木を切ることで山を管理し、産業と防災を支える。

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公開日 2022.04.15

日本は国土の67%を森林が占める国です。人類と森林の共生においては、人が山を手入れすることによって保たれている場合が多く、原生林は国土の4%以下と言われています。では、山の手入れは誰がしているのでしょうか。ボランティアの人たちが心意気だけでやっているわけではないのです。

 

今回は、服部興業株式会社の山林部に所属している河田さんと部長の川原さんからお話をおうかがいします。

★河田さん
服部興業山林部に所属。浅口市鴨方町に生まれ、虫取りや魚など生き物を捕ることが好きな少年時代を過ごし、高校生の時にはダンゴムシの学習能力の研究してみたり。
★川原さん
服部興業山林部に所属。河田さんの上司。
★シガク(森分 志学)
NPO法人だっぴの代表の人。今回は、企業の人から話を聞く役として登場。

 

山を健全な状態に保つ林業

興す「興業」

服部興業さんの「興業」の漢字は「工」じゃなくて「興す」の方ですよね。これってどういう意味なんですか?

 

事業を興すという意味があります。服部興業は1818年創業から色んな事業を興して、そのひとつが山林部です。

 

木は消費者のもとへ、山は次世代へ

では、山林部のお仕事について教えてください!

 

真庭市に自社林を持っていまして、間伐といって木を間引く作業をしたりして、山を健全な状態に保つ仕事をしてます。山をきちんと管理して次の世代に引き渡すということもありますし、切られた木を丸太にして原木市場へ出して、それが製材業者や木材業者の方に渡って、皆さんのもとに届いています。

 

僕は山で木を切って丸太を市場まで出すというところを担当しています。林業は機械化されていて、重機作業が多いんですけど、斜面に重機が入れないので、チェンソーを使って木を切っています。プロセッサという重機で伐った木を丸太にして(造材)、それをグラップルという重機で運搬車に積んで、トラックが来れるとこまで運び出すという流れです。

 

切った木はどのように活用しているのですか?

 

間伐の場合だと、植林のスギやヒノキがメインになります。そうした木は建築材料や薪になります。皆さんの住んでいる家の材料になっているような木は、山から切られたそういう木ですね。

 

 

自然は完璧に管理できるわけではない

また、林業は自然災害と背中合わせで、大雨が降って山が崩れたりもします。

 

災害に対してはどう対応されていますか?

 

大規模な被害ですと、人の手で元に戻すことはすぐには難しいです。

ある時は、崩れた土砂と立っていた木が川をせき止めてダムみたいに水が溜まっていたので、それを放置していたら鉄砲水になって危ないということで、我々でできる撤去を3日ほどかけて行いました。その後は崩れた斜面の土が落ち着いてから、木を植えます。

 

それだけ時間とコストをかけてでも、自社林を大切に守っていくんですね。

 

そうですね。自然相手なので完璧に管理できるわけではないですが、木の根っこがしっかり張った土壌を作ったり、できることをしていくしかないですね。

 

河田さんのお仕事

河田さんが今の仕事に就くまで

獣医になりたい夢があったんですが、獣医師になれる大学は限られていて、僕の学力が遠く及ばず断念しました。どうしようかと思ったときに、自然のことを学べる大学に行きたいと思い、岡山理科大学生物地球システム学科に進むことにしました。大学での研究対象は虫、趣味はバードウォッチングで、大学では勉強と趣味ともに楽しい時間を過ごせました。

 

大学を卒業して服部興業に入社しました。就職説明会でぶらぶらと歩いていると、服部興業が山林部を持っているという紹介を聞きまして。僕はオフィスワークするより外で働きたいという気持ちがあったし、大学での研究を生かせるところがいいと思って。

 

偶然の出会いだったんですね!

 

新入社員のときは、本社のある岡山市内のガソリンスタンドに配属されました。その時の経験は今でも生きていて、良かったなと思っています。2年間ガソリンスタンドで働いた後に、希望が通って山林部へ。

 

山林部は本社から離れた真庭市にあります。28歳のときにツリークライミングというロープで木に登る技術を知って、技術習得を始めました。最初は趣味だったんですけど、30歳の時にそれが仕事になりました。

 

綺麗な山を目指して、切る

どんなこと大切にしてお仕事されていますか?

 

間伐した後に誰が見ても綺麗な山になることに気をつけています。とにかく切ればいいというものでもなくて、残った木に傷がたくさん付いてはいけないし、川が近くにあったら川を汚してはいけなかったり。

 

それと、林業は危険な事故が起こりやすい職種なので、事故で怪我をしたり死亡することが絶対にないように気をつけてます。

 

 

ツリークライミングへの挑戦

ツリークライミングは、切り株があったところにクレーンでつり上げて切ってるんですけど、なぜそんなことをするかというと、他に倒すところがないから。普通に倒すことができない木を、木に登って何分割かにして吊り上げていくのです。もしくは、上から吊ってゆっくり下ろす。

 

ツリークライミングを始めようと思ったきかっけは何だったのですか?

 

木の登り方は色々と種類があり、ツリークライミングは欧米発祥のロープを使う技術です。28歳のときに林業の専門誌に載っているのを見て、面白そうだなと思って講習会に参加したことが始まりですね。

 

技術的にも、木に登って木を切ることは仕事でも使えることを知って、やってみたいと思い、川原部長に相談しました。

 

ちなみに、話持ってこられた時、川原さんはどんな反応だったんですか?

 

新しいことに挑戦しようとしていることが分かったので、大歓迎でした。

 

 

お二人にとって仕事とは

最後に、お二人にとって仕事って何ですか?を聞きたいです。

 

仕事を生業として考える人もいると思いますが、僕は山の木を切ったり、重機に乗って作業したりが好きなので、どこかスポーツやゲームをしているような感覚もあって。楽しく毎日山の中で遊ばせてもらっています(笑)

 

もちろん辛いこともありますが、楽しい部分が多いかなと。

 

川原さんはいかがですか?

 

私にとって仕事は、お客さんもしかり、新たな人間関係を作れる場所のように最近は感じていますね。

 

編集:森分志学

本記事は、岡山の高校生と企業の大人がつながるオンラインイベント「SDGsオンラインチャンネル You Make Okayama」での対談記録をもとに執筆しております。

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