市民と一緒に課題を解決、一緒に楽しめる「参画」をデザインする公民館職員

  • #公務員
  • #地域に貢献したい
  • #人のつながりから未来をつくる

公開日 2021.07.15

公民館は、様々な分野について学ぶ機会をつくったり、地域で支援を必要としている方への対応など、関係機関・団体と連携・協力しつつ、地域の課題解決に向けた支援を行う拠点です。そこで働く職員さんは、地域における「公共」を形成するための仕事をされています。

今回は、公民館職員の塩瀬さんから、どんな世界なのかをお伺いします!

 

登場人物紹介

NPOだっぴの代表理事・志学(しがく)。聞き手として塩瀬さんから話を聞きます。
塩瀬さん。岡山市の公民館にて様々な社会教育活動に携わる職員さん。

 

図解5minダイジェスト

 

塩瀬さんのお仕事で関わる人たち

地域の人たちとの何気ない会話から活動が始まる

塩瀬さんは公民館職員の仕事で、主にどんな人たちと関わっているんですか?

 

私は事業を計画する立場なので、地元に住んでいる人やPTAの方々など様々な人と関わります。学校の先生と連携の事業を考えたり、町内会の方や子育て中の方、NPOの方ともやりとりをしています。あとは、大学生とも一緒に事業をやっています。

 

その人たちとは、例えばどんなことをしているんですか?

 

PTAの有志の人たちと防災講座や歴史ツアーをやったりしています。

 

クラスルーム, 椅子, テーブル, 学校, セミナー, クラス, 学ぶ, 家具

 

防災講座はどういう経緯で地域の人が関わったのですか?

 

PTAに入っている人たちと「小学生のときから防災に関心があったら、大人になったときに困らないよね?」という世間話をしていたんです。そこで私から「ちょうど今、防災講座のことを考えてるんですけど、どうですか?」と話を持ち掛けてみて、企画に関わってもらうようになりました。

 

30代・40代の方にイベントに来てもらおうと思ったら夜の時間の開催になりますが、子どもを家に置いてくるわけにはいきません。そこで、子どもも楽しめるような講座をPTA有志の人に担当してもらいました。

 

なるほど。塩瀬さんの事業のつくり方というのは、地域の人たちとの何気ない会話の中から、「こういう機会があった方がいいんですかね?」みたいな感じで一緒につくっていくんですね。

 

そうですね。地域の課題を拾って、それが解決につながるような学習の場を提供することが私たちの目的の1つなのです。

 

人と人をつなげる役割

社会的なメディア, 接続, ネットワーキング, 仕事, 人, コミュニケーション
段々と関わりが深くなっていくにつれて、地域の人からも話を持ってきてくれるようになるし、こちらも人を紹介して、人と人を結びつけます。

 

まだお互いに知らないけど、知り合いになったら面白いことが起きそうな人っているんですよ。その人たちをつなげるために、ある講座に両方の人に声をかけて来てもらって「実は紹介したかったんですよ」とご紹介したりすることもあります。すると皆さんも乗ってくれて、「塩瀬に言っておけばつなげてくれる」と、最近では色んな人を紹介してくれるようになったんですよ!

 

ほかには、どんな人と関わっているのですか?

 

自分だけがつながるのではなく、他の職員たちにも情報提供してます。「塩瀬じゃないと分からない」では良くないですから。なので、うるさいぐらいよくしゃべっています(笑)

 

あとは、色々ありますが、大きくは相談ごとです。学習相談や新しいことを始めたいという方に習い事の情報を提供したりしています。

 

塩瀬さんが大切にしていること

市民が参加するまちを目指して

市, 都市, 風景, 街, 建物, アーキテクチャ, 街並み, スカイライン
公民館が提供する事業に地域の人が参加するということではなく、地域の人が企画段階から参加して一緒につくる。公民館の在り方は、一緒に課題を解決できるとか、一緒に楽しめるものを考える「参画型」に、ここ10~20年で変わってきています。

 

岡山市の公民館の基本方針では、「開かれた公民館」で多様な人たちが集まって地域や未来のことを一緒に考える、出会いやつながり、学びの場をつくっていくことが書かれています。職員ではなく、市民の方々が活躍する場づくりを目指しているわけです。

 

塩瀬さんが地域の人と関わるときに大切にされていることは何ですか?

 

「市民の目線に立って」という気持ちですかね。私自身も自分の地区のPTAや子ども会の活動をしているので、仕事場でもある高島の人たちと同じ目線で情報交換できます。

 

自分が普段の暮らしの中で気になっていることは、他の誰かも気になっていることだと思うので、その感覚を大切にしています。地域の人と学校で困っていることや子どものトラブルなど、おばちゃんトークをする中で信頼関係がつくられていきますね。

 

地域の人たちと事業を実行するときに気を付けていることはありますか?

 

基本的に社会教育は「やりたい人がやる」なので、ボランティアするにしても楽しいということが大切です。しんどそうだったら無理しなくていいから、あまり強引に引き込み過ぎないようにしています。反対に、いけると思った人にはグイグイいきます(笑)

 

誰かの活躍する姿が嬉しい

では、観察眼みたいなものも必要ですね。

 

よく人を見てますね。私自身は何もできないと思っているので、何かできる人が舞台を与えられて、そこで活躍してもらえるのが楽しくて。

 

塩瀬さんも一緒に楽しんでそうですね。

 

そうですね!私はみんなが楽しそうにしているのを見るのことが楽しいです。

 

活動を一緒にやっている地域の人から「仲間だと思っているよ」と言われたときは嬉しかったですね。

 

丁寧な関係性づくり

子供達, ゲーム, 風船, 友情, 世界的に, つながり, コミュニティ, 人々
人間関係をつくれるまでは、折に触れて色んな話題を出しながら、相談したりをしています。事業に関わりを持っていない人でも、公民館で起きていることを相談してアドバイスもらったりを繰り返すことで、人の紹介をしてもらえたりします。

 

丁寧な関係性づくりをされてる印象なんですが、そこは気を付けているポイントですか?

 

はい、気を付けてやっていますね。自分が逆の立場だったらと想像して「こういう風に言われたら嫌かな」みたいなことは考えてますね。

 

塩瀬さんの、人との間合いの取り方やコミュニケーション能力はどこで培われたんですか?

 

私は一人遊びが好きな大人しい子どもだったので、人間関係づくりが得意な方ではなかったんです。だけど、この仕事に助けられているところはあるかなと思います。段々そういう風になっていったというか。

 

仕事を始めたての頃は今のスタイルではなかったんですか?

 

そうですね。年配の方が多かったということもありますが、来た人に丁寧に対応し過ぎて、その人の自立を妨げていたように思います。今は、できる人にはやってもらった方が、その人のためになるという考え方になりました。

 

元々は人に嫌われたくないという思いが強くて、八方美人な自分を超えないといけないと思っていました。みんなに好かれることはないと今は思っていますね。

 

塩瀬さんは何をつくっている人か

最後に、「塩瀬さんが“生み出している/つくっている”ものって何ですか?」ということを聞きたいのですが、この質問にどうお答えになられますか?

 

「人のつながりから未来をつくっている」ですかね。

人間関係が希薄になっていると言われている現代社会ですけど、人との関わりの中で色んなことが起きて未来をつくっていると思っています。

 

 

(編集:森分志学)

※本記事は、2021年5月22日に行われた大学生対象イベント「生き方百科ずたんっ!#02」内でのトークセッション内容を記事化したものです。

TOP