非行を犯した少年もまた、未来ある若者として育てる法務教官

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公開日 2021.05.18

法務教官は、少年院や少年鑑別所に勤務し、非行を犯した少年が立ち直れるように教育したり、相談、助言などを行ったりする法務省に属する専門職員。幅広い視野と専門的な知識をもって,少年たちの個性や能力を伸ばし,健全な社会人として社会復帰させるお仕事。

法務教官の長橋さんに、どんな世界なのかをお伺いします!

 

登場人物紹介

NPOだっぴの代表理事・志学(しがく)。聞き手として長橋さんから話を聞きます。
長橋孝典さん。法務教官として少年院にいる少年たちに関わる。

 

図解5minダイジェスト

 

長橋さんのお仕事で関わる人たち

少年院の少年たちに授業をしたり

さっそくなんですが、長橋さんは法務教官の仕事で、主に誰と関わっているんですか?

 

圧倒的に少年院にいる少年たちが割合多いですね。

 

彼らとはどんな関わり方をしているんですか?

 

毎日一緒に生活していますね。
色んな課題を通して関わるのですが、例えば私の場合は、論語に関する記事を持って来て「読んで感想文を書こう」とか、「この本を読んで感じたことを書きなさい」というような関わり方をします。

 

いわゆる学校のような教科の勉強というよりは、社会で生きるための様々な知識の勉強ですね。個別の課題以外では、1日1時間くらいですが、授業も行います。授業は、内容が決まっているものもあるのですが、職員それぞれの得意を活かした授業を行っています。

 

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Snag Eun ParkによるPixabayからの画像

 

へぇー!長橋さんはどんな授業をされているんですか?

 

私の場合は、必ず法律が絡んできますね。子どもたちが犯罪を犯さず、幸せになることが私の最大の目的なので、そのためにも彼らが法律を理解することは大切ですから。私の授業では、子どもたちも法律のことに関心をもってくれていますね。

 

授業は何か決まったことを教える担当があるっていうよりは、職員さんの得意に応じて内容を自由に決めていいんですね。

 

そうですね。もちろんカリキュラムが決まっている部分もありますが、それ以外は。同期には元ボクサーもいたりして、法務教官も多種多様なので。

 

少年の出院後に関わる大人たちとも

あとは、どんな人と関わっているのですか?

 

保護者ですね。
「この子がどう過ごしているか」が分かる手紙を送ったり、面会に来たとき話をしたり。「出院した後、こうしたらよいのでは」というアドバイスもしたりしています。

 

あとは、出院後に関わる大人たち。
子どもたちが少年院を出て、実父母のもとに帰れるのって8割くらいなんですよね。残りの2割は、自立援助ホームのような施設に行ったり、協力雇用主と言われる、仕事や住まいのお世話をしてくれる人たちとつながったりします。

 

なるほど!子どもたちと関わりながら、子どもたちのその後につながる人たちとも関わっているのですね。

 

長橋さんが大切にしていること

未来ある若者として関わる

長橋さんが子どもたちと関わるときに大切にされていることは何ですか?

 

私は、彼らを犯罪者ではなく、1人の「未来ある若者」として関わるようにしています。自分がどういう働きかけをしたら、彼らがよりよく生きられるようになるのかを考えていますね。なので、再犯防止を目的とした授業も当然あるのですが、そこで「犯罪をしたんだから、お前たちは話を聞かなければいけない。」というような態度は絶対しません。

 

職員さんと少年の信頼関係が重要なんですね。長橋さんが子どもたちから影響を受けたことってありますか?

 

子どもたちと接すれば接するほど、私は恵まれた家庭で育ってきたことを感じさせられましたね。自分を温かく見守ってくれた両親に感謝すると同時に、「この子たちにはケアが届いていなかったからんだらか、今度は自分が何かしなければ!」って思うようになりますね。彼らは生まれながら不利な立場にいるので。

 

幅広い人生経験が活きる

私が関わっている子どもたちは、中学卒業して土木建築の世界に入っていく子が多いので、そこで共通項がありますよね。
私も高校すぐに辞めて、土木建築の世界で生きてきたので。それは他の法務教官の人と少し違うところかもしれませんね(笑)

 

あとは、「独立したい、社長になりたい」という人が多いので、そこですかね。
私は会社のつくり方も分かりますし、「法人の登記もできちゃうぞ」っていう話は子どもたちも好きで、よく会社経営の話を求めて寄ってくることが多いですね。

 

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422737によるPixabayからの画像

 

長橋さんのこれまでの人生で、「あの経験は今活きてるなぁ」って思えることは何かありますか?

 

そうですねぇ。大学で2年間、法律のことをかなり真剣に勉強したんですけど、それが活きているなぁとは感じますね。子どもたちに法律を教えることも、それは自分がしっかり学んできたからできることだなと。

 

あと、私は29歳のときに高卒認定を取っているんですけど、法務教官の人で実際に受けたことがある人は少なくて。子どもたちも院内で高卒認定を受験できるんですけど、合格するノウハウを私は実体験としてもっているので、それも活きていますね。

 

長橋さんの経験の手札は、土木建築から会社経営、高卒認定のことまで幅広くて、いいですね!

 

ずるいですよね(笑)

 

長橋さんは何をつくっている人か

最後に、「長橋さんが“生み出している/つくっている”ものって何ですか?」ということを聞きたいのですが、この質問にどうお答えになられますか?

 

「水や肥料を与えながら、若者の夢を育てている」ですかね。主語は若者ですね。

 

 

(編集:森分志学)

※本記事は、2021年5月5日に行われた大学生対象イベント「生き方百科ずたんっ!#01」内でのトークセッション内容を記事化したものです。

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