学校や工場に「電気が流れる」という当たり前を・東邦電気産業株式会社

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公開日 2025.09.06

電気って、不思議な存在だと思いませんか?生活のありとあらゆるところにあるけれど、私達の目には見えない。でも、その流れを作る設備が、建物の中に必ずあるーー。

 

今回はそんな「建物の電気設備工事」を行う東邦電気産業株式会社にお話を伺ってきました。家電の修理販売でも、設備点検でもない、当たり前の電気の流れを作る会社のお話、ぜひご覧ください。世の中の仕組みが、ちょっと感じられるようになるはずですよ。

文系でも社会を支える電気を扱える!教育に力を入れる東邦電気産業

 

★佐伯 隆左(さえき りゅうさ)さん
専務取締役。ホテル勤務を経て2000年入社。2024年7月より現職。趣味はゴルフ。

 

★皆木 悠樹(みなき ゆうき)さん
岡山作業所主任。2020年入社。社員旅行に釣竿を持参するほどの釣り好き。モットー「楽するために努力する」

 

★井野川くん

岡山県内の大学に在学中の大学生。NPO法人だっぴのインターン生として10月から参加、企業取材に挑戦中。

 

当たり前の電気の中枢は、見えないところに

まずはじめに、東邦電気産業さんが取り組んでいる事業について教えてください。

 

一般の方や学生さんには「電気屋」というのはちょっとわかりづらいですよね。弊社は「電気工事」と「設備工事」が主な仕事で、建物などを作るときに必要な電気や水道関係の工事の設計や施工管理を行っています。

 

学校で生活していると、スイッチを入れたら灯りがつき、蛇口をひねったら水が出ますよね。それがごく当たり前にできるように設計し、安定的に供給できる仕組みを作るのが私達の仕事です。

建物の中で電気が使える、そんな当たり前を支える仕事なんですね。

 

はい。特に、使い勝手が良く省エネルギーな仕組みを作れるよう、お客様と共に「話し合って作り上げていく」というところに、私達の強みはあります。

 

請け負う建物やお客様の特徴などはあるのでしょうか?

 

さまざまなお客様がいらっしゃいますが、主要なお取引先として大手半導体メーカー様がいるのが大きな特徴の一つです。その工場や研究所の周りには必ず営業所を設けています。

 

もう一つは、学校関係の建物を多く請け負っていることですね。私達は本社が京都にありますが、勢いのある私立大学などの学校向けの工事の営業活動に取り組み、成果をあげています。

 

大学などの建設にも関わっているのですね!ちなみに、建物内のどんなところに御社の仕事が見えますか?

 

実は・・・私達の手がけている仕事の大部分は、みなさんの目につかないところにあるんです。学校や工場というのは、太い電線を通して110,000ボルト〜6,000ボルトもの電気を引いてきています。みなさんがスマホを充電するときに使っているのは100ボルトですから、非常に高い電圧であることがわかっていただけると思います。

 

この電気はそのままでは使えないので、「変圧器」と呼ばれる装置で200ボルトや100ボルトといった低い電圧に変換してから、各部屋に分配していく仕組みになっています。その、電気の変圧と分配を行う中枢部分が、私達が手がける工事の大半なのです。それらは大抵みなさんが目にしないようなところにあるんですよ。

 

確かにそういう設備はあまり目にした記憶がありませんでした・・・!

 

私達が立てる工事の計画はそれだけではなく、照明器具やモニター、無線LANなどの比較的目につく機材の選定なども行っています。ですので、そうしたところから電気の流れと私達の存在をイメージしてもらえたら嬉しいです。

 

「見えない電気」を学ぶ、東邦カレッジ開校へ

岡山作業所に設置されている太陽光パネル

今後力を入れていきたい取り組みには、どのようなものがありますか?

 

大きくは二つ、CO²削減と少子高齢化で低下する労働力を補う取り組みです。

 

前者については、大企業などでも盛んに行われています。私達も太陽光パネルの活用・設置を進めていて、多くの電力を使用する営業所から順番に太陽光パネルをつけています。その一番目が岡山作業所でした。

 

従来太陽光パネルは1枚26kgぐらいの分厚く重たいものだったのですが、岡山のものは薄型で1枚6kg、約4分の1の重さのものです。こうした新しい製品をまず社屋で使ってみた上で、話題にしながらお薦めしていきたいと考えています。

 

発電するエネルギー量に違いはないのですか?

 

メーカーによって多少違いますが、そこまで大きな違いはありません。では、なぜ自社で試す必要があるかというと、まだ開発されたばかりで使用実績が少なく、耐久性などが不安視される部分があるからなのです。

 

もう一つの労働力を補う取り組みというのは?

 

いわゆる「団塊の世代」は非常に人数が多く、建設業でも多くの人が高い技術力で社会を支えてきました。しかし現在、建設業で働く約470万人のうち、29歳以下の若手は50万人ほどしかおらず、55歳以上のベテランは160万人以上います。若い世代は入社時点でまだ十分な技術を持っていないため、ベテランが退職していくと人口比以上に労働力が減ってしまいます。それが、日本社会が置かれている現状です。

 

そこで弊社では、今まで5人でしてきたことを1人でできるようにするための自動化やAI活用の促進、そして、若い世代に向けた教育システムの整備に力を入れています。

 

若手に向けた教育、気になります。

新人教育の様子

これは私の持論なのですが、電気は「目で見えない」というところが一番難しいのです。水は蛇口をひねって出なければ「あ、水が来ていないな」と一目でわかりますし、空調や暖房の風も、直接は見えませんが風の力とそれによる物体の揺れで、存在が感じられます。しかし、電気は見えませんし、危険ですから「お、ビリビリくるな」と触って存在を確かめることができないのです。

 

このイメージするのが難しい「電気」を、文系出身者でもイチから学んで理解できる新人研修と現場トレーニングを弊社では用意しています。

 

全く電気に関する知識がない人でも大丈夫なんですか?

 

実は、私自身も弊社に入社する前はホテルマンで、電気の知識は全く持っていませんでした。弊社顧問も、非常に高い技術力と知識を持っていますが、染め物屋出身の中途社員です。弊社では、理工学部や電気電子系出身者の方が少ないかもしれません。

 

私の部下も法学部や経済学部出身者です。ですから、その辺りは全く心配いりません。もちろん本人の意欲は大きいですが、弊社では「育てる人を育てる風土を作る」ことを大切に、成長できる環境を整えていますから。

 

毎年4名から5名の新卒社員が入社し、定着率も非常に高く、若手教育には自信を持っています。

 

そうなんですね。てっきり理系の人が多いのだと思っていました、ちなみに何か特徴的なカリキュラムはありますか?

 

『東邦カレッジ』という社内大学が来年開校予定です。これは、2024年からコンサル会社と連携して継続して準備してきたもので、私と同世代の社歴の長い社員達が知見を持ち寄りカリキュラムを作り上げています。

 

単なる電気の専門知識に留まらず、実際の現場で「こんなことも知らんのか!」とお叱りをいただいた私達の経験から必要だと思われる知見、実際の仕事の進め方まで加えた実践的な内容になる予定です。

 

イチから電気設備を作る皆木さんと「コミュニケーション」

最初から最後まで、相談できる環境で完走する

ここからは皆木さんのキャリアについてお話伺いたいと思っています。まず、皆木さんが担当している仕事について教えてください。

 

私は、半導体メーカーの工場の電気工事の施工管理、設計、金額の見積もり作成を主に担当しています。お客様との打ち合わせで「こんなものが欲しい」という要望をいただき、こちらからも「これはいかがでしょう」という提案もします。実際に工事を行うのは他の業者になるので、その担当者とお話して設備の詳しい設置場所を説明したり、工事に必要な図面を書いたりもします。

 

なので、プロジェクトの最初から最後まで、一通り全てに関わります。

 

皆木さんは新卒で入社されたのですか?

 

いえ、中途入社です。もともと同じ電気関係の仕事をしていたことがあるのですが、領域としては設備点検など「直す」仕事でした。その後全く別の業界を経験して、改めて「直すのではなく、新しく作る電気の仕事をしてみたい」と思ったのが、入社のきっかけです。

 

東邦電気産業さんは人材育成に力を入れているというお話がありましたが、そこについては実際どうでしたか?

 

新人教育を二ヶ月と少し、みっちり受けさせてもらいました。未経験の人よりは期間が短かったのですが、全く知らなかった工事関係の部分もイチから勉強できて本当によかったです。

 

いきなり現場に放り出されるようなことはなく、段々と仕事を任せてもらう中で、長く在籍している先輩に教えてもらうことができたので、徐々に成長することができました。

 

現在は、一人でプロジェクトを担当しているのですか?

 

はい。ただ、一口に電気工事といっても「コンセントを一つ増やしてください」という規模の小さなものから、工場の1階部分を丸ごと作るような大規模なものまであります。そうした大きな規模のものになると担当者は複数人になり、工事期間も長くなるので業者を含めたコミュニケーションの量がかなり多くなりますね。

 

どういったところが仕事のモチベーションになっていますか?

 

大きなプロジェクトを任せてもらうと、途中でいろんな壁や分からないことに突き当たります。そうしたとき、いろんな人に相談して教えてもらいながらプロジェクトの最後までこぎつけて得る達成感が、モチベーションです。

 

みんなと一緒に物を作って完成するのを見るのは、やはり達成感がありますので。

 

お客様からの声が励みになることもありますか?

 

そうですね。お客様の相談に対して「ここをもうちょっと変えた方が良いのでは?」と提案することがありますが、それが気に入ってもらって「使って便利だったよ」という声をいただくのは嬉しいですね。

 

若手に必要な「6割考えて相談する」

現在の仕事をする上で、特に必要になる能力は何ですか?

 

コミュニケーション力ですね。私達の仕事は、お客様はもちろん、現場の業者の方々とのやり取りもとても多いですし、プロジェクトが大きくなったら他の業者とも連携する必要があります。そういう「コミュニケーションありき」の仕事なので、やはり話をするのが上手な人が活躍しますね。

 

お客様と話をする上で、皆木さんは何か大事にしていることはありますか?

 

私達は電気の専門知識を持った専門家なので、話の中でお客様の意図を汲み取っていくことを大事にしています。

 

自分は人の気持ちを汲み取るのがちょっと苦手なんですけど、どうしたら気持ちを汲み取れると思いますか?

 

第一は、「自分がこう話してもらったら話しやすい」「自分がしてもらったら嬉しいな」という感覚をベースにして考えてみると良いと思います。そうしているうちに、「多分こういうことを話したいのかな」と伝わってくるようになりますよ。

 

なるほど。会社の中でコミュニケーションを取る上で大事なことはどんなところでしょう?

 

一旦自分で考えてから相談することが大事だと思っています。プロジェクトの中で、絶対分からないことは出てきますが、そのときにすぐ聞きたい気持ちをちょっとだけ飲み込んでみてください。分からないことをすぐ聞き返してばかりいると「自分で本当に考えたのか?」と相手は感じてしまいますから。

 

ちなみに、皆木さんのチームに入ってくるならどんな若手がいいですか?

 

初めてだったらわからないことばかりなので、相談してくれる人がいいですね。たださっきの話にもつながりますが、自分で考えることも大事です。

 

とはいえ、自分で考えたところで結局分からないので、我慢しすぎず、「考えたけど分かりませんでした」と言える人、個人的には「6割考えたら相談する」ぐらいの人がいいなと思います。

 

私自身も一度自分で考えて、詰まったところは教えてもらって、それを何度も繰り返しながら成長してきました。

 

勉強になります!

 

先輩からのメッセージ「今は勉強の仕方を学んで」

これから就活していく僕たちへのアドバイスをお願いできますか?

 

そうですね・・・学生時代は教えてもらう機会がたくさんありますよね。この中で「勉強の仕方」をしっかり身につけておいた方がいいと思います。「これは学生のうちしか学べなかったな」と社会人になってから感じました。

 

卒業した後でも資格が必要になったら、自分で勉強する必要があります。いざやろうと思っても、自分なりの勉強の仕方が身についていないとお手上げになってしまうと思うので。
あとは、好きなことをする時間は今しかないので、ほどほどに遊んでもらったら(笑)。

 

社会人になってから大事になる力は何だと思いますか?

 

気持ちを切り替える力でしょうか。仕事をしていると、どれだけ考えてもつまずく、失敗する場面が必ずあります。そんなとき、ズルズル引きずっていてもいいことはないので、自分で切り替えてリフレッシュする趣味や方法があれば、壁も楽しく乗り越えていけると思います。

 

辛いことは当然ありますから、そういうものを楽しく乗り越えられるようにしていくといいですよ。

 

リフレッシュになる何か・・・今から探してみます。皆木さん、佐伯専務、今日は本当にありがとうございました!

 (編集:北原 泰幸)

 

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