相談窓口と就労支援で、弱い立場にある女性を支える

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公開日 2022.06.14

社会にある問題を様々な手法で解決しようと取り組んでいる人たちがいます。この記事では、NPO法人オカヤマビューティサミットさんが解決したい問題とその解決方法について、紐解いていきます。

 

柚木幸子さん

NPO法人オカヤマビューティサミット代表。17歳で子どもを出産し、エステの道に。7年前からNPO活動を始め、5年前からお母さんの自立を支援することで、子どもの貧困や虐待、ネグレクトなどを問題解決を目指す。ひとり親支援を始めて、現在は困窮世帯やDVの避難シェルター、24時間の相談窓口の運営を行っている。

 

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解決したい問題

不安という目に見えない貧困

 

――オカヤマビューティサミットさんが解決したい問題は何ですか?

 

見えない貧困ですね。

 

――具体的にどういうものですか?

 

まず、お金やモノがないという、物理的な貧困がありますよね。

見えない貧困は、外から見ると普通に暮らしているように見える。けども、実は心の貧困を抱えていて、サポートが必要という課題になっているなと思います。

モノがありふれたからこそ、心の貧困を抱える方も多いです。

 

――実際に、どういう心の貧困を感じている方がいらっしゃるんですか?

 

私たちはシンママ・シンパパの方に特化した公式LINEアカウントを運営していて、そこで働く意識の調査をお母さん方にしたら、半数以上の方が「自分の心身の不調で働くことに不安がある」と答えました。見えない貧困として、これは早く解決しないといけないと思いました。

 

心が弱ることで実生活が揺らぐ

 

――心身の不調って何ですか?

 

例えば、離婚問題でちょっと心が弱りがちになっているけど、頑張って仕事もするし、ワンオペで育児もする。そうすると、誰にも頼ることができないから、さらに心が弱くなりがちになって、鬱になりやすい。今度は鬱になって働く意欲が湧かなくなって、働けないっていう悪循環になっている人もいます。加えて、発達に特性があるお子さんがいるご家庭では、子どもの将来の不安を抱えたりします。

 

――見えない貧困はメンタルヘルスの問題なんでしょうか。だとすると、陥りやすい人がいるのでしょうか?

 

まず、自分で決めた道(離婚)だからと頑張り過ぎたり、他の家庭と比べたり、仕事・育児・家事がうまくいかないとできない自分を責めたり、頼ることを忘れちゃったりする人でしょうか。

 

仕組み的な話をすると、行政もサポート事業はしているんですね。「こういう悩みがあったら来てください」っていうサポートの場所があるんだけど、行政に行くことの敷居が高い。行ったら色んなこと聞かれるんじゃないかとか、個人情報を知られるのも嫌なんですよね。

あとは、相談に行きたくても、どこに相談に行ったらいいか分からなかったり、あっちこっち電話している間に手続きが面倒くさくなるお母さんも結構います。

 

仕事ができない状況に陥ってしまったとき、今はひとり親の就職を企業も頑張って支えようとしてて、厚生労働省も助成金を出しているんだけど、実際は難しい部分もあります。

例えば、同じ30歳の人でも子育てで早く帰るかもしれない人と、定時まで働ける人だったら、後者を採用してしまいますよね。そうすると、自分の背景を否定されたみたいに感じしてしまって、そこでまた心が折れてしまう。

 

――柚木さんが女性に焦点を当てられたのはなぜですか?

 

女性が笑顔だと社会も笑顔になると考えています。昔、女性は太陽でお父さんは土って言われていました。お母さんがずっと笑顔でニコニコしていると、土の養分はいっぱい育つじゃないですか。

 

私たち美容業界でよくするお話なんですけど、戦後、色んな苦しみがあったけど、女性が美を忘れない心というのはすごく大事にされていて。例えば、口紅を差すだけでも生きる力が湧いたりとか。外見を整えて頑張る力って女の人って、やっぱりなぜかすごいんですよね。そういった意味では、やっぱり女性が笑顔でいることが、子どもが笑顔に・社会が笑顔にということを理念に置いています。

 

オカヤマビューティサミットの解決方法

相談できる窓口をつくる

 

――そういう頼れる先がない方の支援、拠りどころを目標にしているのでしょうか?

 

そうですね。うちでは鎧を脱いで相談してくださいっていうことですね。

見えない貧困を持っているけども、お母さんたちは一生懸命鎧をかぶって頑張っているので、その尊厳は私たちも否定もできない。でも、ずっと鎧をかぶっておくのはしんどいから、たまには脱いで誰かに吐き出さないといけないけど、友達や仕事仲間、両親には言えないとかあったりする。なので、私たちがサポートすることは大事なことだなと思っています。

 

――具体的にどんな支援をしたら見えない貧困は無くなっていくと考えられますか?

 

物質的に言うと収入をあげる支援、つまり就労支援ですね。私たちは、エステの技術支援を自主事業と岡山市からの受託事業の2つのパターンで行っています。

岡山市からの受託事業は、市が把握しているひとり親の家庭にチラシを配布し、そこから申し込みして、働きながら学ぶものです。自主事業では、一般の人は通常料金で、ひとり親や困窮世帯の親や子どもに関しては、その半額で勉強できます。

 

あとは、心のサポート。私たちは電話やLINEでの24時間の相談窓口をやっています。シンママさんだけに限らず、何かに困ってる人は連絡できる間口にしていて、そこから必要な支援に繋げていきます。福祉サービスが必要な人、行政の手続きが必要な人、仕事の支援が必要な人、発達に特性のある子どもの支援が必要な人など、様々です。

 

今まさに困窮している場合には、子どもや自分たちの生活に必要なものを渡す支援もあります。

 

必要な支援につなげていく

 

――その人の裏にある理由や背景からしっかり見ていくっていうことですね。

 

あるお母さんから「お金に困っている」という連絡入って来て、話を聞いていると、お母さんにちょっと鬱の傾向があったりして。障がい者年金や障がい者手帳をもらうことで、少しでも家計の足しになるので、手帳を取る手続きをしてくれる連携団体さんにおつなぎしたりしました。

また、DVによる離婚問題を抱える人もいるので、離婚のサポートして、母子の手当だけでももらえるようにしたりとか。あと、生活保護を一旦受給して、まず住まいを探して、仕事や保育園も探して、生活の基盤作りを一緒につくったりとか。

 

当然、私たちだけでは全ての問題を解決できないので、連携先の団体を増やして「こういう人が来てるけどそちらで対応してもらうのは可能ですか?」と交渉して、支援をしてもらったり、方法を教えてもらったりしてます。

 

――人にもよると思うんですけど、どのくらいの頻度でコンタクトを取ってるんですか?

 

鬱の症状が出ていたりして、1年くらいつながってるお母さんもいらっしゃいます。ずーっと定期的に連絡が入ってくる。

基本的には、こっちからアクションは起こさずに、ある程度の支援が終わって「ここまでできたから、あとは自分でできるかな?」という感じ。完全にバイバイっていうわけじゃないから、何か困ったら連絡ちょうだいねと話します。

 

DVで逃げてこられた方は逆に、そこの切れ目がパシっとするんですけど、何かしらの心のサポートから入ってきてる人は、切れそうで切れないです。

 

――オカヤマビューティサミットさんとして、最終的に目指していきたい活動って何かありますか?

 

それはあんまり思ってなくて。サポートしている方が10年後、20年後に「あの時なんかあたしあんなことで何で悩んでたんだろう。ハハハハハ。」と笑えるような人生を歩んでもらえるといいですね。今すぐその人たちがどうこうなることはまず難しいんで。

 

結局はその方の人生なので、私たちがその方を一生死ぬまでサポートするってことは難しいですし。だから、一歩でも自分で歩ける人生にしてもらえるといいなとは思っております。

 

編集:森分志学

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