イベントの裏方・音響と配信を仕事にしたい学生、プロと話す

  • #動画配信
  • #好きって仕事になるの?
  • #自分の興味のままに突き進む

公開日 2022.01.13

皆さんは音楽イベントや動画配信とどのくらい接していますか?
今回は、そんな舞台やイベントを裏側から支える大人・佐藤郁也(さとういくや)さんと、舞台裏に関心をもつ高校生・ナガコウとの対談模様を記事にまとめてみました。

登場人物紹介

★ナガコウ
高校2年生。中1の頃からメディア部の放送班と写真班に入っている。動画編集も得意で、学校の開会式や始業式のオンライン配信を先生と連携して担当。

 

★サトウさん(佐藤 郁也)
OMS (おかやまメディアサポート)代表。音響、映像、配信と幅広い知識と技術を身につけて仕事をしているイベントの裏方さん。音響と配信のプロフェッショナル!

 

★シガクさん(森分 志学)
NPO法人だっぴの代表の人。聞き役なのであまり出ませんが、たまにポツリとつぶやきます。

 

音響&配信のプロに、これまでの生き方を聞いてみた

僕はイベントの音響や配信を担う裏方に興味があって、進路を考える上で実際に働いている人の話を聞いてみたかったんです。今日は本当にありがとうございます!

 

こちらこそ声をかけてくれてありがとう。ナガコウくんはいつから音響に興味持ってたんですか?

 

親が言うには小学校低学年の頃から興味を持ってたみたいです。「今からショーやりまーす!ショーやりまーす!」って家の中でショーを開いてたらしいです(笑)ラジカセにマイク挿して、ビデオカメラもまわして。

 

あー、僕と似てるかも。僕も小さい頃からやっぱり興味がありました。音楽とか映像、パソコンとか。

 

どんなことしてたんですか?

 

音楽に関しては、中学校まで合唱部のピアノ伴奏をしてました。

映像とかパソコンの方は、小5の時かな。「やってみたいっ」て言ったらおじいちゃんが「まぁ、やってみりゃええがー」ってポーンと買ってくれたんですよ。それで小6の時にはHTMLでホームページを作るようになってました。

 

それからどんな風な進路を選択したんですか?

 

大学は作陽音楽短期大学音楽専攻を選びました。

音楽専攻って言っても専門はメディアミックス。作曲してレコーディングして映像をつけて、それをyoutubeにアップ、更に自分でホームページを作って貼り付けるっていう複合的なことをする学科でした。

 

PA(Public Address=音響機材や音響機材を扱う人)という、音響もできるし、動画もできるし、フォトレタッチもできるというちょっとマルチな仕事人を目指して勉強してましたね。

 

卒業した時には音楽関係では就職ができなくて。5年間ビックカメラでサラリーマンとしてテレビ・オーディオ・エアコンを販売していました。それから個人事業主として今の仕事である『OMS (おかやまメディアサポート)』を立ち上げました。

 

 

どうしてサラリーマンを辞めて事業を立ち上げたんですか?

 

やっぱり自分のできる技術を活かした仕事がしたいと思ったからですね。

あとは、性格的な部分。僕は自分を崖っぷちに追いやらないと全然やらないタイプで、やってもやらなくてもお金をもらえるサラリーマンじゃモチベーションが上がりきらない部分があった。

 

だから、自分でやった方がいいなって思って個人で立ち上げることにしました。

 

それでイベントの音響をはじめたんですか?

 

いや、別の分野の仕事からでした。まず高校や大学ってパソコンがいっぱい置いてある教室ってあるでしょ?あのパソコンの設置・セットアップを請け負いました。結構それも今の仕事につながっていて、オンラインネットワークに関してはその時勉強させてもらいましたね。

 

次に、レコーディングができる設備、防音室、機材を用意して音楽教室を開きました。ボイストレーニングやピアノだけじゃなく、DTM(Desk Top Music)やボーカロイドみたいなパソコンを使っての作曲を教え始めました。

そしたら生徒数がめちゃくちゃ増えたので、もう少し広い場所を借りることにして。3年前に表町でライブハウスと音楽教室を一緒にした空間をつくったんです。

 

で、結構うまく行ってたんですけど、コロナ禍でライブもできなければ人も呼べないって状態になってしまったんですよ。もう本当に赤字続き。

そんな時、ちょうど自分は映像も強いし、ネットワークにも強いかったので、周りの詳しい仲間たちと『配信』にチャレンジしてみることにしました。高額な機材が必要だけど収入は低下してるし、賭けでしたね。

 

僕も学校行事のオンライン配信を担当してるので、配信の仕事めっちゃ興味あります。どんなことをしているんですか?

 

 

地元の市民会館でのミュージカルを映像配信したり、演劇の配信をしたり、講演会やフォーラムのような配信もめちゃくちゃ多いですね。週2・3回配信現場に行ってます。大学の学祭も全部配信に切り替わっていたりするので、今は忙しくて人が足りない状況ですね。

 

配信って現場でも作業だけじゃなくて、編集の作業もするからかなり大変なんじゃないですか?

 

そう。求められるスキルも多くて、難易度も高いです。音の良し悪しを理解した上で集音して、映像にも熟知してないとできない。ネットワーク接続やパソコンの地味な作業も多くて業務量がホント多くて、しんどいんですよ。おっしゃる通りで動画編集は持ち帰ってするので、寝てる時間とかほとんどないくらい。

 

でも、楽しくて仕方ないんですよ。自分の手で配信して、それでどんどん世の中が変わって、みんなが「配信ってすごいね。こんなことできるんだ」って言ってくれるようなことをやりたいなって、ずっと走り続けてる感じです。

 

興味がないこと、得意でないこととどう付き合ってきたのか

僕は音響や配信に興味があって、本当はそのことだけを突き詰めてやりたいんです。でも、学校や生活の中ではそれ以外のことや得意ではないこともしなくちゃいけない。そのことに結構悩んでて・・・。

学校で学んだことでイベント運営に携わる中で、こんなことしてたから役立ったっていう事例ってありますか?

 

それって、仕事してたら数学が役に立ったとか、そういうレベルの話でいいんですか?

 

そんなレベルの話です。正直、今の勉強が何につながるのか全然わからなくて。
「配信してたら、急に数式が出てきて問題が解決した!」みたいなことってあるのかなーって思って。

 

そういう直接的なことは正直言ってないなぁ。僕は漢字が苦手で、今も中学生レベルの漢字しか書けないけど、仕事では使ってないし。100回書いても覚えられなかったなぁ。ただ、音楽は1回聴いたら、もう大体弾けるんですよ。使ってる脳の場所が違うのか何なのかわからないんですけど。

 

でも、学んでいることの諸々が未来の自分のプラスになるのかを判断するってやっぱりすごく難しいですよね。

 

 

だからといって、それだけやっていると、一歩ずれたら他に何にもできなくて人生の選択肢がなくていわゆる「つぶしがきかない」という状態になる。だから、特に今やりたいこと、強く「コレだ!」と思うものがない人は色んなものに触れて幅広くしてた方が絶対いいですよね。

 

サトウさんはどうだったんですか?

 

僕は・・・小さいときから興味がはっきりしてたから。ホームページ作ってたり音楽してる方が楽しくて、親にめちゃくちゃ勉強しなさいって言われたけどやらなかったなぁ(笑)

 

そういう何かへの興味が強くて尖っているタイプも社会で求められていると思うよ。
「俺はここが得意だ」という絶対的な強みをそれぞれ持っている人達でチームを組んでするのが会社や組織だし、その仕事が他の人にできることだったら僕に頼む必要もないんですよね。

 

僕は自分の興味のままに突き進んで、今は音響と映像が得意で最高の配信をする人だって言われるようになろうとしています。その分野で困ったことがあったら、その人の顔が浮かぶって状態になれたらいいよね。

 

じゃあ興味があることが決まっているタイプは、苦手な勉強は・・・

 

でも、興味あることをやっていて、必要になったものはその時に勉強してきました。仕事でも「○○できる?」って言われたら、できなくても「できます!」って言ってめちゃくちゃ勉強します。英語も海外でも仕事がしたいから好きになって、ちょっと得意なんですよ。

 

だから、僕のやりたいことにつながっているってわかったら、その時にめっちゃやりますよ。

 

例えばサトウさんがこれから歩んでいく中で数学の壁がぶち当たったら、それはそれでお好きになって…

 

たぶん大好きになると思いますよ。もう毎日数学数学ってやってるかもしれないです。

 

なるほど。全部自分の道の中で考えてるんですね。

 

じゃあ、僕が英語を好きになるなら、海外で音響スタッフとして活躍したいという目標を持つってことですね。

 

自分が憧れている人とか自分の彼女が外国人とかやったら真っ先に英語勉強するでしょうね(笑)

 

コロナ禍で生まれた『配信』という仕事

 

コロナ禍のイベント開催の在り方は大きく変わったと思うんですが、特に変わったなと思う点とそこへの本音を伺いたいです。

 

ミュージカルは劇場で行われますよね。そこにお客さんがいて、そのイベントを支える一音響スタッフとして僕は働いていました。

 

 

配信を担当するということは、そのオンライン劇場の運営責任者をするということで、立ち位置が以前とは変わったと感じています。

配信は人が集まらないから安全ですが、エンタメの良さは生で見る部分がやはり大きい。生でないならやらない方がいいのか、それとも配信ならではの演出で魅力を引き出すのか。そういうことを主催者と一緒に考える立場になりました。

 

インターネット空間の演出家やプロデューサーみたいな立ち位置なんですね。

 

緊急事態宣言当時は悩みの連続でした。みんなが経験していない試みで、劇場をお客さんに開放できないので、ほとんど配信のクオリティで出来が決まってしまう。だから、責任者の方や出演者の方と何度も話をして、リアルタイムにするか収録・編集して出すかといった所から演出まで話し合いました。

今ではだいぶスタンダードも定まってきましたが、この『配信』という仕事は今作られているところで、もう一つの職業であり、需要もめちゃくちゃあると思ってます。

 

サトウさんはプロとしてプロデューサーさんや、スタッフさん達と関わっていく上で大切にしていることってどんなことなんですか?

 

やっぱり本音をしゃべれる関係にしておくっていうことですね。

 

 

そういう信頼関係を築いていくためには、「自分はこうしたい!」っていう思いをぶつけられないと作れないんですよ。どこまで本音をぶつけ合えるかだと思うんです。ケンカしたっていいんですよ。
そういう話ができる人とだから、ものすごくクリエイティブな面白いものが作り上げられるんだと思います。

 

なるほど・・・。

 

もちろんケンカするばかりではなくて、仲良くなろうと努力もしますよ。

たとえば、そのプロデューサーさんが自分には全く興味のないゴルフをむちゃくちゃ好きな人だったら、ゴルフをとことん勉強して一緒に行ってみようと思いますね。

 

サトウさんの中ではそうやって興味のないことが興味のある事に変わっていくんですね。

 

そうですね。元々自分にとって興味のないことをするメリットっていうのは、人とのつながりの面が大きいかもしれません。

 

自分の周りって類は友を呼ぶというか、自分と得意なことがかぶっている人が多いから、たまに嫌いな数学や国語に挑戦してみると、この先生めっちゃ詳しいな!なんて新しい発見があります。

そうして、人生の中で困った時に助けてくれる人、頼れる人をたくさん知っておくというのは大事なことだと思います。

 

今日は本当にありがとうございました!これからの自分の人生に直接関係のある話ばっかりさせてもらえて、本当によかったです。

これからいろいろあると思うんですけど、自分が本気になれる、本当に自分が楽しめることをするために、今日言われたことを頭の隅に置いて1本1本頑張ります。

 

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