今回は、子育てをしながら「地域貢献系起業プロデューサー」として活動する、一般社団法人moko’aの沖村舞子(おきむらまいこ)さんをご紹介します。学生時代から将来を描いていたという沖村さん。自分のやりたいことやできることがライフステージによって変化し、新たな未来を描く沖村さんの人生や価値観を伺いました。
目次
沖村さんのお仕事
――沖村さんはさまざまな肩書きでお仕事をされていますよね。具体的なお仕事の内容を伺えますか?
――まず、一般社団法人moko’aの活動について教えてください。
地域おこし協力隊時代から継続してやっている事業が3つあります。 1つめは、浅口市鴨方町の高齢者を対象におこなっている移動支援サービスのサポートです。今は地域の方々が中心となって活動していますが、一般社団法人moko’aは移動支援サービスに関するアドバイスなどをしています。 2つめは、浅口市金光町(こんこうちょう)の大谷という地域で、古い町並みにある空き店舗を活用したレンタルスペースの運営をしています。 3つめが、浅口市寄島町(よりしまちょう)という海沿いの町で、もともと畳屋さんだった空き店舗を活用して、ワーキングスペースのような形でレンタルスペースを運営しています。
――次に、mokoデザイン事務所では「講座を始める」とのことでしたが、具体的にどのような内容になりそうでしょうか?
沖村さんのこれまで
大学中退後の学びが今につながる
――法人と個人事業主では、異なるお仕事をされているのですね。今のお仕事に至る流れはどのようなものだったのでしょうか?
大学生のときに、アフリカでの小学校建設のプロジェクトに関わったんですよ。海外の材料を使って、アフリカの現地の技術と日本人のアイディアで小学校を建てるというプロジェクトです。アフリカに行ったことがきっかけで大学を中退しました。 今の日本の建築は、輸入してきた材料で輸入してきた技術を使って建物を建てることが多いんです。でも、日本には国産材も伝統構法もある。「そういうものをなぜ使わないのか」「どうしたら使えるのか」を勉強したくて、古民家再生や伝統構法について学び始めました。勉強していくうちに、日本の森林に関するさまざまな問題を知りました。自分たちが暮らしてただ生きているだけだとわからないような問題点が、いろんなところにあったと知ったんです。
23歳、個人事業主として独立
――大学中退後、どのように勉強したのですか?
講座を一緒に受けていた方からお仕事をもらえるということもあり、23歳でmokoデザイン事務所という屋号で個人事業主として独立しました。 27歳までそうした活動をしていましたが、浅口市の地域おこし協力隊として着任することになり、mokoデザイン事務所の活動を一旦ストップします。
独立してからは、古民家を巡って、古民家のお掃除のワークショップや改修、スペースの管理をしたり、古民家レストランの経営に関わったりしていましたね。
27歳、浅口市へ移住し地域課題の解決に奔走
着任時のミッションが地域課題の解決をお手伝いするというものだったんです。空き家の活用、子育て支援、教育と、地域で困っていることがあれば、幅広くお手伝いをするのがわたしの役割でした。地域おこし協力隊の任期は3年間で、3年間はお給料がもらえます。3年後にも、継続して活動ができるようにしようと、一般社団法人moko’aを立ち上げて体制を整えたという形になります。そして、2022年1月にmokoデザイン事務所も再スタートしたという流れです。
原動力は好奇心と未来を描くこと
――エネルギッシュな沖村さんの原動力はどこから湧いてくるのでしょう?
20代は「お金にならなくても、今しかできない経験を積んでおこう」とか、「気になったことには何でも首を突っ込んで、自分の視野を広げていこう」という気持ちがすごくあって。だから、いろいろな活動をしていました。あと、20代前半で自分のライフスタイルを描いていたことも大きいですね。 専門学校の授業で、「将来どんな暮らしをしたいか」「自分にとって何が大切なのか」を考える授業があったんです。独立すれば、自由に時間をコントロールできる。子どもと一緒にいたいと思えば、そういった生き方が選べる。仕事の量も調節できる。建築家は独立して事務所を構えている人が多いので、当時から独立志向があったのだと思います。学生時代から、仕事と子育てを両立している未来を描いていたんですよね。
お仕事で大切にしていること
仕事も子育ても大切にする考え方
――現在は「ママ起業家」としてお仕事をされています。家族や子どもができて、以前との違いはありますか?
1人めのときは、妊娠中から安静にしなければいけない状況でした。自分のペースで動けなくなっちゃったんですよね。今までは好奇心で思うがままに動いていたのに、それが全くできなくなるということが、正直しんどいと感じる時期もありました。 でも、自分で事業をしているから、仕事の量も時間もコントロールできているなと感じます。最初、2歳になるまで子どもを保育園に入れていなかったんです。知り合いに預けたり一時保育を利用したりしながら、子どもと一緒にいる時間をなるべく長く取るような形で生活できていたことはすごくよかったと思っています。今も「今日は仕事が落ち着いてるから、一緒に遊びに行こうか」とお休みが取れるんですよ。
――自分でコントロールできるとよいですね。
子育てでなかなか動けない時期は小学校低学年くらいまでで、限られているんです。子どもがある程度独り立ちしてくれるようになると子育てから手が離れて、自由に動いている方は結構多くいます。そう思うと、今だからできる学びもあるし、将来に向けた準備でもあるし。というふうに今の動きづらい時間をポジティブに捉えるようにしています。
地域の活動者を増やしていく
――mokoデザイン事務所で実施予定の講座は、そうしたご自身の経験があってこその発想なのでしょうか?
実際やってもなかなかお金になりにくいことや、やるまでにエネルギーが要ることも多い。でも、ママになる前に培った経験や知識、人脈を組み合わせると、意外にすんなり、やる気さえあればできたりすることもあります。なので、思いを形に変えて実現させていく人たちを増やしたいと思っています。
――他にこれから取り組もうとしていることはありますか?
そのうえで、一般社団法人moko’aやmokoデザイン事務所も、来年はもう少し動き出せるようにしていきたいですね。動き出す方向性としては、いろいろなところと連携しながら、地域活性化につながる動きを広げていきたいなと考えています。そのために一緒に協力してくれる仲間を増やしていきたいです。
――どんどん拡大していくんですね!最後に学生に向けてメッセージをお願いします。
自分だけで考えるのではなく、あとは誰かに聞いてみるのもいいと思います。それができるのは若いうち。どんどん視野を広げてほしいなと思います。
(編集:金城奈々恵)
1つは、わたしが代表理事を務める一般社団法人moko’a(もこあ)では、中間支援組織として活動をしています。岡山県浅口市を中心に、地域活動や自治体の支援をしていて、特産品のPRや情報発信などをおこなっています。
もう1つは、個人事業主としてmokoデザイン事務所という屋号で、フリーランスとして活動をしています。そちらでは、「地域に貢献する事業を立ち上げたい」「何か活動を始めたい」という人のサポートとして、講座を始めようと考えています。