文化芸術が持つポテンシャルを社会で活かす・公益社団法人岡山県文化連盟

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公開日 2022.09.24

社会にある問題を様々な手法で解決しようと取り組んでいる人たちがいます。この記事では、公益社団法人岡山県文化連盟さんが解決したい問題とその解決方法について、紐解いていきます。

 

高田佳奈さん

平成20年に公益社団法人岡山県文化連盟に入職。多様な主体との恊働事業を行うほか、公立小中学校で子どもたちに本物の文化体験を届ける学校出前講座を総括。平成29年度からは「おかやま文化芸術アソシエイツ」を担当し、地域で生活する人々がその地域の文化を構成する資源(ヒト、コト、場所、お金等)についてよく知り考えるための様々な取り組みを行っている。

 

 

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解決したい問題

文化芸術の内側から見える問題

 

――まず、文化芸術とは何を指すのでしょうか?

 

文化芸術は、「限られた人がやっているもの」というイメージが強いのではないでしょうか。趣味で絵を描いている人や、音楽大学出身で音楽を続けている人のように、一部の人が一生懸命に、楽しくやっているものというイメージ。
わたしは、文化芸術は趣味でやるものというだけではなくて、どんな人の日常生活にも通じているものだと思っています。

 

――具体的にはどのようなものですか?

 

たとえば洋服や音も文化。音には、音楽や言葉といったいろんな切り口や見方がある。
普段着る服や暮らすなかで聞こえる音という切り口なら、私たちの生活と繋がりますよね。
仕事でも文化芸術の考え方が活かされています。ビジネスでは固定観念をいかに打破できるかが問われます。そこで、単に経営的な思考だけではなくて、アート思考やデザイン思考を用いることが増えています。

 

文化芸術に触れずに生活している人は、おそらく1人もいないんです。けれど、「限られた人がやっているもの」というイメージは強い。文化芸術がすたれないように、また文化芸術が持つポテンシャルが社会で活きるように、文化芸術に携わる人(以下、「中の人」)と、今はあまり携わっていない人(以下、「外の人」)が繋げていきたいと思っています。

 

――解決したい問題や課題は何ですか?

 

文化芸術には内側から見える問題と、外側から見える問題があって、それぞれに課題があると感じています。

 

――まず、内側から見える問題について教えてください。

 

内側から見える問題は、自分たちが取り組んでいる文化芸能を残していく方法をもっと真剣に考える必要があるけれど、これまでのやり方をなかなか変えられないということ。
たとえば歌舞伎。娯楽が少なかった時代は、歌舞伎を見に行くことが一つの楽しみだったかもしれない。けれど、今はいろいろなSNSがあって手軽に何でも見られる時代だから、高いお金払って歌舞伎を見に行くという若い人は少ないでしょう。
もしも歌舞伎が衰退すると、それに紐づいて成り立っているお囃子(おはやし)の方や衣装、道具を作る職人たちの仕事もなくなるという大きな問題があるんです。

 

外側から見える問題

 

――次に、外側から見える問題とは何でしょうか?

 

 

外側から見える問題は、文化芸術の課題は見えにくいということ。
たとえば、子育てや福祉は、困っていることや改善すべきことがわかりやすくて課題が見えやすい。人の生き死にに関わる場合も多いから、行政は優先的に取り組みますよね。それは当然のことです。

 

それに対して文化芸術は、文化芸術そのものが自由な活動の中から生まれてくるものがほとんどで、課題を解決するためにやっているものではないから、課題があっても見えにくい。
だからといって、文化芸術に今携わっている人たちだけで続けていこうとすると、内側から見える問題に繋がっていく。
もちろん、時代の変化によって淘汰されるものはあると思います。
けれど、長い時間をかけて培われてきた文化が、引き継がれないまま、本当の良さが伝わらないままにすたれていくのは、わたしはとても悲しいことだと思います。

 

文化芸術には確かに課題がある。文化芸術の内側からはやり方を少しずつ変えていき、外側からは外の人に課題を知ってもらうことで、課題を解決していきたいと考えています。

 

問題解決への道のり

2段階に分けて「中の人」と「外の人」を繋ぐ

 

――これらの課題に、どのように取り組んでいるのでしょうか?

 

文化芸術に携わっている「中の人」と、あまり文化芸術に携わっていない「外の人」を繋ぐ事業をしていて、2段階に分けて取り組んでいます。
1段階めの取り組みは、「公益社団法人岡山県文化連盟」(以下、岡山県文化連盟)の4つの事業です。2段階めの取り組みは、岡山県文化連盟で平成29年から始めた「おかやま文化芸術アソシエイツ」(以下、アソシエイツ)です。

 

――1段階めの岡山県文化連盟の取り組みとは、主にどのようなものですか?

 

岡山県文化連盟はもともと、国の文化庁が主催する「国民文化祭」というイベントで、行政と地域の実演芸術家を繋ぐ役割として生まれました。
なので、行政と地域で文化芸術活動をする人のあいだに入って相談に応じたり、助成金を出したりする「中間支援」をおこなっています。
また、岡山県内で文化芸術活動をしている方々を小中学校に派遣して、児童や生徒が文化芸術を体験するときの先生になっていただくという「文化人材バンク学校出前講座~おかやま子どもみらい塾~」や、岡山県民の皆さんに文化や芸術に親しんでいただく「おかやま県民文化祭」も開催しています。

学校出前講座「箏曲」

第20回おかやま県民文化祭 これがOKAYAMA!プログラム「美作国 食は文化の交差点」

 

――2段階めのアソシエイツでは、どのような取り組みをしているのですか?

 

「文化芸術交流実験室」という取り組みをしています。
文化芸術と福祉、文化芸術と教育など、文化芸術が他の分野とどういうふうに関われるのか、講師を招いて1日に1つの課題を考えてみるという会です。ぜひ参加してみてほしいです。

 

初めに話した、文化芸術は限られた人がやるものというイメージは、実は行政のなかにもあると感じています。
日本は先進諸国のなかで、文化や芸術にかけている予算が一番少ない国なんです。国の予算が少ないから、県も当然のように少ないのですが、そうじゃいけないよなと。
「中の人」が自分たちだけで活動するのではなくて、自分たちが持っている技術をどういうふうに活かしたら社会に役に立つかという視点で活動していけば、文化芸術の別の有用性に気がついてもらえるのではないか。「外の人」には文化芸術活動をする方々の良さに気づいて一緒に活動してもらいたい。

そうした思いから、「中の人」と「外の人」を繋ぐハブの機能としてアソシエイツを立ち上げました。

文化芸術交流実験室「ひきうける美術」

 

若者が関われること

 

――高校生や大学生が関われることはあるでしょうか?

 

たくさんありますよ。
先ほど触れたように、「中の人」は受け継いできた歴史もあって、これまでのやり方を変えるのが難しいんです。
年齢層が高いので、LINEなどのコミュニケーションツールを使っていないこともある。そういうところを変えると、物事をよりスピーディーに進められるようになります。
あとはSNSを使ったりして、発信の仕方をいろいろと試してほしい。反響が来たら今の「中の人」も喜ぶと思います。今のやり方を一旦崩してみると新しい景色が見えるということを、若い人にどんどん伝えてほしい。

 

文化芸術は正解がないから、わかった気になって話すのが一番良くないと思っているんです。だから、フレッシュな感性はとても大事。ご興味があればぜひ一緒に働いてほしいなと思います。

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