当たり前の生活を支える総合建設コンサルタント・株式会社ウエスコ

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公開日 2023.04.07

交通インフラやライフライン、防災施設など、私たちの暮らしを安全・安心に支える縁の下の力持ちのような企業があります。どのようにして、私たちの「当たり前の生活」を支えているのか、総合建設コンサルタント株式会社ウエスコさんに詳しく伺いました。

 

企業活動を深掘りしてみる

「当たり前の生活」を当たり前に支える仕事

――会社について、教えてください。 

 

道路・鉄道・橋・港湾・空港などの交通インフラや、電気・ガス・上下水道などのライフライン、ダムや堤防・防波堤などの防災施設など、私たちの「当たり前の生活」を支えるのが総合建設コンサルタントです。
主に官公庁などの公的機関から発注を受け、建設会社が施工する前段階の計画・調査・設計・施工管理・運営に関わっています。

 

例えば、道路やトンネルや橋の設計、水の流れを分析した河川の浸水シミュレーションなどを行っています。
また、渋滞対策など交通の円滑化を図るため、信号や交通網の計画を行っています。上下水道や公園の設計や老朽化対策など、生活に密着した様々なプロジェクトを行っています。

 

――どんな依頼が多いのですか? 

 

インフラの老朽化に伴う調査・点検などが増えてきています。例えば、岡山市の橋が安全であるかどうかの点検依頼があった場合、現場で調査・診断をして、評価結果をまとめ、危険性を評価し、優先度を計画する仕事もあります。

 

河川や谷、池、海等をまたぐ橋梁では、橋梁点検車で点検する

 

――知らないうちに、生活の中にウエスコさんの技術が散りばめられているのですね。 

 

はい。例えば、岡山で馴染みのある道路についても技術力を発揮しています。県庁通りを1車線に変更した際は、交通状況に問題ないかどうかをシミュレーションしたり、交通量調査を行うことで、交通の問題点や課題の洗い出しを行いました。
渋滞が起こっている場合には、原因を追及し、どのような対策がとれるかを考え、変化を予測し、発注者や住民の苦情などを解消するように考えます。

 

交通工学という研究分野があり、体系化されたノウハウが存在していますが、地域によって状況が異なるため、地域ごとの対応が必要となります。交通工学のマニュアルをもとに、交通状況を把握し、どう展開していくのかと考えることが醍醐味です。

 

――どのように、依頼されるのですか?

 

目的や作業内容が決まっているご依頼と、そうでないご依頼があります。目的や作業内容が決まっている場合は、例えば、市内の100橋の診断を行い、損傷度の評価をとりまとめる。
決まっていない場合は、目的に応じて調査方法や分析方法といった作業内容を提案し、仕事を進めます。

 

自然環境分野の強みを活かして、水族館も運営

――「未来に残す自然との共生社会」という理念に基づいて、どんなことをされていますか?

 

公共の構造物を作る際には、山を切り崩したり、河の上に橋を架けることになります。そのため、絶滅危惧種や珍しい生き物がいるかどうかを調べて、人だけでなく動植物にも配慮するため、環境アセスメントをしています。自然環境部門は弊社の強みでもあります。

 

――水族館も運営されていると伺いました。

 

自然環境に詳しいという強みを活かして、四国水族館やátoa(劇場型アクアリウム)など水族館を運営する株式会社アクアメントというグループ会社もあります。

あまり知られてはいませんが、スポーツジムの運営、おかやまマラソンやサッカーチームファジアーノ岡山FCのスポンサーでもあります。

 

守るべき環境を調べ解明するため、精度の高い調査・解析を実施

 

生きものが好きな学生が、多く集まる

――どんな学生さんが、就職試験を受けますか?

 

自然環境に興味がある、生きものが好きな学生さんが多く集まる傾向があり、全体の3割近くを占めています。
私たちの会社が、自然環境を守りながら、事業を行っているからだと思います。また、他に環境調査会社が少ないため、生きものが好きだけれど、それを仕事にできる会社が少ないということも要因と思います。

 

赤池さんの「働く」を深掘りしてみる

大工の父の影響で

――入社のきっかけを教えてください。

 

岡山大学出身で、地元は大阪なので、岡山が本社で大阪にも支社があるいまの会社が、私の希望にあっていたからです。また、大学の先輩が同じ会社に入社していたので、会社の雰囲気や仕事内容について詳しくヒアリングできたことも、選ぶ理由となりました。

さらに、父親が大工で家を作っており、子どものころから、現場に連れて行ってもらっていました。

モノづくりを仕事にしたかったので、大学では土木系の環境デザイン学科を専攻しましたが、現場で力仕事をするのは向いていないと感じたため、建設コンサルタント会社を選びました。

 

――入社の決め手を教えてください。

 

風通しが良く、体育会系ではない雰囲気が私の性格に合っていると感じたことと、財務基盤が安定しているため、安心して働けると感じたことです。

 

――どの部署に配属されたのですか?

 

大学では環境デザイン学科で、大学院では温室効果ガス(温暖化)の研究をしていましたが、現在は交通計画課です。
入社するときは、研究内容に関連のありそうな部署で希望を出していたのですが、蓋を開けたら交通計画課でした。結果好きな分野だったのでよかったのですが、自分で選んだというわけではないんです。適性を見ての配属だったようです。

 

交通渋滞緩和で、社会に貢献する

――やりがいを教えてください。

 

みなさんが困っている交通の課題、交通渋滞に関する仕事は、生活の快適さに直結しているので、とても社会貢献度を感じています。また、私には子どもがいるので、子どもたちのために、安心・安全な町を残していきたいという想いもあります。

 

ただ、職業病でしょうか。運転中に渋滞が起こったら、なぜ起こったのか、もっと効率的に解消できる方法はないかなど、考えてしまいますね。そういうことも楽しいです。

 

――どんな渋滞対策をされているのですか?

 

わかりやすい渋滞対策で言いますと、朝や夕方の混雑した時間帯に、交通量や渋滞の長さ、車がどのくらい連なっているかを調べます。
交通の動きを見ながら、渋滞の原因を分析します。例えば、交通量が多すぎる、駐車場の入り口が渋滞する、歩行者が多いから渋滞するなど、そういった要因を分析します。

 

例えば、右折の車線が足りていない場合は、右折車線を延ばすことが考えられます。土地を買わなければいけない対策や、土地を買わずに簡易に対策できる方法を検討します。
対策案が決まったら、設計担当が設計をし、例えば右折車線を入れて歩道が減る、歩道から外側にどれだけ土地を買わないといけないか設計をします。自治体で対策内容が決まったら、工事会社に発注し、工事が行われ、渋滞が緩和される流れとなります。
計測手法や、解析手法は決まっていますので、入社して勉強すれば問題ありません。

 

――大変なことはありますか?

 

関係者との調整です。何を優先するかは立場によって異なるからです。具体的には、道路は自治体が管理をしていたとしても、信号は警察が管理していたり、JRと交差するような場所では、JRとの調整も必要になります。土地を買わないといけない場合は、土地の所有者に納得していただく必要があります。

 

バランスを取りながら最適解を提供するために、調整を含めたコンサルティングが必要になります。地元からの反対というニュースを目にしますが、事前調整が不十分だと、こういうことが起きます。フロントは基本的には自治体が行いますが、専門的なことについては、代わりに説明や対応をすることもあります。経験や知識が必要になるため、土木の業界は経験工学と呼ばれることがありますね。3年~5年経験を積んで、一人前の業界です。

 

交通分野にもDXを

――ご自身の目指すところを教えてください。

 

DX(デジタルトランスフォーメーション)という取り組みが進んでおり、最先端のツールや技術を使いながら、仕事を効率的に行い、より良い提案をすることを意識しています。

新しい技術に興味があり、例えばAIを使って交通量をカウントするシステムを使うことなどに、挑戦したいと考えています。

 

――取り組み例を教えてください。

 

車の動きのデータを用いた経験があります。ビッグデータとして蓄積されており、渋滞の予測や交通事故の対策などに活用することができます。具体的には、急ブレーキが多い場所を分析して、事故が起きる前に対策を講じたり、渋滞が発生する原因をデータから分析して、対策を考えることができます。
その他、データを分析することで、バイパス開通後の交通の変化や、観光の需要予測などに活用することができます。

 

それで社会が良くなる?と自らに問う

――仕事をするうえで、大切にしていることを教えてください。

 

「それで、社会が良くなる?」ということは、頭に入れています。社会を良くするためには、道路を作ったり、構造物を建てたりするといったことが必要ですが、それらを作るということはお金が必要で、そのお金は税金という形で集められます。

 

インフラを維持していくためには、将来の子どもたちの税金も使われる可能性があるので、本当に必要なものかどうかを考えることが大切です。
効率的に都市を運営するというコンパクトシティ(都市を小さくして、無駄な開発やインフラ整備のコストを抑える)という考え方も注目されています。いかに賢く都市を運営するかという視点もあるので、やはり「それで、社会が良くなる?」ということは頭に入れて仕事をしています。

 

――働きやすさは、いかがですか?

 

ワークライフバランスを取りやすいですね。時間有給制度があるため、子どもを病院に連れて行くなど、家庭の都合にも対応できます。

 

目指したい未来について聞いてみる

地元に根差しつつ、外にも展開

――目指したい未来について、教えてください。

 

業界的に、全国では中堅どころです。地元に根ざし真摯に対応する社風なので、「契約が終わったから対応できません」ということはない雰囲気です。「ウエスコさんだったら安心」という依頼があったり、新しい仕事の案件につながりやすい現状があります。

今は主に西日本を中心に事業を展開していますが、企業として成長すべく、関東や中部地方にも進出しています。さらに、最近では海外展開も始まっています。

 

(編集:横山 麻衣子)

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