英語や海外に興味がある人なら、きっと一度は「英語を使う仕事って何があるんだろう、どうやってなるんだろう」と思ったことがあるはず。
でも、「ネットで調べてみてもなんだかピンとこない……」と悩む人も多いのではないでしょうか?自分のやりたいことを見つけ仕事にするには、一体どうすればいいのでしょう。
今回は国際協力に関心を持つ高校生のるなさんが、青年海外協力隊での活動をきっかけに「jam tun(ジャムタン)」というアフリカ布のアパレルブランドを岡山県で立ち上げた田賀朋子(たが ともこ)さんにお話を聞いてきてくれました。
現在のユニークな仕事や、そこに行き着くまでの田賀さんの学生時代からの道のり、きっとヒントになりますよ♪
目次
田賀さんのお仕事
★田賀朋子(たが ともこ)さん
商品を通して優しいつながりをつくりたい
そのほかにも、セネガルのことや事業について講演をしたり、生地の端切れを使ったワークショップを開いたりすることもあります。
投棄されたごみには布が多く、その生地はアフリカ柄の綺麗なものばかりでした。「こんな魅力的な布を捨ててしまうのはもったいない」と思った私は、村の仕立て屋さんたちと一緒に布の端切れを使ったものづくりを始めたんです。今思えば、それが「jam tun」の始まりですね。
そんな状態でしたから、「このままセネガルの人たちとの関係を途切れさせたくない」「彼らとつながり、彼らのプラスになるようなことがしたい」という思いは募りました。そうして悶々としていたある日、セネガルの綺麗な生地のことを思い出して、あるアイディアが降りてきました。 これが今の「jam tun」のアイディアです。 「もしこれがビジネスとして成り立てば、セネガルで関わってくれる人の収入にもなる。それに、日本にもセネガルをはじめとするアフリカの魅力を伝えられる。そして私もセネガルとつながっていける…これっていいことしかない!」 可能性を感じた私は、現在の活動を始めたんです。
「村の仕立て屋さんに現地の布を使って素敵な製品を作ってもらい、日本に紹介するというのはどうだろう」
対等なパートナーでありたいので、セネガルの人たちに縫製を依頼した製品は「jam tun」がすべて買い取る形をとっています。つまり、売れても売れなくてもセネガルの人たちに負担は生じない仕組みにしています。 そして、その大切な製品を価値を感じてくださる方のところに届けるのも、私の責任だと思っています。
商品を「いいな」と思って買うということは、国籍や住んでいる場所、宗教など関係なく、対等な気持ちでつながるということです。それは結果として、セネガルや遠くの世界を自分事としてより身近に感じることにつながります。 そんなつながりを増やすことで、「この国のこと、知ってる」と好意的に振る舞う人が増えてくれたら嬉しいです。
私が楽しめば、周りにも伝わる
私が帰国した時、現地での生活を心配してくれていた人達が多く、アフリカの生活にネガティブなイメージを持っている人が多いことに気が付きました。
そうした印象を払拭し、ポジティブな魅力を伝えたいと「アフリカ・セネガルと日本をわくわくでつなぐ」というキャッチフレーズのもと活動を始めたんです。
人にわくわくを伝えるためには、まず自分が楽しむことが必要ですよね。私が無理して活動していると、セネガルではなく必死で活動する私に目が向いてしまいますから。セネガルに関心を持ってもらうためにも、私自身が楽しむことを心がけています。
でも私は、自分が欲しいもの・着たいものという基準で商品を開発しています。自分が心からおすすめできないものは結局売れないし、たとえ売れたとしても楽しんで事業を続けられません。 なので、無理はせず「自分が楽しめるかどうか」を考えながら活動をしています。
田賀さんのこれまで
英語を使って何がしたいか悩む
そんなある時、学校からユニセフのチラシが配られ、世界には貧しい子どもたちが生活する国があることを知りました。「日本はすごく恵まれていて、貧しい環境で暮らす人がたくさんいる」という事実に衝撃を受けたのを覚えています。 その頃から少しずつ、世界の不平等を改善する仕事につきたいなと思うようになっていきました。
ただ、その頃から英語は好きで、一番の得意科目でした。高校の夏休みには、夏季留学研修に参加して2週間ほどイギリスに行ったこともあります。
でもある時父に「英語の文法を勉強したいの?それとも英語を使った仕事をしたいの?」と問われ、ハッとしました。 私は英語は好きだけど、学問としての語学を突き詰めたいわけではなく、かといって通訳のように専門的に英語を使う仕事に就きたいわけでもなくて。 「なんで私は英語が好きなんだろう?英語を使って何がしたいんだろう?」 そうやって深く考えていくうちに、私は異なる言語を話して人と関わったり、異文化を知ったりすることに興味があったのだと気づいたんです。それで、異文化理解系の大学を調べ始めました。
就職ではなく海外へ行こうと決意
そこで、イギリスの大学院に進学し、国際開発学を学ぶことに決めたんです。周りに就職以外の選択をする人は少なく、大きな決断でした。「自分が本当に興味を持っていることは何だろう?」と考え直すきっかけにもなった人生のターニングポイントの一つですね。
この協力隊に応募したのも、大きなターニングポイントだったと思います。
例えば、他国からの物品・食料品の支援も、身分の高い人が先に持って行ってしまうことで平等に分配されず、支援がうまく作用しないという問題が頻繁に起こっていたんです。支援団体の活動が、かえって地域の格差拡大を助長する可能性があるということを知り、衝撃でしたね。 そうした裏の一面を目の当たりにして「自分はこのまま憧れの道に進んでいいのだろうか」という迷いが生まれてきました。 ですが、そのまま2年の任期は終わり、国際協力のあり方にもモヤモヤとした思いを抱えたまま帰国の日を迎えることになってしまいました。
モヤモヤを貫き、jam tun 創業へ
そうして過ごす中で、ありがたいことに地元の役場の方から声をかけていただき、臨時職員として働くことになりました。でも、その仕事の間もずっと悩んでいましたね。 「自分がこうしている間も国際間の不平等や貧困は存在している」 「国連という関わり方以外に自分なりにできるアプローチはないのだろうか」 そう考えながらも、行動する勇気は出せなくて。 そんな中で生まれてきたのが、先ほどお話しした「jam tun」のアイディアです。 「やっぱりセネガルの人とつながり続けたいし、自分なりにできることをしたい!」と、そのアイディアに賭けてみることにしたんです。
また、コンテストに出場していたのは、既に起業してそれ一本で活動している人たちばかりで、自分のように別の仕事をしながら活動している人はいなかったんです。他の出場者に背中を押され「自分もこの仕事一本に絞ってみよう」と思えるようになりました。
そこから活動を本格化させ、平日の販売会や講演会を実施して、今までできなかったことにも挑戦し始めました。
もう一つは、イベント出店ですね。二度目の出店で活動を取材をしてくださる方が現れ、運よく新聞に取り上げていただいたんです。そこから少しずつ知ってもらえる人が増えたなと思います。
若者へのメッセージ
もし今興味のあることがあるなら、インターネットで調べたりSNSで人とつながったりして、かたっぱしから挑戦してほしいなと思います。
また、やりたいことが明確に決まっていなくても、「これが好きだな」とか「こんなことやってみたいな」という軽い気持ちで、いろいろなことをつまみ食いしてみてください。その中で「もっと深めたい」と思える何かが見つかるかもしれませんし、大事な経験だったと後から気づくことになるかもしれません。
(編集:有澤 可菜)