプロフェッショナルが関わってひとつの仕事が成り立っているのだと、入社してから肌で感じました。

 

「地図に残るものを計画的に設計できること」が大きなやりがい

岡山県備前市にある梅灘大橋

ウエスコさんのホームページに載っている実績に、「梅灘大橋」があって「あ、お世話になってる!」と思いました。私の地元にある橋なんです。

 

それは嬉しいですね!自分が毎日通る橋やトンネルなど、身近にあるものを自分の手で設計できるのは、この仕事ならではの面白さだと思います。実は、社会基盤デザイン事業部はウエスコの中でも最大規模の組織で、約150名が所属しています。岡山市や備前市、倉敷市など、多くの身近な場所の仕事に携わっているんですよ。

 

あらゆる分野を高い水準でカバーできる「多刀流」が強み

社会基盤デザイン事業部の業務について、さらに詳しく教えてください。

 

私たちの事業部は、ただ設計をするだけでなく、プロジェクト全体の司令塔のような役割も担っています。安全な道路や橋などを設計するには、地形や建物の位置、地盤の状態といったデータの収集が欠かせません。「こういう目的で、ここの地形を測ってきて」「ここの地質を調査して」と他部署に依頼を出し、必要な情報が揃ってはじめて設計に取りかかれるのです。

 

地形や地質の調査も、社内で行っているのですね。

 

はい。そして、近年はインフラの老朽化による事故を防ぐための「点検調査」も非常に重要です。道路・トンネル・橋に強みを持つ私たちが、安全を守るための点検業務も幅広く担当しています。
ウエスコさん以外で、ここまで総合的に対応できる企業は少ないのでしょうか?

 

中には特定の分野、例えば橋に特化して、多くの人と技術を抱えている企業もありますが、ウエスコのように総合的に対応できる企業もあります。 同業他社がいる状況で、ウエスコの強みは設計・点検だけでなく、測量・地質調査・環境調査など、幅広い分野を自社で行えること。

 

そして、「新しいもの好き」という社風です。老若男女問わず最新技術を活用できる環境が挙げられます。3Dスキャナやドローン、AIなどの最新技術をいち早く導入し、高度な情報を取得する体制を整えています。

 

特定の分野に超特化しているわけではないけれど、あらゆる分野を高い水準でカバーし、一連の流れをすべて自社で完結できるということですね。

 

おっしゃる通り、いわば「二刀流」や「多刀流」のようなものですね。それが中途半端という意味ではなく、すべての分野において高い水準で一連の流れで実行できるというところが私たちの強みになっていると思います。

 

ウエスコがAIや3Dを積極的に取り入れる理由

3次元モデルの設計

他社もAIや3Dに力を入れていると思いますが、ウエスコがそこまで積極的に導入するのはなぜですか?

 

理由は2つあって、ひとつは差別化です。 「ドローンがあるから災害現場でもすぐ測れる」「地中探査の機器があるから道路の陥没リスクを調べられる」といった準備が信頼に繋がると考えています。

 

もうひとつの理由は、生産性です。今は、 昔のように「長時間働いてなんぼ」という時代ではありません。残業を減らしつつ、確実に成果を上げる。そのためには新技術を使いこなし、効率を追求することが不可欠です。

 

新しい技術を導入する際に、社内で抵抗はありませんでしたか?

 

社内で色んな意見があるものの、今の若手は一度使い始めると、「これ便利じゃん!」とすぐ効果に気づいてくれます。この柔軟性がこれからの会社の発展、ひいては社会の発展に繋がっていくと信じています。

 

AIや3Dをはじめとした、最新技術の導入事例

道路の完成形を3Dモデルにして業務の効率がアップ

ここから、最新技術が現場でどのように使われているのか、そして現場にどのような変化があったのかをうかがわせてください。私がウエスコのホームページを見て一番気になっていたのが、「BIM/CIM」(※)という技術なのですが……。

 

(※)「BIM/CIM(ビム/シム)」・・・計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入する取り組みのこと。その後の施工、維持管理の各段階でも3次元モデルを連携・発展させて、事業全体にわたる関係者間の情報共有がスムーズにできる。

 

まず、「BIM/CIM」とは簡単に言うと、建設業界における3次元モデルの活用のことです。 これを導入してから、業務の効率化が格段に進みました。官公庁(国や地方公共団体の役所のこと)や地元住民の方にお伝えする際も、3次元モデルなら道路の完成形を直感的にわかってもらえます。平面の図面で説明していた頃よりも、皆さんの理解のスピードが大きく変わりましたね。

 

道路空間設計の事例として、岡山市内の県庁通りを紹介します。お2人も見たことがあるかもしれません。

岡山市内の県庁通り

ここ、知っています!イオンモール岡山の近くですよね。

 

そうです。元々は片側二車線の道でしたが、それをあえて「一車線」に減らして歩道をぐっと広げたんです。

 

「車線を減らす」という設計をすることもあるんですね。

 

昔は「車が通れればいい」という時代もありましたが、今は逆。中心市街地を活性化させるためには、人が歩いていて気持ちいい空間づくりが必要です。街路樹も植えて、歩行者がゆったり行き来できるように設計しました。

 

そんな背景があったのですね!この道を通る度に、「ほかの道と雰囲気が違って素敵だな」と思っていました。

 

イオンなどの大型施設に人が集中しがちですが、こうした空間を作ることで、街の回遊性が高まり、他のエリアにも人が流れるようになります。設計には「街を元気にする」という目的もあるのです。

 

県庁通りのように車線の数を減らす時、近隣の人から不評の声が出ることもあるんですか?

 

できた当初は、車を運転する方から「使いにくい」という声もあったかもしれません。でも実際に使っていくうちに良さが浸透し、「ほかの路線もこうしよう」という動きに繋がっていくこともあります。だからこそ、事前の説明が大切なんです。

 

そこで活きてくるのが、先ほど説明した3D技術です。完成後の便利さを立体的に見せることで、地元の方にも納得していただいたうえで街づくりをしていけます。

 

レゴブロックの完成図を立体で見せるのと同じですね。

 

MMSとAIの活用でトンネル点検のスピード化とコストカットを実現

MMS(モービル・マッピング・システム)搭載車

続いて、トンネル点検で活用しているMMS(モービル・マッピング・システム)についても教えてください。

 

MMSは、車両を走らせることでトンネルを計測する技術です。昔は、人の手でトンネルのズレを確認していましたが、測る場所が少し違うだけで評価がバラついてしまうのが課題でした。 MMSなら、走りながら形を丸ごと正確に取得できます。

 

形を丸ごと取得できるメリットは何ですか?

 

「面」で評価できる点です。例えば、10年前に撮ったデータと今のデータを重ね合わせることで、どこが何ミリ動いたかの差分がすぐ分かります。 さらに、車で走るだけでデータが取れるので、道路を封鎖する交通規制がいりません。

 

交通規制がいらないのは、ドライバーにとっても嬉しいですね。

 

交通規制には1日10万〜30万円ほどかかりますが、それが必要なくなる点もメリットです。現場作業の人件費も抑えられるため、時間とコストの両面を大幅に削減できます。

実際の画面

トンネルや橋の点検には、AIも導入しているんですよね。

 

そうです。トンネルや橋は5年に1回、必ず点検する決まりがあるのですが、この時AIを取り入れています。

 

従来は、人間がトンネルや橋の写真を1枚ずつ見ながら、損傷状態や程度を確認し、判定・記録していました。今は数万枚のデータを学習したAIが、写真から自動で損傷を判定してくれます。結果として、現場での作業時間を約2割削減できました。

 

2割!それは大きな違いですね。

 

はい。今までは壁に近づいて目で見て、ハンマーで叩いて……という作業をしていましたが、今は高画質な撮影だけで済む場面が増えました。

橋の点検では「ベテランの目」をリモートで借りられる

橋の点検で、AI以外に活用しているツールはありますか?

 

最近では「ウェアラブルカメラ」も導入しています。現場の作業員がヘルメットや胸元にカメラをつけ、リアルタイムで映像を社内に送るんです。

 

リモートワークの現場版ですね!

 

その通りです。経験豊富なベテランが、会社にいながら現地の映像を見て、「そこ、もう少し右を映して」「こう指示して」と、リアルタイムで的確なアドバイスを送れるようになりました。

 

橋の点検には、橋の下にアームが潜り込む特殊な車両も使います。実はこの車両、1台1億円くらいするんですよ。

橋梁点検車による点検

 

ええーっ! 1億円!?

 

自分たちで買うのは大変なので、レンタルして使いますが、1日の料金は70万円ほど。だからこそ、絶対に無駄な時間は出せません。 大型特殊の免許を持ったオペレーターさんと連携し、綿密な計画を立てて点検を行っています。
ベテランの目は、ほかにどのような場面で役立っていますか?

 

私が経験したのは、能登半島地震の被災地調査の時です。現場が遠方のため、まずは若手メンバーが現地に向かいました。そこで、会社にいる上司とリアルタイムで映像を共有しながら、橋の状態を一緒に確認しました。

 

なるほど!若手だけで現場に行っても、ベテランの確かな力を借りられると思うと心強いですね。

 

建設コンサルタントは「街への想い」を形にする仕事

インフラに関わる仕事は、学生のお2人にはなじみがない業界だったかもしれません。今回の取材前と後で、建設コンサルタントへの印象はどう変わりましたか?

 

調査や設計といった専門に特化した役割があることを知り、その効率的で正確な仕事ぶりに驚きました。

 

私は、最初は正直に言って「自分にはなじみがなさすぎて、イメージが湧かないな」と思っていました。でも、今日お話を伺って、聞けば聞くほど「面白い!」と惹きこまれていきました。

 

自分の住んでいる街が、緻密な計算や「安全を守りたい」という想いで作られているんだと知り、街を歩く時の視点が変わりそうです。何というか……感謝の気持ちが湧いてきました。

 

そう言っていただけると、本当に嬉しいです。私たちは普段、利用者である一般市民の方と直接関わる仕事ではありません。だからこそ、「面白い!重要なんだ」と感じてもらえたことは、私たちにとって大きな励みになりました。

 

TOP