子どもの成長を支える地域をつくる教育者・室貴由輝さん

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この記事では、高校教員として地域に根差した様々な学びを実践し、岡山県教育委員会で高校魅力化を推進している室貴由輝(むろたかゆき)さんの生き方に触れていきます!

 

現在の室さん

教育委員会でのお仕事

3年前から岡山県教育委員会の高校教育課で働いていて、特に高校魅力化推進という仕事を行っています。令和3年度に高校魅力化推進室となりました。

 

今は子どもの数が減って、学校が小規模化しています。このまま小さくなっていくと、統廃合の対象になって町から学校がなくなってしまう。そこで、学校がなくならないようにそれぞれの地域で特色のある教育をおこない、高校生が地元でよりよい教育を受られたり、地域の外からも入学者が来る魅力的な教育内容を作ることを支援する仕事です。

 

必要とされる力が変わりつつある中で

高度経済成長期の時は、いい学校に入って大企業に入っていれば安心という成功モデルがありました。だから、知識量や言われたことがちゃんとできるとか、コミュニケーションがとれるとか、一律的な人材育成が求められてきました。でも、現代は知識量多くて勉強できるだけではダメだというケースも結構あります。

 

——問題に気づいて解決できる力を求めているという話は聞きますね。

 

今まで越えられなかった難題を、それぞれの強みを活かしたイノベーションや協働によって乗り越えて行かないといけない。そのためにはまず、個々人が自分の強みや伸ばせるところが何かに気付いて、それをしっかり伸ばしていく。

 

得意なことは人それぞれで、子どもの成長にも差があります。成績もまた一律ではなく、もっと色んな角度から見ていかなきゃいけない。だから、色んな材料を子どもたちに提供できないといけないんだろうなというのは(現場で高校教員をしていた)当時から感じてましたね。それが、地域単位で色んな方向性の個性を伸ばす教育をやっていこうという現在につながっています。

 

 

人生の履歴

第1章 就職する予定が大学受験することに

高校生の時には就職を考えていて、高校3年生の夏には就職先が決まっていました。だから余裕をかまして遊んでいたんですけど、2学期の終わりに生徒指導の先生に叱られて。その叱られ方が理不尽だったので頭にきて、そこから「勉強して先生を見返してやろう」と思って大学受験の勉強を開始しました。

 

頑張ってみたものの、たった1カ月でそう簡単に大学入試で点が出るわけもなく、目標としていた点から100点くらい低い結果になりました。自分の点数にショックを受けながらも、その点数でなんとか行けるところを探しました。二次の筆記試験を戦う気力、学力はもう尽きていて、筆記がない大学を探していたところ、体育の実技だけで受験できる大学があって、そこに合格しました。就職先が決まっていたけど、「やっぱり行きません」と返答したら、めっちゃ叱られたんだけど(笑)

 

第2章 部活にのめりこんだ大学時代

中学・高校とバレーをやっていたので、大学も同じようにバレー部に入りました。体育系の学科だったから、部活がめちゃくちゃしんどくて。しかも部員数も少なく、部を辞めるなら大学を辞めなきゃいけないような雰囲気で、「大学やめますか?部活やめますか?」という選択肢の中でガンガンに部活動をやってましたね。

 

第3章 人のつながりを感じた北海道の旅

大学3年と4年の時の2回、北海道に行きました。

3年のときは旅行のルートを決めていたけど、その時に北海道で会った人たちはみんな自由な人たちでした。「気が向いたからここに3日ぐらい泊まってます」とか、明日はどこ行くのとか聞いたら「これから決めます」って。なんかそれっていいなと思って。

 

この場所にもっといたいなと思っても、次の宿を決めていたらそこまで行かなきゃいけない。だから4年になったとき、バイクにテント積んで、全く行き先を決めずにもう一度行こうと思って。

 

——楽しそうですね。その旅行での経験は今やっていることにつながっていたりするんですか?

 

北海道に行った時、人とのつながりや地域の人の魅力を感じました。やっぱり人と接することで、色んな影響を受ける。友達と行ったときより一人で行ったときの方が色んな人と深く接することができるから、色んな情報を得られたり、新しい人間関係ができたりして。人と関わることってすごく面白いなっていうのは、その時にすごく感じましたね。

 

第4章 生徒が主体的に取り組める場を

矢掛商業に10年、矢掛高校に7年、矢掛中学校に2年と矢掛という町に19年いました。赴任当時の矢掛商業は定員を割っていたので、校長が「定員割ったら学校なくなるから、とにかく定員を割らないために色んなことをしよう!」と言うので、広報活動や新しい取り組みを始めました。

 

でも、教員がいくら頑張ったとしても、生徒自身が来てよかったって思わなきゃダメだなと感じて。この学校来たから力がついたと生徒本人が感じられる。そして、親や周りの人も矢掛商業に行ってよかったねって思えなきゃいけない。

 

——教員が努力しても、生徒が「良かった」って感じないとダメなんですね。

 

生徒が充実した学校生活を送るためには、教員が与えるだけでなく、生徒が主体的に学校の中で何をするかが重要だなと。部活動でも生徒会活動でも、資格取得でもいいし、自分から進んで取り組む状況を作り出さなきゃいけない。生徒が主体的に取り組める場づくりをとにかく力入れてやっていましたね。

 

第5章 オリジナル教科「環境」をつくる

矢掛商業が矢掛高校と合併する時に、「環境」という学校のオリジナル教科をつくりました。

 

教科書がないから、自分たちでつくるなかでESDとの出会いがあり、今のSDGsにもつながっていくんだけど、持続可能な社会をつくっていくという価値観に出会いました。想いのある教員が何人か集まってできた「環境」でしたが、環境の授業は専門性が高く、教員の転勤で維持できなくなりました。

 

第6章 「やかげ学」をつくる

環境の授業によって、学校の外に出て体験的な学びをすることが生徒の成長になることが分かりました。また、ESDのテーマでもある「持続可能な社会の構築」に根ざした教育が生徒の変化を生んでいきました。

 

「環境」の時に失敗したので、教員の手をかけずに、人や地域とつなぐことができないかと考えて「やかげ学」をつくりました。高校生が木曜日の午後2時間は矢掛町内の保育園や小学校、図書館、高齢者福祉施設などに行って、職員として1年間働く授業です。

 

室先生にとっての教育とは?

教育とは、、、うーんやっぱり人づくりなんだよね、もうそのままだけど(笑)

 

人の成長を助けるのが教育だと思っていて。これまでは、それを学校がやらなきゃいけないものとして進んできましたが、人をつくるのは別に学校だけじゃなくて、やっぱり関わる人全てなんだと思うんです。だから、人と人が接する機会をできる限り増やすことが大事なんじゃないかなと。

 

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