田んぼの中を力強く走るトラクター。実は、アタッチメントを付け替えることで、さまざまな役割を担うことができます。
その動きを生み出す仕組みづくりには、たくさんの技術と工夫が詰まっています。そんな未来の農業を支える技術の裏側を、大学生の一色さんが取材しました。


技術部 メカトロチーム リーダ
広島県尾道市出身。岡山大学工学部を卒業後、2017年に新卒で三陽機器に入社。

岡山県内の大学に在学中の大学2年生。NPO法人だっぴのインターン生として、2025年10月から参加。
目次
農業機械の“頭脳(動く仕組み)”を生み出す
大手メーカーに信頼され続ける技術力


1つは、フロントローダといって、トラクターの前につけるシャベルのような機械です。土や資材をすくったり運んだり持ち上げたりするためのもので、これは弊社で昔から作り続けてきた代表的な製品です。
もう1つは、トラクターの前や後ろにつける草刈り機です。トラクターに乗りながら草を楽に刈れるもので、今ではフロントローダに次ぐ事業の柱になっています。
私たちは油圧や電気制御といった「機械を動かすための仕組みづくり」が得意なんです。これは、フロントローダや草刈り機の開発で培ったものです。


トラクターのエンジンで油圧ポンプを回し、そのポンプが油を押し出します。この油をシリンダーという筒に送ると、油の力でシリンダーが伸びたり縮んだりします。それによってアームが上がったり下がったりするんです。
油圧のいいところは、回転等の動力をワイヤーなどで伝えなくても、油の流れだけでモータを回す力を送り届けられること。トラクターはもともと油圧の力を使える仕組みを持っているので、その力を利用して作業機を動かせます。
油圧の技術も一番得意としているところです。




大手トラクターメーカーさんが、私たちの作った作業機をトラクターに取り付けて販売してくれています。そのため、会社名は表に出にくくて、学生さんは入社してから「あ、こんな製品を作っていたんですね」と知ることもよくあります。
また、フロントローダや草刈り機で培った技術を使った油圧、電気制御部品を他のメーカーさんに販売することもあります。


さらに、電気油圧制御技術にも力を入れていて、操作レバーや制御システムまで自社で開発しています。その技術力を評価していただき、ほかの作業機メーカーさんからシステム提供の依頼をいただくこともあります。
また、タイにも工場があり、アジア地域向けにもフロントローダを展開しています。
自動化・省力化へ。未来の農業を動かす挑戦


そして、先ほど申し上げた、第二の主力製品である草刈り機は、腕(アーム)が回動して、草刈部をトラクタから遠い位置まで伸ばせるタイプに力を入れています。








さらに日本では農家さんの人数が減ってきています。例えば、これまで2〜3人で行っていた作業を1人でできるようにする省力化が必要です。そうなると、前にフロントローダ、後ろに別の作業機をつけて「農作業を一度に2つこなす」 といった複合作業が必要になる場面も増えてくると思います。
こうした未来の農業の形に合わせて、効率的で安全性の高い機械の開発を進めていくことが、これからの大きなテーマだと考えています。
農業機械の進化に向き合う、小泉さんのストーリー
進化し続ける“農業機械”の分野に、未来を感じて




その中で“農業機械”という分野を知り、調べていくうちに、これからの未来、さらに必要とされていく大事な仕事だと分かってきました。自動で制御する仕組みなど、技術がどんどん進んでいくところにも興味を持ち、「面白そうだな」と思ったことがきっかけです。


農業機械の設計開発をされる会社でも、電気の制御装置は別会社で開発することがあります。ですが三陽機器では、電装品の構造や基板設計から最後の形にするところまで全部自社で携わることができて楽しそうだと感じました。


「大学での学び」と「社会での仕事」の違いを実感




さらに仕事では製品として「売れるかどうか」まで考える必要もあります。安全性はもちろん、使いやすさやコストなど、さまざまなバランスの難しさに悩むこともあります。
コミュニケーションが支える、ものづくりの現場




三陽機器のお二人から若者へのメッセージ
やらないよりも「やってみる」を選ぼう


また、うちに限らず、会社を選ぶときには、“自分が本当にやりたいこと”を大切にしてほしいです。その想いがあれば、どんな環境でも活躍できると思います。

私たちが扱う農業機械の分野も、田んぼで働くトラクターなど、実はとても身近なところにあります。ふだんの景色の中にも“ものづくりの世界”は広がっている。そうした身近な気づきが、未来の選択につながるヒントになるはずです。

(編集:森分志学/執筆:大島爽)


取締役 技術部長
兵庫県太子町出身で岡山大学機械工学科を卒業。大学生の頃は自動車部に所属していた。