住まいのトータルコーディネーター・亀田裕子さん

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公開日 2022.07.22

「家」のどんなところに魅力を感じているのか。何を大切にしているのか。
住宅業界への就職を考える大学生が、住まいから暮らしまでひっくるめてコーディネート&アドバイスしているという亀田さんに話を聞いてきました。

 

「好きなことがあるけど、それって仕事にできるの?」
「好きを仕事にしていくってどういうことなの?」

 

そんな疑問を持ったことがある人はぜひ読んでみてください。亀田さんの生き方がヒントになるかもしれません。

 

亀田さんのお仕事

★亀田裕子さん

今回のゲスト。理想の住まいと暮らしをかたちにするインテリアコーディネート・デザインオフィス「nekko」代表。フリーランスとして新築・リノベーションなどを手掛けられています。おうちにはネコちゃんが4匹もいるんだとか。

 

家の間取りやインテリアについて一緒に考える

ーーインテリアコーディネーターとして、どんなお仕事をしてますか?

 

家づくり全般に関わる仕事をしています。家を建てたい人、リフォームしたい人、リノベーションしたい人などに向けて、家全体の間取りから一つ一つのインテリアまで一緒に考えてアドバイスをする仕事ですね。

 

これまでもずっと住宅に関わる仕事をしてきて、今は独立して3年目です。

 

ーーどんな風にお客さんにアドバイスをするんですか?

 

まず「家を新築したい」「リフォームしたい」というお客さんにお話をうかがいます。その中で、お客さん一人一人に合わせた提案をしています。

 

例えば、新築をご希望のお客さんであれば、家の外壁の色や壁紙、キッチンなどの設備を一緒に選んでいきます。リフォームの方であれば、工事中に直接現地へ行って現場監督さんや職人さんと相談して希望を伝えることもあります。カーテンの掛け替えや椅子の張り替えなどのご相談もあります。

 

私は建築士の資格も持っているので、土地を探すところからご相談いただく場合もありますよ。お客さんの希望を伺いながら、間取りを考えてインテリアを提案して、家が完成するまで寄り添うのが、私の仕事です

現地での打ち合わせ風景

 

――本当に0からトータルコーディネートなんですね!家にも愛着も湧きそうです。

 

長い期間お客さんや職人さんと関わるので、完成した時はいつもちょっとだけ寂しいのですが、完成した後もお付き合いが続いていくのは嬉しいですね。

 

インテリアコーディネーターの中でも、私の場合は仕事の幅が広い方かもしれません。職業訓練校で講師の仕事も最近はじめました。

 

――どんな学校なんですか?

 

お花の学校ですね。フラワーデザインやボタニカル、主に植物のことを教える学校なんですが、そこで月に一回、インテリアのことを教えています。

 

実は私が通っていた学校でもあって、その頃のご縁が今の仕事につながっていますね。

 

お客さんのことをできるだけ深く知る

ーー一人ひとりにぴったりの提案をするということでしたが、そのために心がけていることはなんですか?

 

お客さんのことをできるだけ深く知る。それを大切にしています。

 

お客さんの雰囲気や会話から「この方だったらこういうのが好きだろうな」「こういう色合いや素材の質感がお好きなんだな」という情報を感じ取っていきます。

 

それは、ただ表面的なものだけではなくて。「この方はどんなふうに暮らしたいのかな」「どんなふうに生きていきたいのかな」「将来どうなっていきたいのかな」ということまで含めて考えて。家は一生に関わるものですから。

 

ーー亀田さんのお仕事はお客さんの生き方にも関わっていくものなんですね!

 

亀田さんのこれまで

チラシ集めからはじまった「家」への興味

ーー幼い頃、亀田さんはどんなお子さんでしたか?

 

小さい頃は本当に引っ込み思案だったんですよ。人前で話をするのが苦手で、絵ばっかり描いているおとなしい子でした。

 

――え、そうだったんですか!?

 

引っ越しが多かったことで、だんだんと変わっていきましたね。
父が転勤族で引っ越しがすごく多くて。そんな中で人見知りしていたら、友達もできないから人見知りとかしていられなくて(笑)

 

それと、小さい頃から家のチラシ集めが好きでした。ずっと借家暮らしだったこともあって、子どもなりに、色んな家を見て夢を膨らませていましたね。でも、小学4年生の時に両親がバルコニー付きの家を買って、その時に初めて自分の個室ができたんですよ。

 

ーーそれはうれしいですね。

 

ええ、自分の空間を自分の好きにできるようになったのがとてもうれしかったんです。
その頃からどんどん家のことへの興味が強くなって、小学校6年生の時から家の雑誌を読むようになっていました。

 

ある時、その雑誌に「女の人が自分の感性や主婦の経験を活かして、一生続けられる仕事」ってインテリアコーディネーターのことが紹介されていて。それを見て、今の仕事に憧れるようになりました。

当時読んでいた雑誌がコチラ!

――そこからすぐにインテリアコーディネーターを目指し始めたのですか?

 

いえ、絵を描くのが大好きだったので、当時は漠然とデザイナーになりたいと思っていました。卒業文集にも将来の夢はデザイナーって書きましたね。

 

「すぐ学びたいのに・・・」学生時代のモヤモヤ 

インテリアコーディネーターをはっきり目指し始めたのは、中学生の時でした。

 

マイルームを手に入れてから、部屋の模様替えがとにかく好きで、ずーっとやってたんですよ。模様替えの雑誌を読んで自分でカーテン縫ったり、どうやったら部屋をオシャレにできるか考えたり。ハマってましたね。そうしてるうちに、インテリアコーディネーターをはっきりと目指すようになりました。

 

ーー高校進学はどうしたんですか?

 

高校の時は普通科に入ったんですよ。でも、やはり家への興味はあったので「大学では家のことが勉強できる学校に行こう」と思いました。でも、大学の進路を選ぶとき、美大に行くか、住居のことを勉強できる方に行くか迷ったんですね。

 

でも「絵で食べていくのはちょっと大変なんじゃないかな」って当時は思って。住居のことが学べる関西の大学に進学しました。大人になってみると、絵で食べていく仕事もあるとわかりましたが。

 

――大学では住居のことをずっと勉強していたんですか?

 

いえ、それがちょっと思ってたのと違って。

 

家政学部の住環境学科に進学したのですが、住宅のことを専門的に学べたのは大学3年生からだったんです。最初は家政学全般のことから広く学び初めて、洋服を作ったり、服のデザイン画を描いたりしていました。

 

――3年生から!?家のことを勉強しに行ったのに!

 

でも、今振り返るととても良い経験だったと思います。家政学全般は「暮らし」のこととつながっています。住居に関することだけではなく、家にまつわることを広く学べたのは本当に良かったです。

 

――素敵です、「あれは無駄だった」とはならなかったんですね。

 

でも、当時の私は早く住居のことを学びたくて夜間の専門学校にも通いはじめました(笑)

 

好きなことに近づいていった結果

自宅のお庭で植物のお世話をするのも好きなのだとか。

――それで大学卒業後、新卒で住宅会社に就職を?

 

そうです。当時はバブル崩壊後の就職氷河期でした。なんとか大手のハウスメーカーに内定を頂いたので、岡山に帰ってきて就職しました。

 

――就職活動をするにあたって、迷いはなかったんですか?

 

とにかく好きなことだったので、住宅関連へ一直線でした。特に迷いはなかったです。その会社で5年間働かせてもらいました。上司や先輩にも恵まれて、とても楽しい経験でしたよ。

 

ただ、大きな会社での家づくりは、たくさんの人間が関わるため分業されているんです。営業の人がいて、設計の人がいて、コーディネーターがいて。

 

その中で「お客様とも家づくりとも、もっと深く関わりたい」という思いを徐々に自分の内から感じるようになり、本当に自分がやりたいことを自覚していきました

 

ーーそれで、今のような0からお客さんと深く関わるような仕事を目指されたんですか?

 

はい。それで転職することにしたのですが、まず転職に有利な資格「インテリアコーディネーター」と「2級建築士」を取るために、仕事終わりに夜間の学校に通いはじめました。

 

――働きながら夜も学校行くって大変じゃなかったですか?

 

ええ、なかなか大変でした。単語帳も問題集も常に持ち歩いて、スキマ時間も勉強してましたし、家に帰っても毎日勉強をしていましたね。

 

ただ、資格勉強の学校では、色んな人と出会えるんですね。みんな色んな背景があって、年齢もバラバラで、だけど同じ志を持っていて、そんな仲間と励ましあえて。だから、勉強も結構楽しかったです。

 

――現在は独立されてるんでしたよね?20年以上ずっと企業で働いてきた後、いざ「独立するぞ」ってなった時に怖さはなかったんですか?

 

「一人になって仕事が来るのかな」って思いがあり、それは不安でしたね。

 

ただ、すぐに独立したわけではなくて、また別の会社で契約社員として働きながら独立の準備をしていました。

 

――開業まではスムーズに行ったんですか?

 

実は、少し住宅の業界から離れようかなって思った時期があったんですよ。住宅の仕事は責任も大きく忙しいので精神的に疲れてしまって。契約社員として働いていた会社もやめることにしました。

 

それで、自分の庭で自分の好きな植物を植えたりお世話したりするのが好きだったので、フラワーデザインの職業訓練校に4ヶ月通いました。

 

ーー卒業後はお花の業界で働くことにしたんですか?

 

いえ、また住宅会社で働くことにしたんですよ。やっぱり住宅のことがやりたくて。「住宅と植物と両方やればいいや」と思ったんです。

 

住まいの仕事って本当に何も無駄にならないんです。いろんなことが活きてくるのでいくらでも追求できて。色んな人にも出会えて。お客さんも一人一人違うし、家も一軒一軒違うし。興味が尽きない仕事ですね。私にはそれが合っているなと思います。

 

――亀田さんが頑張ってきたことが全部活きてきたんですね!

 

頑張ったというより「自分が好きなこと、興味が湧いたことにどんどん近づいていった結果、今がある」という感じです。

 

「この人と一緒に仕事したいな」とか「これ面白そうだな」「こうすると喜んでくれそう」と思ったことはとりあえずやってみる。あんまり損とか得とかを考えずに。あとは、自分のやりたいことを声に出して、いろんな人に話をすることも大事にしています。

 

そうしていたら時々、私のことを思い出してくれた人から楽しそうなお話をいただいて、つながっていくんですよね。人とのつながりがやっぱりすごく大事だと思います。

 

中高生の自分に伝えたい言葉

――最後に、もし亀田さんが「中高生の時の自分」に何か一つ伝えられるとしたら、今どんな言葉をかけますか?

 

えー、なんだろう。

そうだなぁ「私は好きなことをやって自由に生きてますよ、安心してね」って伝えたいですね。

 

「色々悩んだりしてたこともあるかもしれないけど、なんとかなるんだよ人生」って。

「ダメだって思ってもなんとかなるんだよ」って。

 

夢を信じてやっていれば、支えてくれて、助けてくれる人が出てきましたから。

 

――亀田さんありがとうございました!

 

(編集:北原泰幸)

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