「大勢の中から選ばれるような特別な経験は、私にはないんじゃないか」
就職活動や面接を前にすると、そのように気弱になってしまうことがよくあります。
今回は、そんな不安を抱えながらも、テレビCM制作の仕事に惹かれる大学生・ななさんが、元大手映像制作会社出身のネイリストに相談に行きました。先輩の生き方と言葉で、彼女の胸の不安は晴れるのでしょうか。
目次
登場人物紹介


岡山県和気町でネイルサロン・扇松屋を営むネイルアーティスト。東京から7年前に移住。前職は大手CM制作会社のプロダクションマネージャー。
和気町のアワード受賞ネイリストは大手CM制作会社出身!?

扇松屋さんの大人個性派ネイル






私は、東京から縁もゆかりもない和気町に引っ越してきた新参者のネイリストだったから。サロンを開業するにしてもなじみのお客さんもいないし、「そのままじゃ誰も来てくれないだろうな」と思ったんです。
けど、「来てくださ〜い!」って営業するのも苦手だった。だから、「ちゃんと評価してもらえる作品を作って賞という箔(はく)をつけて、お客さんの方から来てもらえるようにならなきゃ」って、必死に賞を獲りに行ったというのが本当のところなんです。


大手の映像制作会社を就職先に選んだのも、ある程度稼げて何か「賞を取れる環境」に行きたかったから。きっと思考が単純なんです。

「国内外注目のネイリスト100」という企画で選出された長峰さん
長峰さんの「好きか嫌いか」で歩んできたキャリア
嫌いを避けて、海外へ飛び立つ


それを6年生まで続けたら「もっといろいろできたら楽しいだろうな」という思いがふくらんできて、そこで将来の夢が決まっちゃいました。








ちょうどそんなとき父親が仕事の関係でマレーシアに赴任することになり、海外受験にチャレンジすれば現地の学校に行けるかもしれないことになったんです。それで、「ええい、行ってやれ!」と思って、そちらの道を選びました。


*表情で表すジェスチャーのこと


好きだった映画の道を嫌いにならないために


気を取り直して、舞台じゃ稼げないなと思い、手に職だと日本大学芸術学部映画学科で撮影の勉強をスタートしたのですが、時間が経つにつれて映画制作への思いは徐々にしぼみはじめてしまいました。


好きなはずだった映画のことがどんどん嫌いになる、それが嫌で仕方なくて。
もちろん映画制作の仕事に就きたいと願ってきたわけですが、嫌いなことを仕事にしたくないじゃないですか。仕事って人生においてすごく大事だから。なので、そこでスッパリ映画の道に進むのはやめることにしたんです。


作品が短い分、制作期間も短いので飽きっぽい私向きだなと思って、そこからCM制作に転身したんです。
*1954年に設立の「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」の通称。フランス南部のカンヌで開催される世界最大規模の広告・コミュニケーションフェスティバル。
選べないから「あみだで決めちゃえ!」

お子さんと遊ぶ長峰さん


仕事を辞めて落ち着いた環境で妊活するか、子どもは諦めて仕事に打ち込み続けるか。夫と一緒に悩んだけど決められなくて、結局あみだくじで決めることにしました。


で、「仕事辞めて妊活する」と出たので、「ちょっと仕事辞めてくる!」って次の日社長に相談に行きました。




自分が培ってきたアートや作品づくりの感覚を活かせて、なおかつ自分の好きなもので、そこからスタートして仕事にできるもの。それがネイリストでした。
決めたらあとは思いっきりやるだけですから、必死で勉強して練習して、晴れて試験に合格して開業したーーそんな流れです。



悩めるななさんへ「どんな自分が好きかで考えて!」





CM制作の仕事は、1本撮るだけでも、100人200人の関係者と関わらなくちゃいけない仕事です。その人たち全員とコミュニケーションを取るから、ほぼ丸一日喋りっぱなしの日もあるくらい。だから、空回りせずに人ときちんとコミュニケーションが取れて、一緒にいて楽しくなるような「考え方の面白い子」を、私は選んでいました。
あとは「この仕事がしたい!」という意欲があるかどうか。そういうものってにじみでてくるもので、あまり実績とかは関係ないから。
ななさんはすごくいいと思いますよ。こうしてインタビューしにきて、物怖じせずにどんどん聞いてくれるし。




最近はあまり根性論は好かれないけど、仕事には諦めない気持ちや負けず嫌いなところも要ると私は思ってます。「この子は揉まれて乗り越えて来たんだな」と感じられたらそれで私にとってはOKで、経験自体が変わっている必要はなかったです。




自画自賛して、自己肯定感を上げていいんです。私も飽きちゃったものはいっぱいありますよ。でも、いいんですよ、自分を責めなくて。「私を飽きさせるそいつが悪い」「私には合わなかった」と私は思ってます(笑)。


私は勉強が苦手で適性検査はボロボロなタイプだったんですけど、インターンの現場では可愛がってもらえたので。本当になりたいなら、諦めないでほしいな。


自分のことを嫌いになりたくないから、「自分のなりたい姿」になるために、どうしたらいいかをいつも考えています。好きなことをつき詰める自分と、諦めちゃう自分と、どちらが好きか。だから、そのために努力する。それだけな気がします。



イベント出展時の長峰さん。たくさんの応援メッセージをありがとうございました
(編集:横山麻衣子、執筆:北原 泰幸)


岡山県内の大学に通う3回生。経済学部で広告について学びながら、クリエイティブな仕事に就きたいと考えている。「コレだ!」という自分の強みを見つけられず、「都会の同世代と競争していけるのか」と不安を抱えている。