やさしい運転で有機物の循環をつくる・平松運輸

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公開日 2023.04.04

普段生活する中でも目にする運送トラック。ただモノを運ぶだけかと思ったら大間違い。先人の知恵を借りながら事業を生み出し、社会に貢献する姿がそこにはありました。

今回は、岡山県の運送業・株式会社平松運輸で働く代表取締役社長の平松敬史さんと専務の平松徳子さんに、大学生の安達さんがお話を伺いました。

 

企業活動を深掘りしてみる

様々なモノを運送する

――平松運輸さんはどのような事業をされているのですか?

 

主に、大型トラックで様々な製品や産廃物などを運送する仕事をしています。

 

――製品以外にも、生コンクリートも運搬されているそうですが、生コンクリートはどこからどこに運ぶのですか

 

まず、粉の状態のセメントが各プラント工場に運ばれてきます。それを砂や砕石と混ぜて、水を添加して、種類ごとに決められた強度のコンクリートをつくります。それを生コン車に積んで運びます。運送先は、例えば、橋の橋脚やトンネル、ビルなどの工事現場など。今は個人宅の基礎部分は生コンクリートですね。

生コンクリートは時間が経つと硬化してくるので、運搬にかけられる時間に制限があるんです。

 

――あとは、生乳運搬もされているんですね。

 

はい。牧場で搾った生乳を乳業メーカーまで届ける仕事です。4℃ぐらいを保って配達します。

 

 

モットーはやさしい運転

――運ぶものがたくさんありますが、平松運輸さんに仕事を頼むお客さんはどのように増えているのですか?

 

運転手や作業員を含めて、任せて安心いう評価をいただき、口コミで広がっています。大企業案件の場合は、商社さんが間に入る場合もあり、商社からの評価も高ければ「次の仕事も平松で頼もうか」と依頼がきます。その信頼得るために最初は大変でした。

 

――信頼を勝ち取っていったのですね。具体的にどういう点が評価されているのですか?

 

例えば、廃棄物の場合は「こぼさない」「飛散させない」「匂いをさせない」などの評価項目があるのですが、その点で評価されていると思います。

 

――なるほど。ドライバーの方の育成や訓練が行き届いているからこそということでしょうか。

 

そうですね。運転手の力によるところが大きいです。

 

――モットーとされている「やさしい運転」について教えてください

 

例えば、法定速度40km/hの道路をきちんと40km/hで走る高齢ドライバーが増えてます。この人たちを追い立てる運転手さんもいるわけですが、私たちは少し車間距離を開けて守りながら走る運転を選択しよう、という意味での「やさしい運転」です。初心者の運転手さんを追い立てるような運転がうちで絶対ないように、弱者を守る運転ができれば荷物も必然的に痛まないですしね。

 

やさしい運転のモットーは制服にも

 

運送だけじゃない!平松運輸のお仕事

――物流代行サービスという事業もされているんですね。

 

自動車部品メーカーさんの倉庫に人員を派遣して、例えば「10時着便には■■■の部品を〇個収める」といった、部品の運搬に必要な仕分けなどを請け負っています。

 

――就労コンサルタントの事業もされていると聞きました。

 

支援学校の子どもたちに2時間程度の実習をしています。子どもによって特性が全く違うので、その子が50年後どう生きてほしいかを考えて実習を行います。その子が力を発揮できるような場をつくり、結果的に就労にも良い影響があればよいという意識で行っています。

 

――他にはどのようなお仕事をされていますか?

 

貿易商社の仕事もしています。例えば、ベトナムでは堆肥を欲しがっていて、日本の畜産農家から出た堆肥をベトナムへ運びます。一方、日本の畜産業の方は飼料を欲しがってるので、ベトナムの大農園で飼料作ってもらい、その飼料を輸入する。日本の畜産から出た堆肥が、ベトナムの農園で使われ、その農園でつくられた飼料が日本の家畜農家で使われるという「有機物の循環」がグローバルでできるわけです。

今までは、どんどん飼料を輸入して日本は富栄養化するという一方通行でしたが、有機物の循環がグローバルな国際社会を通して生まれる。人間も有機物のなれの果てですから。笑

 

先人の知恵を掘り起こす

最近では、下水汚泥から石油を作る技術も開発されそうです。大江戸八百八町では、野壺(のつぼ)という、ふん尿を貯蔵して下肥(しもごえ)という堆肥にするための培養槽がありました。その堆肥でできた野菜を今度は大江戸八百八町に食料として提供する、小さい循環です。

 

そういう先人の知恵はたくさんあるんです。例えば、炭焼き。1人の炭焼き師が15ヶ所も山を持っていて、1年ごとに山1ヶ所で剪定してるんです。15年経った16年目に元の山に帰ってきたら、切った木の切り口から3本ぐらい枝が出て、それまでの3倍の原料が供給できる山になっている。だからずっと15ヶ所。今で言うところのカーボンニュートラルがもう行われていたんですよ。

 

――HPにも自然や木のビジュアルがあったので、私の中で少し繋がりました。

 

もう一つ、生コンの話をしますと、ギリシャ・ローマ時代に作られたコンクリートで作られた建物は2000年もつんですよ。これについて最近、使われている生石灰がひび割れて砕けたら、そこからまた再生してくると解明されました。先人の知恵を掘り起こす時代かなと考えています。

 

――油化プラントというものも見つけたのですが、これは何でしょうか?

 

油化プラントはグループ会社のヒラマツ・プロダクトでやっているプラント技術です。熱分解の構造なんですが、これが炭焼きと一緒の原理なんです。

有機物を飛ばして炭素だけ残るんです。石油由来の合成樹脂を熱分解(炭化)すると、合成するときに使われた含量しかほぼ残らないんです。つまり、有機物を熱分解するとガスと油になり、出てきたガスを冷やせば原油ができるんです。この技術は都市鉱山で使われていたりします。太陽光パネルを熱分解すると銀が、携帯電話の基盤は銅と金とパラジウムが残ります。そこに空気入れて酸化させたら、炭素が飛ぶので、純度の高い鉱物ができます。

 

――先人の知恵を大切に、いろんな仕事に波及しているのですね。

 

コネクティング・ワールドで、世界貿易にまで繋がっていけたらと考えています。

 

平松さんの「働く」を深掘りしてみる

失敗することもあるけれど

――平松さんは2代目なんですね。

 

父が高校卒業して会社をつくりました。昔は3輪トラックという、オートバイみたいなトラックで、木炭や薪、秋には松茸を運んでいました。それが最初なんです。
私は大学を卒業して、平松運輸に入社しました。

 

――なぜ入社しようと思われたんですか?

 

大学時代は、毎日地獄みたいな運動部に所属していました。なので、過酷な労働はうちの社員のだれにも負けないという自信があり、入社しました。笑

 

――ここまででどんなチャレンジがありましたか?

 

弊社は川上町という田舎にあるので、山や田舎でできるメリットがないかなと考えながらやってました。そしたら、炭焼きや野壺(のつぼ)など、先人の知恵がたくさんあるじゃないかと。

世界に目を向けたら、例えば、コーカサス地方の人々は伝統的に「ケフィア」と呼ばれる、乳を発酵させた長寿食を食べてきました。そこにはアンチエイジング効果が注目されているポリアミンというアミノ酸が含まれてる。そういうことにも、ビジネスにつながる発想や社会に貢献できるヒントがあるんじゃないかなといつも考えています。

 

――仕事をしていて大変だなと思ったりすることはありますか?

 

事業に失敗することや裏切られることもたくさんあります。しかし、それがチャンスになりますね。失敗して、その後起きたことをどう処理するか。それだけかなと感じています。
ただ、運送業は交通事故や運転者の健康問題などもあるので、そこは注意してます。交通事故を何とか減らして、やさしい運転で頑張っていけたらと考えています。

 

――平松さんが働くうえで大切にしていることは何ですか?

 

「素直」と「人を信じる」ということ。先ほど社長が騙されることもあると言いましたけど、「騙すより騙された方がいい」といつも2人で言ってます。

 

――その考えに至ったきっかけや経緯って何かありますか?

 

社長が一番で人生で荒れていたのは、中1か中2かそのあたりです。私が一番人生で荒れていたのは小3か小4ぐらいですね。羽目を外した時期がお互い早かったっていうのがきっかけですかね。笑

 

――そこからの教訓ということですね。笑

 

地球的規模で考えたら

――就職するにあたって、持っておいた方がよい資格やスキル、経験しておいた方がいいことって何かありますか?

 

別にないです。資格はいつでも取れるので。大事なのは、興味ですね。
例えば、人間もうんこのなれの果てということを理解できるかどうかですね。最初の微生物誕生では、酸素が苦手な微生物だったんですよ。そこで酸素を吸収するミトコンドリアを抱き込んだんです。ミトコンドリアが酸素を吸収してくれて、それから植物になり、哺乳類になり、人間へと進化してきた。そういう「地球になぜ生命体ができたか」とか、変なことに興味を持てれば、資格はあとからいくらでも取れます。生命体が何で生まれたとか、面白いじゃないですか。

 

――最後に、平松運輸さんはどんな未来を目指していますか?

 

地球的規模で考えて、人間も微生物のなれの果てだし、謙虚に。私は生まれてから70年ぐらいですけども、謙虚に今を大事に生きていけたらと考えています。将来も同じです。企業も企業は長く続くと思うんで、その心意気をずっと伝えていけたらと考えています。

 

社員のみなさん

 

(編集:森分 志学)

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