少し、目をつむってみてください。今いるところの振動を感じとれますかーー?
私たちの生活空間は、振動に溢れています。感じ取れなくとも、マイクロやナノレベルの振動が、そこにはあるのだそうです。
そのことを教えてくださったのが、今回のスゴイ企業・倉敷化工株式会社のお二人です。防振技術で防振対策を行い、振動を制御し「振動のない快適な空間」を創り出す。振動のプロフェッショナルの深いお話で、世界の見え方がきっと変わります!
目次
振動のプロフェッショナル集団、倉敷化工。


岡山県真庭市出身。県内の大学で電気電子系を専攻し、県外で就職。ライフイベントをきっかけにUターン転職をし、倉敷化工に入社。入社後はソフトウェア開発に従事し、現在は電子制御事業部の開発課長として新事業開発を行っている。

岡山県内の大学に在学中の大学2年生。NPO法人だっぴのインターン生として10月から参加。
車に建物、身近な快適を支える「振動対策」






次に身近なところでイメージしやすいのは、エアコンです。デパートや家電量販店の屋上にエアコンの室外機が並んでいるのを目にしたことはありませんか?あの室外機の下にある台にも私たちの製品が使われています。






スマホに不妊治療、ナノの世界に不可欠な「振動制御」







私たちは感じていませんが、この建物も実はわずかに揺れています。こうしたごくわずかな揺れも、マイクロ・ナノレベルのものづくりの世界の品質には大きな影響を及ぼすため、工場では「除振台」という振動を除いて精密作業に適した空間を作り出す台の上で、製造作業を行います。
私たちはこの除振台を開発・提供しており、国内の半導体装置メーカーで多数採用いただいています。


不妊治療では、卵子に対して針を刺すという非常に精密な作業が必要です。このとき、微細であっても振動があると狙い通りに作業ができません。そのため、電子顕微鏡を卓上型アクティブ除振台の上に置き、そこで操作を行っているんです。


振動のプロ集団が目指す「振動のない快適空間」



一般的に、機械メーカーの中には振動やゴムの専門家は少数です。。なので、機械メーカーが製品の質を向上させようと考えた時、防振やゴムに関しては私たちのような専門メーカーに相談する必要があります。
私たちには自動車、住宅をはじめとしたあらゆる業界のお客様からの振動に関わるご相談に応えてきた経験値、ノウハウがあります。それらを最大限に活かして、「もっとゴムを柔らかくした方がいいですよ」「素材に粘りを入れましょう」など、より良いものづくりのための専門的な設計提案ができるのが私たちの強みです。





「振動制御技術で、人々の暮らしに、快適な空間をお届けします」をキーメッセージに据え、お客様の問題に対して振動対策だけでなく、振動を計測して、異常をキャッチしたら機械サービスを止めるなどの制御もご提案していこうとしています。
現代は静粛性への需要がますます高まっています。たとえば、電車では居住性や乗り心地を高めた車両が運行開始しています。弊社はこのような鉄道事業にも振動制御技術を提供しています。
住宅においても同じです。夜勤で昼間に休んでいらっしゃる方もいますし、防音性能はより高いものが求められるようになってきています。私たちはこうしたニーズにもっと貢献していきたいと考えています。
振動制御の最先端を行く、髙橋さんのキャリア
ワークライフバランスを求めて未知の振動の世界へ



家族との時間を大切にしたかったので「よりワークライフバランスのとれる企業で新たな挑戦がしたい」と考えるようになり、子育てなど家庭での時間をとれる仕組みの整っている倉敷化工にUターンで入社することにしました。今から約10年前、2015年のことです。




それに、家族と過ごす時間も仕事への熱意の源泉でした。「週末に子どもと、どんなことをしようかな」と考え、それまでにすっきり仕事を終えられるようにと業務に取り組んできました。


除振台は、おそらくみなさんのほとんどが目にすることのない装置です。僕も入社して実物を初めて見ました。除振台はマイクロメートルやナノメートルの精度を必要とする液晶や半導体の製造装置や検査装置の足の部分で振動を抑える重要な装置です。この除振台の設計開発技術に加えて、私たちは製造検査装置のステージを開発するメーカーとの資本提携により、トータルでお客様の要求を満たす設計を追求することができます。
半導体や液晶業界って、何十トンもの定盤といわれる石の上に装置を載せてマイクロメートルやナノメートルの精度で物を作る世界なんですよ。



今はそのアクティブ除振台に使用する振動センサの技術と経験を活かして、2024年4月に産業機器事業部から独立した電子制御事業部でセンシング開発をしています。


工場の製造ラインで装置が故障してしまうと、生産の計画にも大きな影響が出てしまいます。ですが、このセンシング技術を活かして装置の異常を早期に発見できればこうしたトラブルを防ぐことができるのではないかと思います。


チームメンバーは振動・解析・機械・ソフトウェア・装置というそれぞれ異なる分野のプロ。それぞれの得意分野を活かし、チームとして人数以上の力が発揮出来るようにするのが、課長である僕の役割です。
振動の世界でも大事なのはコミュニケーション



一方で、そこには難しさもあります。たとえば除振台を導入してくださったお客様の製造現場で、思ったように除振台の性能が出ない場合があります。こうしたときは、現地へ伺って調整作業を行うのですが、お客様の装置の組み合わせ、床の振動の状態、さまざまな要因が組み合わさっているので、原因の追及と調整が非常に難しいのです。


やはり最初は除振台に着目しますが、センサーでデータ計測を進めていくと、実際には工場内で動いている搬送用ロボットの発する振動が影響しているケースや、建物そのものの影響であるケースもあります。ロボットの稼働タイミングをずらしたり、設置場所を変更したり、状況に応じた提案が必要です。このあたりの弊社の技術が今後センシングの分野で活かしていけると思っています。



今後は音など振動以外のセンサーも駆使して、振動とどういう相関があるのかを調査していくことで、振動だけでは分からないことを読み取る可能性を模索していきます。


倉敷化工は男性社員も育児休暇を取得したり、子供の病気の際の休暇制度なども充実しています。その都度、色々な仕事もみんなでコミュニケーションを取りながらカバーし合っています。やはり丁寧な意思疎通が大事だと思っています。

倉敷化工のお二人から、若者へのメッセージ


ですから、ぜひハードルを上げすぎず、「ちょっと」を大事にして行動してみてください。「ちょっと聞いてみよう」「ちょっと話してみよう」の積み重ねで、あなたの可能性はどんどん広がっていくと思いますよ。

だからこそ、友達と遊んだり、部活やサークル活動に打ち込んだり、そういう学生時代の経験を思い切り体験してきてほしいです。
勉強についても同じです。僕も高校や大学で「こんなもの何に使うの?」と思う内容がありました。今思うと、高校や大学で習うことは自分の中で引き出しをたくさん作っておくような感覚ですよね。仕事をしているとそれが、こんな時に使うんだと思えることが出てきて、自分の中できれいにつながる瞬間が訪れます。僕もまだまだ勉強中ですけどね。
その時はきっと来ます。それを信じて、ぜひ今の学習にも励んでみてください。


(編集:森分 志学/執筆:北原 泰幸)
岡山県倉敷市出身。県外の大学を卒業し、県外で就職。ライフイベントをきっかけにUターン転職をし、倉敷化工に入社。製品設計や新商品開発、営業を経験し、現在は常務取締役として会社経営に携わっている。