手話がついているテレビ放送があります。一般的には手話放送はまだ数少ないですが、岡山放送(OHK)では手話放送が増えているのです。そこには、情報アクセシビリティ推進部という存在が!情報から誰一人取り残さない社会を目指すアイデアが世界から注目を集めてます。
手話放送を牽引するアナウンサー兼情報アクセシビリティ推進部部長の篠田吉央さんに、大学生の松田さんが2回に渡ってお話をお伺いさせてもらいました。
目次
登場人物紹介


大学で手話サークルに入っている。岡山放送(OHK)さんが手話放送に力を入れていて注目されていることを知り、取材に臨む。
世界から賞賛された「岡山モデル」
ろう者と番組をつくるための手話放送委員会






手話放送委員会があったからこそ生まれたニュースの一つが、コロナ禍のマスクです。「今日の会議なんかうまくいかないな」と思った時、みんなマスクをしていた。これでは、口の形や表情が読み取れません。同じように、手話通訳者がマスクをしていると手話通訳が届きにくいことが分かり、全国に先駆けてこれをニュースにしました。


これが評判良く、今では岡山県知事の記者会見でも導入されています。ろう者と一緒に番組作りをしているから気づける、当事者の視点で切り取れる特長があります。

記者会見に遠隔で手話通訳を
手話協力として企業協賛を集める




手話実況は岡山放送の真骨頂

こうしたスポーツ実況を手話でできないかと考え、私たちは「OHK 手話実況アカデミー」を立ち上げました。全国からろう者を集めてアナウンスの研修を行い、手話実況ができるろう者を育てています。


そこで、「記録への挑戦や人間ドラマを伝えたら面白い。試しに手話をつけてみよう」と提案しました。あの時の彼らの喜んでいる顔は忘れられません。美味しいものを食べたり、おしゃれな服を着てるのと同じように、ろう者がスポーツを楽しめる世界を作りたいと思いました。

OHK手話実況アカデミーでの勉強会

あらゆる人のためのテレビ局に
聞こえる・聞こえない関係なく、一緒に楽しむために

「新商品が出ました」「今、桜が綺麗に咲いてます」と、みんなで楽しめる情報に、みんなが触れられるようにすることがローカルメディアとしての重要な役割だと思っています。必要な地域の情報を、必要な人たちに丁寧に届ける会社でありたいと。






*コミュニティペーパー:地域紙やフリーペーパーなど、特定の地域やコミュニティを対象に発行される無料の新聞・冊子
情報が届かない人のために一生懸命届けようとすると、結果的に全ての人につながっていく。テレビ局本来の意義に還元されることを体感しています。だから「手話放送部」ではなく「情報アクセシビリティ推進部」なのです。
地方から、世界のどこにもないものを生み出す


仕事をする時、どうしても大きなことをしたいと思いがちです。華やかな芸能人と一緒にスタジオに出るような都会のテレビ局の世界と、地方は少し違います。逆に言うと、地方だからの視点で、世界のどこにもないものを生み出して、社会に役立てる可能性があるわけです。こんなに面白いことはない。


私はアナウンサーになりたくてテレビ局に入りました。その根本は「伝えることがしたい」なのです。今は音のない世界で伝えていますが、音声を使わないとアナウンスではないのかというと、そうではないと思います。つまり、「情報を届ける」アナウンサーという気持ちは変わらないわけです。

(執筆:森分志学)



岡山放送のアナウンサーであり、情報アクセシビリティ推進部部長も務める。アナウンサーの仕事だけでなく、様々な手話表現を追求した番組づくりをプロデュースしている。