地域とともに“たまの”から世界へ、銅製錬で社会に貢献する・日比製煉株式会社

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公開日 2023.11.12

ほとんどの電気・電子機器に利用されている素材、銅。電気を通しやすく、加工しやすく、腐食しにくい銅は、スマートフォンや乗り物・家電製品に至るまで、なくてはならない素材です。

この銅製品のもととなる電気銅を生産している会社が岡山県にあります。瀬戸内海の風光明媚な環境と、海運に恵まれた日比共同製錬株式会社です。

今回、玉野製錬所の製造部副部長・波多江さんにインタビューをしました。私たちの暮らしを支える工場の舞台裏に迫ります!

銅はどうやって、つくられている?

1日1000t!純度99.99%の電気銅のつくり方

銅って、身の回りのどのようなものに使われているのでしょう?

 

あらゆるものに、使われています。電気伝導性に優れていることから、スマートフォンや乗り物、家電製品に至るまで、ほとんどの電気・電子機器に利用されています。銅線の原料と考えてもらえたら、わかりやすいと思います。

 

私のスマートフォンにも、銅が入っているのですね!銅は、どうやってつくられているのでしょうか?

 

実は、銅ははじめから電気・電子機器などの部品として使用することはできません。

海外などの鉱山から採掘された銅鉱石を、5万トンクラスの大型船舶で、当社に輸送します。さまざまな工程を経て、純度99.99%以上(通称:フォーナイン)の電気銅を、1日1000トン規模で製造し、出荷しています。

 

5万トンクラスの大型船舶で輸送されてくるとは、ダイナミックですね!

 

工場のある敷地はとても広く、まるで1つのまちのよう。

 

電気銅は、そのまま電気・電子機器に使用できるのですか?

 

いいえ。電気銅は、その後もさまざまな工程を経て、板や管、棒や線に形を変えていきます。

 

そうしてはじめて電気・電子機器に使用できるようになるのですね!今後も銅は電気・電子機器に使われ続けるのでしょうか?

 

カーボンニュートラル※の流れから、太陽光パネルや風力発電などの再生可能エネルギー設備や電気自動車など、電化がさらに進むと考えられますので、これからも銅は必須な素材です。

※カーボンニュートラルとは:温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。排出量と同じ量を吸収または除去することで差し引きゼロを目指す。

 

多様な人材によって銅を製造

どんな人が活躍していますか?

 

いろいろな部署があるので、さまざまなタイプの人が活躍しています。リーダー的な人が活躍している仕事もありますし、監視業務のような緻密な仕事では、職人気質の人や学者タイプの人などが活躍しています。適材適所で、とにかく前向きに仕事に向き合って、協力しながら活躍しています。

 

野球部の活動がやりがいになっている社員さんも

社内の部活動として野球部が有名です。実業団ではありませんが、野球部に入りたいと言って入社を決める社員もいます。オフシーズンには、保育園や幼稚園で野球教室を開催し、今年も山陽新聞に掲載されるなど、玉野市で有名なイベントになりました。

 

また、スポーツ大会を開催したり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに社員と家族で行ったこともあります。コロナが落ち着いてきたので、再開に向けて現在企画中です。さらには、地域の貢献活動の一環として渋川海岸の清掃活動も毎年実施しています。

 

130年、脈々と受け継がれる銅製錬の技術

御社の強みとして、どのようなことが挙げられるでしょうか?

 

3つの強みがあります。1つ目は、日本の基幹産業である銅製錬を通じて社会貢献をしています。生活に必要不可欠な銅を製造していることに加え、高い技術力で最後のリサイクルまでカバーすることができます。

 

具体例を挙げますね。当社が電気銅を製造し、グループ会社でスマートフォンを製造しています。皆さんもスマートフォンが古くなり、新しいスマートフォンに機種変更をする場合、廃棄されたスマートフォンなどに含まれる銅などの金属は当社でリサイクルすることができます。生産からリサイクルまで、世の中の循環型社会のニーズに貢献できる事業体となっています。

 

2つ目に技術力です。日比の地で銅製煉がスタートして130年という長い歴史を持つ製錬所なので、リサイクル原料の比率や電解設備の電流効率などの銅製錬の技術は、世界トップレベルを誇っています。

 

電錬工場

 

3つ目は、人材です。ここ岡山での銅製錬の技術は先輩たちが時代時代で改善を行ってきた結果であり、現役世代の社員たちにも脈々と受け継がれており、これからも受け継いでいきます。

1日1000トン規模の電気銅をつくるために、熱い熔体や大きな設備を取り扱うので、一人では何もできません。このチームワークを維持している社員のみなさんが、一番の強みだと思います。

 

DXやロボット化で、さらなる職場環境改善へ

これから力を入れていきたい取り組みについて教えてください。

 

当社の所属している三井金属グループのパーパスは「探索精神と多様な技術の融合で、地球を笑顔にする」です。地球に優しい取り組みに力を入れていきます。とくに銅製錬を担っている当社は、循環型社会の構築とカーボンニュートラルへの取り組みに力を入れています。

 

具体的には、自熔炉では原料から発生する余剰な熱を利用して、 銅のリサイクル品を熔解しています。リサイクルの効率を上げることは、循環型社会への貢献につながります。熱回収・自家発電も行っていることから、この比率を高める取り組みを行っていくために、若手社員と最新技術の適用ができないか検討をしています。

 

このような取り組みを行うためにも、当社の社員が健康で、笑顔で「お父ちゃん帰ったよ」と、家に帰ることができるように、やりがいをもって仕事ができることが大前提です。 

 

仲間への配慮を持った職場雰囲気を持続することはもちろんですが、高熱の熔体を取り扱う職場環境の改善のためにも、DXやロボット化などを駆使した新たな革新技術の導入にも力を入れていきます。

 

地球にも、働く人にも優しい体制づくりが進められているのですね。

 

波多江さんの仕事は「改善」のプロ

製造部のチームワークを支える

「自分のことを伝えるのは緊張しますね」と話す波多江さん

 

波多江さんが所属されている製造部は、どんな仕事をしていますか?

 

自熔炉と呼ばれる熔鉱炉や、電気分解の設備を駆使し、銅原料から純度99.99%以上の電気銅を製造しています。

 

海外の鉱山から掘り出した時点では、 鉱石は数%しかありませんが、 鉱山で破砕、選別が行われ、銅30%程度となって船で運ばれてきます。一見、土としか見えない銅の原料を、自熔炉・転炉・精製炉の3種類の炉で1300°Cの高温で処理することで 99%まで高めることができます。それを電気分解して、さらに純度を高めて、99.99%以上の高純度の銅の板=電気銅をつくるまでが製造部の仕事です。

 

電線メーカーさんのほか、当社は銅を使った電子部品を製造している三井金属のグループ会社なので、三井金属にも納品しています。

 

鋳銅場

 

どのように仕事を進めていますか?

 

原料や資材の調達・管理を行う部署、製品の出荷調整を行う部署にはじまり、多くの大型設備のメンテナンスを担当している設備部門など、多くの部署に協力してもらいながら電気銅をつくっています。

工場生産は24時間365日稼働しているので、毎日の報告・連絡・相談で密に連携しています。

 

そのなかで波多江さんが担当している仕事について教えてください。

 

製造部の副部長として、「生産量をあげる」「コストを下げる」などの製造部の方針・戦略策定から生産の管理まで、全体を見渡した仕事を担当しています。 

改善事項や困りごとを聞き、さらに良くなる方法がないか議論していく仕事が多いですね。

 

モノづくりがやりたいと思っていた

学生時代はどんな研究をしていたのですか?

 

海底資源から貴金属を回収するという製錬関係の研究室に所属していました。失敗もしましたが、 自分で考えた方法を試してみて、上手くいった成功体験も味わうことができました

 

入社の決め手は何ですか?

 

「モノづくりがやりたい」 と漠然と思っており、 所属していた製錬系の研究室の先輩も当社に入社して、ずっと勤務し続けておられたので、お話を聞いて「やりがいがありそうだな」と思ったことが決め手となりました。

 

「改善・成功・一緒にお祝い」が嬉しい

入社して、魅力に感じたことを教えてください。

 

入社した年から、製造現場の技術的改善や将来に向けた技術開発を担当させてもらえることが魅力でした。 

 

教えてもらいながらですが、自分が考えた技術を、製造現場の方々と一緒に改善し、成功し、一緒にお祝いをしたことが楽しかったです。私が改良した工具を先輩たちが使ってくれたこともよい思い出です。

 

成功するまでの試行錯誤はしんどいことではありますが、まわりのみなさんに助けられて、さらにもう一歩進むことにやりがいを感じています。一緒になって取り組んでくれるまわりの先輩たち、仲間たちが多くいることが一番の魅力だと思います。

 

1986年に、記念品として社員に配布された銅。ずっしりとした重みがあります。

 

場所は変われど楽しい全国転勤

ご出身は岡山ですか?

 

福岡出身で、大学は熊本です。私は三井金属に本社採用されました。

地元で働きたい人もいると思いますが、私は入社当初「どこへでも行きます!」と伝えていたので、埼玉・岐阜・青森・ 福岡の転勤を経由して、今岡山にいます。青森に転勤したときは「ウィンタースポーツを制覇してやる!」と思い、休日はスノーボードを楽しみました。

 

転勤すると取り扱う製品も違うので大変ですよね?

 

技術的な苦労はしました。転勤先によって、亜鉛をつくったり銅をつくったり。製品が異なるとつくり方も異なるので、そこは少し大変でしたね。

ただ、社内はどこに行ってもチームワークもよく、みなさんいい人ばかりだったので楽しく仕事ができました。

 

やりがいを持って前向きに取り組む

どんな人と一緒にチャレンジしていきたいですか?

 

技術や知識は、会社に入ってからでも身につきます。会社に入ってから、教えてもらいながら、やりがいを持って前向きに取り組める人と、一緒にチャレンジをしていきたいです

 

さいごに、高校生・大学生へのメッセージをお願いします。

 

会社訪問の機会を増やすことがおすすめです。様々な企業で働く諸先輩方と話をして、自身のやってみたい事が、実際に入社したら実現できるのかを確認してみてください。就職活動ではいろいろと悩むこともあるかと思いますが、 悔いの残らないように頑張ってください。就職活動の時期は自分を見つめ直し、悩むことが大切なことだとも思うからです。

 

波多江さん、貴重なお話をありがとうございました。

 

 

清掃活動での集合写真

 

(編集:横山麻衣子)

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